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2014年11月号より

“〈地理情報サービス〉目﨑祐史・パスコ社長 “位置情報”を軸に民需も拡大 グループを横断する技術屋集団

「セコムのサービスは、建物であれ人であれ、必ず“位置”がついています。その位置情報で必要なものを当社で提供するわけですが、空間情報は年々高度化し、それに連れてセコムのサービスも高度化していますので、そこでいいコラボレーションをしていくことですね」

オールセコムの中でパスコが担う役割について、同社の目﨑祐史社長(写真)はこう語る。パスコの技術で一般の人に最も馴染みが深いのが、セコムが2001年からサービスを開始した「ココセコム」だ。最初は子供の見守りサービスを主眼として出発した事業だが、クルマやバイク、ATMや金庫などの盗難後の行方特定に威力を発揮してきた。これまで、延べ2700件余りの貢献事案があるが、盗難などはそれほど高い頻度で発生するものではない。

一方、人に関わるところでは高齢者の徘徊で、家族が探すのに役立つシーンが増えており、さらに超高齢社会が進む今後は、シルバー社会の日本に、なくてはならないサービスになっていきそうだ。

また、測量、コンピュータ両方の技術進歩によって、三次元空間からの解析も進んでおり、建物のセキュリティ面から見て、セコムの監視カメラをどの場所に設置したらどのように見え、ゆえにどこに設置するのが最適なのかを割り出すこともできる。

「加えて、商圏を分析して、どの地域にどんな出店計画を立てたら有効なのかを、空間情報の視点からご提供する機会も増えています」

パスコ
セコムが1999年に傘下に収めた航空測量大手(セコムの持ち株は69.8%)。2001年4月に開始した屋外用携帯緊急通報システムの「ココセコム」が有名で、GPS(全地球測位システム)衛星と携帯電話基地局の電波を活用し、高精度な位置情報を提供。災害関連をはじめとした官公需に強い。

1999年にセコム傘下に入ったパスコは、ココセコムのサービスをはじめとして段階的に民需の受注が増えているが、ざっくり言えば現在でも民需は2割、海外も含めて官公需が8割を占めている。

その一つが災害関連だ。阪神淡路大震災や東日本大震災、最近では広島市での大規模土砂災害において、いち早く情報収集して対策に寄与してきた。

セコムは災害発生後に情報収集して対策に貢献するわけだが、「当社ではシミュレーション技術や空間情報の知見から、“このくらいの風や雨になると、ここの交通網が、こういうふうになる”という予測が立てられます。その情報を防災・減災に役立てていただくのです」

災害ではないものの、たとえば西之島(小笠原諸島)の大規模な噴火で島の面積がどんどん大きくなったが、ここを飛行機で頻繁に行き来して定点観測することは難しい。そこで、パスコの人工衛星が継続的に島をモニタリングして情報提供する。

さらに、固定資産評価や管理、道路関連施設の管理などでもパスコが活躍する機会が多い。

「たとえば、固定資産税は自治体が建物や土地を所有している人たちに課税するわけですが、その課税対象の建物や土地に変化がないかどうか、変化があればそれを抽出するサービスを行います。

また、笹子トンネルで天井崩落という惨事がありましたが、それ以降、国土交通省が全国の道路やトンネル、橋梁の点検を指示したでしょう。老朽化や腐食の実態を計測するのは、数が膨大過ぎて人手に頼れません。そこで、赤外線やサーモグラフィ、レーザービームなどを用いて当社で計測しています」

海外では今年6月、インドネシアから依頼を受けてデジタルデータによる国土地図を納品するというビッグプロジェクトを終えたばかり。インドネシアは曇りの日が多くて晴天が滅多にないため、空撮からの計測が難しく、そこでパスコの電波やレーダー技術を駆使して地図データを作成したという。そうしたニーズは赤道付近の東南アジアや南米のアマゾンに多い。

国内外で、今後もパスコの需要が高まりそうだ。

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