2014年11月号より
ALL SECOM戦略の中心に位置されているデータセンター。今後さらに蓄積されるであろうビッグデータの中心基地でもある。このデータセンターを運営するのが、セコムトラストシステムズだ。
泉田達也社長(写真)はデータセンターの役割について、こう語る。
「セコムのグループ会社をITで束ねているのがトラストシステムズです。グループ間のネットワークやイントラネットもやって、業務の効率化を担っている部署になります」
ネットワーク関連だけでなく、トラストシステムズのもう一つの顔になっているのがデータセンター事業者である点だ。2012年に東京電力から買収したアット東京に従来セコムが持つセキュアデータセンターを合わせると、24万平方キロと、日本でも最大級の広さをもつデータセンターになる。
「セコムはすべてのお客様にセンサーを張り巡らせています。そこからネットワークでセコムのコントロールセンターにデータを集め、対応している。ここに集まるグループの情報が集積してビッグデータになり、これを有効に解析してサービスをつくっていくことになります」
データセンターのビジネスはセコムグループ内にとどまらない。大手金融機関や自治体もセコムにデータを預け、それがサービスとしてデータセンターだけでも利益を生み出す体質に育ってきている。
「以前はメーカーさんなど、大きな工場の端っこに小さなデータセンターが設置されていたものです。ところが震災以降、流れが変わってきています。データセンターを自社で持つのは、非常にコストがかかります。まして免震構造のものを建てるとなれば、投資額は膨らむ一方です。CO2の排出量も大きく、環境面の問題もある。それらに対応しているデータセンターに預けたほうが、経済合理性、災害時のBCPの観点からも、いいわけです。その代わり、預けて安心、という会社でなければならない」
近年、金融機関や自治体、企業に対するハッキング被害は後を絶たない。その手口も巧妙かつ悪質になり、サイバーセキュリティはどこの企業でも課題の1つだ。この分野もセコムトラストシステムズが担う。
「インターネットバンキングの被害が今年すでに18億円を超えたということです。法人、特に地方銀行のお客様が被害にあっているという。そこで、セコムも安全にネットバンキングができるサービスを出しました。たとえ端末がウイルスに侵されていても、セコムしか経由しない通信で、セコムの安全なパイプを通って、銀行のインターネットバンキングまでエスコートするイメージです。昔は愉快犯が多かったのですが、いまは産業スパイのように新製品の情報を抜いたりという事件も増えています。しかも、データを抜いた形跡すら残さず、市販のウイルスチェックでは防げないものになっています」
トラストシステムズの前身の1つに、セコムとNTTが合弁でつくった日本コンピューターセキュリティという会社がある。これは創業者の飯田氏が1985年につくった会社だ。インターネットが認知される10年以上前からネットワークセキュリティを危惧していたことになる。
「当時からネットワークを駆使した警備システムをつくってきましたから、ネットワークが経営上の重要な資産になるとわかっていたのだと思います。ALL SECOMの中心として重要な役割を担うわけですから、さらに強いデータセンターを作っていきたいですね」