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2014年11月号より

平野雅之 日商平野社長に聞く 八王子のことはおまかせ! 「地場密着」の5代目社長
平野雅之 日商平野社長

日商平野 社長 平野雅之

ひらの・まさゆき 1976年生まれ。高千穂商科大学を卒業後レカム入社。2004年家業である日商平野入社。08年から社長を務める。プロパンガス販売が主力だった会社を事務機販売主力の会社へと変身させた。学生時代にはバックパッカーとして世界40カ国を回った経験もある。

代が替わると仕事も変わる

―― 日商平野は八王子が地盤の企業ですが、業務内容を見ると、通信機器販売、水のアクアクララ販売、不動産、除菌水クリアスイ販売、黒にんにく販売、ホームページ(HP)制作、セミナー事業と多岐にわたっています。いったい何屋なんですか。
平野 私は日商平野の5代目となるのですが、代が替わるごとに職種が変わってきました。2代前は商店をやっていましたし、父の代ではプロパンガスをメインにしていました。私は2004年にこの会社に入り、08年に社長を継いだのですが、その前年にはプロパン事業を売却し、身軽になってスタートしました。不動産事業とアクアクララ販売は先代から続いていますが、それ以外は私の代になってから始めたものです。

―― どういう基準で、事業を選んでいるんですか。
平野 平野家のDNAと言っていいと思いますが、困っている人がいると放っておけない。いまのメインの事業は事務機器販売および保守ですが、これをやろうと思ったのも、あまりにも騙されている人が多かったからです。メーカーやその代理店のセールスマンの言うがまま、高い事務機器を売りつけられていました。

家業を継ぐ前、私は事務機販売のレコムの営業をやっていました。ですから、事務機のことなら土地勘がある。ですからお医者さんのような立場で、この契約はおかしいとか、こうしたほうがいいというアドバイスを送ると同時に、その会社に合った事務機を販売するようにしたのです。

―― 言うなれば「保険の窓口」の事務機版のようなものですね。
平野 そうです。人助けにもなるし、ビジネスにもなる。こんなにありがたい仕事はないと思いました。

それ以外のビジネスについても、同じような形で始めたものばかりですし、自分たちでできないことは信頼できる会社を紹介する。HPの場合なら、値段がピンからキリまであって、一般の人にはよくわからない。そこで我々が窓口になって制作会社を紹介するという形です。

―― セミナー事業はどういう経緯で始めたんですか。
平野 うちには大学生が何人か働いていて、彼らが企画・運営の仕事がしたいと言ったのがきっかけです。セミナーイベントをやってみたら、意外と楽しい。お客さんにも喜んでもらえる。それでやることにしたのです。

八王子は都心から距離がありますから、都心のセミナーに参加しようと思ったら1日がかりになってしまいます。だったら、講師に八王子にきてもらえばいい。そうすれば八王子の人たちは喜ぶし、我々の顧客に対しては無料で招待することで、CS(顧客満足度)を高めることができる。さらにはどうせ事務機を買うなら、日商平野に頼もうというお客様も出てくる。別にビジネスのために始めたことではありませんが、結果的にビジネスに結びついています。

―― 本当に地場に根差したビジネスを展開しているわけですね。
平野 八王子市には58万人の人口がいますが、これは鳥取県の人口とほぼ同じです。企業数は2万社にのぼります。よく、八王子以外でビジネスをしたらどうかと言われますが、これだけの規模がありますから、地域に密着したビジネスが十分成り立つわけです。

だからこそ、八王子の街起こしには積極的に関わっていきたいと思っています。その中でもとくに、学生の役に立ちたい。八王子には23の大学があります。その学生たちの最大の悩みは、いまでこそ少し緩和されましたが就職難です。入学した時から、就職がゴールになってしまっている。その一方で、中小・零細企業は新卒社員を取りたくても取ることができない。ミスマッチが起きています。この問題をなんとかしたい。

といってマッチングだけでは面白くない。そこで八王子の学生たちを対象に、経営者が直接語るセミナーを開いたりしています。経験者の立場から、行動すること、アウトプットすることが何より大事であり、就職はその通過点でしかないことを知ってもらいたいという気持ちから始めています。

―― それではまったくビジネスにつながらないでしょう。
平野 そうですね。お金には一切なりません。でも未来への投資と割り切っています。八王子で、売り上げ1位の会社になることは、私の能力から言って無理でしょうけど、学生のことなら平野、何かあったら平野、という存在になりたい、ということを常に考えていて、そのための投資です。こういう機会を通じて、自分の考え、自分のDNAを広めていきたいと考えています。

これは平野家のためでもあるのです。私は父から何か言われても、わかってはいても、親子だからこそ、素直に聞くことができないところがあります。そしておそらく30年後、私と息子との間で同じことが繰り返されるでしょう。だけど、親の言うことは聞けなくても、15歳ほど年上の信頼でき尊敬できる人に同じことを言われたのなら聞くことができる。私と学生の関係もそうで、彼らは私の言うことを素直に受け入れる。こうやって私の考えを広めていけば、15年後、私の息子が彼らから、私の考えを学ぶことになるかもしれません。このようにワンクッション入れることで、私と息子が結びつく。そういう効果も期待しています。

1人の客のニーズに応える

―― 先ほど、代が替わるごとに事業内容も変わると言っていましたが、事業に対する考え方として、変えてはいけない背骨のようなものは何かありますか。
平野 お客様から後ろ指を指されないということです。後ろめたいことは絶対にしない、困っている人がいたら損得を抜きにして助けてあげる。こうした考えは代々受け継がれています。

―― お父さんから直接何か教えられたことはありますか。
平野 特別なことはないと思いますが、平野家の考え方として「魚を与えるな、釣り方を教えろ」というのがあります。魚を与えられても、食べてしまえばそれで終わりです。だけど釣り方を教えれば、ずっと魚を食べることができます。裸一貫になっても、家族を養っていくこともできる。それと、後世に残ることをしなさい、と言われましたね。私にとっては学生の教育が、後世に残る仕事になると思います。

―― 日商平野の会社としても目標はありますか。売り上げをどこまで伸ばしたいとか、八王子一の会社になりたいとか。
平野 先ほど言ったように八王子一というのは無理だと思いますし、売り上げをいくらにしたいという目標も一切ありません。業種に対するこだわりもまったくありませんから、ずっと事務機販売をやっているかどうかもわかりません。

要は、お客様に喜んでもらえることならなんでもやっていく。ですから社員に対してはユーティリティプレーヤーであることを求めています。一人三役は当たり前。いつでもどこへでも配置転換できるようにしています。

―― これからも次々と新しい事業に取り組んでいくわけですね。
平野 そのつもりです。極端な話、1人でも、こういうことをしてほしい、という人がいたら、その希望に応えていく。大きな会社だったら、新規事業を始める場合、市場規模はどのくらいなのか、費用対効果はどうなのか、きちんとリサーチしなければなりません。

でも我々のような小所帯なら、そんなことは考えずに、私がやろうと思ったらすぐに始めることができるし、お客様の要望に応えるわけですから、最初から顧客がそこにいる。その意味では、リスクは極めて小さい。だったらやるしかないじゃないですか。

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