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2014年11月号より

“伊藤 博・セコム社長に聞く 判断基準は“正しさ”拡大を続ける事業戦略
伊藤 博・セコム社長

伊藤 博・セコム社長

いとう・ひろし 1952年生まれ。76年早稲田大学政治経済学部卒業後、79年日本警備保障(現セコム)入社。89年セコム三重常務、2003年セコム情報システム(現セコムトラストシステムズ)社長に就任。09年常務を経て14年6月社長に就任。

今年6月に社長に就任したばかりの伊藤博氏。セコムのIT部門でもあるセコムトラストシステムズの社長を務め、2012年に東京電力のデータセンター「アット東京」の買収を手がけるなど、セコムの情報・ネットワーク事業を牽引してきた実績を持つ。その伊藤氏に、セコムはどのような会社なのか、現状と将来像について話を聞いた。

ビッグデータの活用

―― セコムと言えば、世間の人は「警備の会社」というイメージですが、グループ会社を見てみると、とても警備の会社とは思えません。
伊藤 現在は連結では174社、グループ全体で200社になっています。売り上げではセキュリティが中心になりますが、防災、メディカル、保険、地理情報、情報通信、不動産、そして海外事業という8つのセグメントで、「セキュリティ」「超高齢社会」「災害・BCP(事業継続計画)・環境」という3つの分野へのサービスをつくっている形です。

今年6月末でホームセキュリティが100万件を突破し、100万6000件になりました。これは一つの大きな区切りだと受け止めています。このホームセキュリティのサービスを通して感じるのは、家庭の安全への関心、そして健康というテーマへの関心が高いということです。

いま65歳以上の人口が3000万人を超えて、総人口に対する割合が25%を超えました。年齢が上がっていくことにより出てくる関心や、「困った」というものにお応えしていこうと。そして3・11を経て、お客様が自然災害に対して、より考えるようになってきました。その結果、災害が起こった時に、どう身を守るのか、安否確認はどうするのか、事業を継続するためにデータはどう守るのか、といったニーズが生まれてきています。その「困った」に対してお応えしていくために、セコムはどう対応していくか、今後力を入れていく分野として取り組んでいます。

―― 伊藤社長はIT・通信といった分野を手掛けてきており、この人事が、いまのセコムが目指しているものを表しているように感じます。世代交代というには前田修司会長とは年齢も近い。
伊藤 人事については私が言う立場ではない(笑)。私どもに限らず、いま新しいサービスを作ろうという時に、コンピュータとネットワークを使わないサービスをつくるほうが、むしろ難しい。先ほどの8つのセグメント、3つの分野を繋ぐ中心になっているのが、データセンターであり、ここに集まってくるビッグデータです。データというのはオペレーションをしてはじめてサービスに変わっていくもの。データセンターがオペレーションの中心になるという位置づけになっています。

目指す方向性としては、データセンターを中核にして、世の中の「困った」に応える。私は情報系のほか、人事やセキュリティ事業にもかかわっていますので、「安全・安心」をベースにして、「快適・便利」をどう実現していくかがポイントだと思っています。

―― 2020年の東京五輪開催が決まったことで、セコムは明確にこの国際的イベントを目指した取り組みを始めていますね。
伊藤 5年、10年、15年と、先を見据えて強化していくことは重要です。セコムは創業2年目である1964年の東京五輪で選手村を警備して、ここで足場を固めて次のステップに行けるようになった。その意味では、20年の東京五輪は、恩返しをするタイミングでもあります。その時までにセコムは何をするのか、それ以降はどうするのか、を考える大きな意味があるタイミングです。

「安全・安心」が大きいわけですが、オリンピックで言う「おもてなし」は、セコムで言えば「快適・便利」です。セコムしかできないおもてなしをしたい。

100万件を突破した家庭向け

―― 先ほどホームセキュリティが100万件を突破したという話が出ましたが、この分野はまだ開拓の余地が大きいのではないですか。
伊藤 最初のころは、「ウチは立派な家じゃないから」と断られていました。それがだんだんと「共稼ぎだからお願いしたい」とか、マンションを買うと付いてくるといったケースも多くなった。セキュリティは高額なものではなく「ちょっと申し込むか」という時代になっています。100万件というのは、全世帯数の2%弱にすぎません。ですから、これからまだまだ伸びる。

ホームセキュリティに「マイドクター」というサービスがありました。これは、たとえば家のなかで急に具合が悪くなった時などにボタンを押すと、セコムが駆けつけ通報するというものです。これがいまでは、外出中に倒れたとしてもセコムに通報が入って駆けつけるというところまで進化しています。単に家庭の警備だけでなく、生活支援ということで、家庭の困りごとに全部お応えしていこうと。エアコンの清掃などもお受けしたり、何でもやりますという形になっています。

―― これは高齢社会にも対応していくということですか。
伊藤 セコムでそこまでサービスしてくれるのなら、ホームに入るのではなく、あと数年は自宅にいよう、こう言っていただいたケースもあります。セコムに言えば自宅で快適に過ごせる、これを実現していく。

