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2014年11月号より

“〈防災事業〉藤井清隆・能美防災社長 ハードからサービスへ 点から面へ広げる防災システム

「我々は防災専業です。この分野に関しては国内でトップですが、世界でもナンバーワンを目指したい。2020年の東京オリンピックが、その契機になればいいと考えています。オリンピック関連施設を含め、これから建設される新しい施設についてさらに進化させた防災システムをこれからプレゼンしていきますし、同時に高度成長時代につくられ、劣化した施設の保全についても取り組んでいきます」

と語るのは、能美防災社長の藤井清隆社長(写真)だ。この言葉にあるように、同社は防災機器の最大手。火災報知器や消火設備などを、ビルや住宅、工場やプラント、発電所、トンネルや橋梁などのインフラ設備、そして文化財などに設置している。

能美防災
創業は1916年。輸入商社だったが関東大震災で火災の恐ろしさを知り、火災報知器を輸入、防災事業をスタートさせた。セコムとは1974年に業務提携。2006年に連結子会社となる。防災業界のトップ企業で、トンネル、プラント、工場、船舶、文化財、ビル、地下街から住宅まで、さまざまな施設に納入実績を持つ。

2年後に創業100周年を迎える老舗企業だが、1974年にセコムと業務提携、2006年にはセコムの子会社となった(出資比率50.2%)。

セコムグループの部門別売上比率を見ると、1位がセキュリティ部門で56%。それに次ぐのが防災部門で15%となっている。その大半を、能美防災が稼ぎ出す。

現在、能美防災が力を入れているものの1つが、「点ではなく面の防災」だ。これまでは、ビル1棟のように、1つの建物を守る「点」での防災が中心だった。それを、複数の建物や地域の安全を守るという「面」に広げようとしている。

例えば住宅の場合なら、いまでは火災報知器の設置が義務付けられているが、高齢化の進展もあり、いざ自宅や隣の家のアラームが鳴っても気づかないというケースもあるという。これでは何のための報知器設置かわからない。そうならないためにも、単に警報音を発するだけでなく、消防に連絡したり隣近所に確実に伝えるシステムを構築する必要がある。

あるいはオフィスビルでも、広域再開発の場合など、一元管理することで、より効率的な防災システムが可能となる。

そのためには、単に防災機器というハードを販売・設置するだけではなく、サービス事業へとウィングを広げていかなければならない。

「ハードだけでなく、サービスも含めてトータルに提供するというのは、セコムがいちばん得意としているところですから、そういう部分でシナジーが発揮できると考えています。さらに、セコムはグループ内に、医療や地理情報などいろんな分野を持っています。こうした資産を活かすことで、新しい可能性が生まれるかもしれません」(藤井社長)

もう1つ、今後さらに力を入れていこうとしているのが海外事業だ。現在、海外売上比率は5%程度にすぎないが、早晩、10%にまで引き上げたいと考えている。

その場合、中心となるのが東南アジアだ。そしてこの地区なら、すでにセコムが築いたネットワークも活用できる。

「これまではほとんど、独力で展開してきました。でもセコムの現地法人と連携することで、事業を拡大していきたい」(藤井社長)

能美防災はセコムの子会社となって8年がたつが、これまではゆっくりと両社の企業文化の融合を図ってきた。そしてその成果は、これから新しい防災の形として表れてくる。

「我々には防災のパイオニアとしての自負があります。これまでも、一つひとつの事象に対応しながら、一歩進んで、次の防災のあり方を提案してきました。我々が道を拓き、法律があとからついてきたこともあります。これからもそれは変わりませんが、グループの力を活かすことで、より幅の広い提案ができるかもしれない。要は、困りごとを解決する。その意味で、セコムと歩調は揃っています」(藤井社長)

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