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2014年11月号より

“〈メデイカル事業〉布施達朗・セコム取締役 クラウドから病院まで超高齢社会の“あんしん”を追求

セコムが医療分野に進出するキッカケになったのは、1981年に発売された家庭用安全システム「マイアラーム」(現セコムホームセキュリティ)だった。緊急通報用のボタンが、思わぬ事業の芽になったという。

医療事業を担当する布施達朗取締役(写真)は次のように語る。

セキュリティと医療の両面から「安全・安心」を提供する。

「事業所は夜、カギをかけると中には誰もいませんが、家はカギをかけると中に人が寝ている。事業所と違って、赤ちゃんやお年寄りがいて、いろんなことが起こる。そのなかで、緊急通報用のボタンを作りました。

当初は、カギを開けようとしたら後ろから襲われたとか、押し入り強盗を想定していたんですが、実際はお年寄りが倒れたとか、お子さんが何かを飲み込んだという身体に関するニーズで使われました。ただ、セコムの対処員は警備員ですから、何もできない。そこで医療事業に目覚めたわけです」

最初は救急車の事業や在宅医療の分野での参入を目指したが、救急車は総務省の管轄であり、訪問看護も健康保険が利かない。ビジネス面からは厳しさばかり目立ったという。

「お客様が困った時に、行く病院もなければ、戻る病院もない。なら自分たちで病院を持とうとなったわけです。実際は、株式会社は病院を経営できませんから、提携病院という形で広げていきました。それを取り巻く形で、訪問看護、訪問介護の整備をしていったのです。一方で、高齢化に伴って、老人ホームの事業を同時並行ですすめてきました」

昨年、セコムは「マイドクタープラス」を発表。従来の救急通報に加え、電話機能を付け、GPSによる位置情報も取得できるようになった。これにより外出先で倒れた際も、通報すればセコムの対処員が駆けつけることができる。このサービスこそALL SECOMの象徴的な例だと言っていい。

「我々が使っているのは、ユビキタス電子カルテといって、病院のサーバーではなく、データセンターで預かるカルテです。処方箋などの医療の情報、介護の情報、個人の情報が預けられているので、救急通報があった際に、かかりつけ医の情報や家族の連絡先までわかります。通報、連絡、対処まで素早く行うことができます。超高齢社会に進むなか、セキュリティと医療・健康が融合したサービスですから、防犯・防火以上にニーズが高まってきています。これが欲しいからホームセキュリティを契約する方がいるほどです」

日本国内では株式会社による病院経営はできないが、海外なら参入できる国もある。セコムは今年3月、インドに「サクラ・ワールド・ホスピタル」を開院した。

「海外というのは、日本から外に行くのと、海外から日本に入ってくる2つの面があります。セコムは、アジアのトップリーダーとして、日本の医療を世界に広めたい。同時に、アジアから人を受け入れて、きちんと教育研修できる機関を置きたい。日本の高い医療技術を学びたいというアジアの人はたいへん多いし、意欲が高い。それに応えなくてはいけません。そして、その人たちが故郷へ帰る時に、我々がその地域で病院を経営していれば、受け入れになるし、地域にも貢献できます。ひいてはアジアの発展に繋がる。

インドは世界最大の民主国家で経済が発展している半面、医療供給体制が進んでいません。我々が長年培ってきたノウハウを現地に伝えながら、人も育てていきたい」

セキュリティと医療の両方を提供するモデルは世界でも類を見ないだけに期待は大きい。

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