―― ビッグデータの活用についても詳しく説明してください。
伊藤 従来の機械警備は、銀行の店舗などをイメージしていただくとわかりやすいですが、行員が帰宅すると無人になります。ここに人が入ってくるとすれば、行員の人か、不審者かとなります。ですから、センサーで人の気配があれば異常を感知させてもよかった。

いまは、画像やデータから解析して異常を知らせることが商品化されています。たとえば、常に2人でしか入らない金庫があったとすれば、3人目を検知した時点で異常です。また、コンビニ強盗が入った際、店員が両手を挙げたままにしている。両手を挙げるという行為は、通常やらない行為ですから、異常という判断をします。

今後やっていくのは、警察官が不審な人を職務質問して逮捕するように、いかにデータから不審者を特定して駆けつけ、対処していくかということを考えています。たとえば、ですが、一定の速度で歩いている人は悪いことをしない、何かやる人はスピードが変わり、うろうろする。グレーゾーンの人のデータを捉えていって、対処すべき案件が起きるのかどうかを検知していく。

すでに導入しているものには、災害時のお知らせがあります。火事が起きた時に、ネット上ではツイッター等でつぶやかれていることが多い。それらの情報から場所を割り出して一刻も早く、近隣の契約者の方に通知する等、ビッグデータを解析した結果に基づいてオペレーションをしています。みなさんが会社から帰宅されたあとは、会社付近で火災が起きてもなかなか知ることができませんからね。

セキュリティについてはコントロールセンターが設置されていますが、災害分野であれば「あんしん情報センター」、超高齢社会分野であれば「メディカル情報センター」を設置しています。その背景にあるのがビッグデータです。そしてこのビッグデータを守るために、サイバーセキュリティを充実させていかなくてはいけません。

―― 生活支援としてのビッグデータはどう活用されるのでしょう。
伊藤 たとえば血圧等、日常取ることができる情報をもとにして、何か異常が重なった時にどういうことが起こるのか。セコムには提携病院がありますから、治療の仕方やその効果など、仮説をもってデータを抽出し、実際にオペレーションしていくことができます。

災害等に対応する「あんしん情報センター」。

災害・BCPについても、データセンターが重要なことがわかりました。3・11の時に身近な問題としてあったのは、薬がわからないことです。血圧の薬と言われても、処方箋がなければわからない。銀行に行っても、証明書がなければ預金を下ろすこともできません。家族に連絡を取ろうにも、携帯電話にすべて連絡先を入れてしまっていたので、連絡できないということがありました。これは非常に深刻な問題です。11年12月に発売したのですが、ホームセキュリティにカメラをつけて、通帳や証明書、処方箋、電話帳のデータなどをすべてセコムでお預かりしようというサービスです。

各企業・自治体の問題として、コンピュータが水没してしまってはデータが消えてしまいます。事業を継続するために、データをお預かりする。このニーズはいま非常に高まっています。

―― 東京電力が持っていたデータセンターのアット東京の買収を手がけたのも、伊藤社長でしたね。
伊藤 12年にアット東京をセコムのグループにしたことで、24万平方メートルの、日本最大級のデータセンターができました。これを使って、BCPをはじめ安心を持ってもらえればと思います。もともとは災害時の社員や家族の安否から始まったものですが、現在では、社員の状況を見ながら、あなたは会社に来てくれ、君は工場に行ってくれと指示が出せるまでサービスが進化しています。

拡大も多角化ではない

―― なぜ警備以外の領域に広がったのでしょう。
伊藤 誰でもそうなんですが、あることが満たされると、もっとこうしてほしいというニーズが出てきます。たとえば離れた家族の安否確認をしてほしい、とか。お客様が困ったことを、何とかしてくれないかと言われれば、それにお応えしよう、解決しようというのがセコムなんです。

―― 伊藤社長が入社した当時、このような会社になると想像できましたか。
伊藤 当時は日本警備保障という名前でしたから、現場に配属されて、営業もやって、ということをしていました。ただ、80年代にホームセキュリティを売り始めたころ、セキュリティをデパートで買える時代にしたいという言葉が聞こえ始めました。入社したころは、こんな会社になるとは思ってなかったですね。前例のないことをたくさんやってきたのは確かです。現状を否定するんだと、いつも言われつづけていました。

創業者である飯田(亮氏。現・最高顧問)からは、判断基準は「正しさ」であると言われました。我々にとって、ではなく、社会にとって正しいかどうか。現状は打破し、既成概念も打破する。新しいものを生み出していく。必要なことをやりつづけてきたら、いまのセコムになったわけで、多角化をしているというイメージはないですね。

世の中にはまだ、必要でも実現できていないことがたくさんあります。サイバーテロも高度化し、悪質化している。サイバー空間の安全も重要なテーマです。早くサービスを立ち上げれば、進化させられますから、いかに早くサービスをつくっていくかが課題だと思っています。

(聞き手=本誌・児玉智浩)

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