2014年11月号より
セコムが初めて海外に進出したのは、1978年の台湾だった。
オンライン・セキュリティは世界的にもまだ普及しておらず、機器の開発から設置、保守、非常時の出動まで、1社がすべて一気通貫で行うセコムのスタイルは極めて珍しいサービスだと言える。台湾ではこのスタイルが受け入れられ、セキュリティ企業としては台湾のトップ企業にまで成長している。以降、韓国、中国、ASEAN諸国、イギリスなど、進出した国は世界21カ国まで広がった。
しかし、セコムの海外売上比率はわずか5%ほどにすぎない。グループ国際事業本部長の石川博執行役員(写真)は次のように話す。
「昨年、当時社長の前田が2015年度までに海外売上比率を7~8%に引き上げると発言しました。特にセキュリティ事業において、国際事業をもう一段上に引き上げようというものです。安心して暮らしたいという思いは、中国でもタイでも変わるものではありませんから、サービスの根本は、国境を越えても同じです。ただ、現地の人々にサービスのコンセプトを理解していただいて、セコムのクオリティを維持しなくてはいけない。そういう難しさはあります」
自動車等のメーカーとは違い、モノを売るのではないだけに、サービス業は人や文化に左右される部分が大きい。その国の治安なども影響があるという。
「あまりにも治安が悪い国は難しい。たとえば銃社会では、社員の安全も危険に晒されるために慎重にならざるを得ません。また、政変や革命によって体制がひっくり返る恐れがある国も除外しています」
警備会社は軍隊や警察ではないため、積極的に反撃するようなことはできない。あくまで未然に防ぐことが目的であるため、ある程度の治安が保たれなければ成立しない業種であるとも言えるだろう。
セコムが進出先を検討する場合、多くは日本企業の海外進出に合わせるケースが多いという。
「日本企業はセコムのよさを理解していただいているし、要望も日本語で伝えやすいという面があります。まず日系企業の現地法人のセキュリティで実績を残し、認めてもらってからローカル企業の契約を高めていく形。セキュリティ意識の高い現地の金融機関からの依頼が多い。
中国は進出して20年以上になりますから、現在では日系企業の割合は2~3割まで下がっています。特に中国の場合は各省が独立した国のようになっていますから、主要都市に1つずつ法人を設立して、各省のルールに合わせた形で進出しています」
昨年から増えてきたのが、地銀など中小の金融機関からくる取引先への支援の依頼だという。
「大手メーカーの下請けである中小企業が、大手メーカーに付いて海外に進出することが増えている。現地の治安や防犯対策等をアドバイスしてほしいというものです。こうした金融機関からのビジネスマッチングの機会が非常に増えています」
アジアの場合、シンガポールなど早くから外資に門戸を開いていた国はイギリスの警備会社が進出していることが多い。一方で、これから成長が期待される新興国はオンライン・セキュリティそのものが普及していない。台湾や韓国でのようにセコムがトップ企業になれる環境が目の前にある。韓国では『セコム、してますか?』が『セキュリティしてますか?』という意味で使われるほどセコムが浸透している。アジアで「セコム」が公用語になれば、一気に世界企業に近づくことになる。