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2015年10月号より

マツダとスバル ─ トヨタも羨む“独創力”|月刊BOSSxWizBiz

ジャーナリスト・ファイナンシャルプランナー 鬼塚眞子

おにつか・しんこ 大手生命保険の営業職、業界紙記者を経て保険ジャーナリスト、FPとして独立。介護相続コンシェルジュ代表理事。著書に『保険選びは本当にカン違いだらけ』がある。

保険料より保障内容

ライフステージにおいて、子どものいる40代後半はローンや子育てでお金のかかるピークで、50代に入ると、シングルも含めて自らのセカンドライフへの準備とお金のやりくりを真剣に考えはじめる時期になる。それとともにこれまでは漠然とした「老後」が、身体の変化も感じるようになり、急に現実のものになる。

ここでは、こうした年代の人にとって、必要な保障の見直しや選び方について考察したい。

生命保険の見直しあたっては、保険料重視か、保障重視か、といった2つのアプローチがある。

なかでも、最近は単に保険料が安ければよいという報道も多い。しかしこれを、鵜呑みにして加入中の保険を解約したり、安い保険に加入して保障の範囲ではないとして保険金が出ないといったトラブルも発生。保険料ばかり気にしていざというときに役に立たないということもあるという。むしろ、安い保険は損ということもある。それもあってか保険の相談現場では「保険料は同じでいいから、内容を充実したい」と、機能性を重視する声が増えている。

昨今、既往症のある人でも加入できる緩和型保険の種類も増えてはいるものの、生命保険はそもそも健康でなければ、希望通りに選ぶことは難しい。しかも、50代以降は加齢と健康維持を考慮すると「最後の見直しのチャンス」になる可能性もあり、慎重に内容を吟味する必要がある。

医療保険は“使い勝手”

まずは医療保険から、見直しのポイントを押さえていこう。

医療技術の進歩に従って、医療保険も目まぐるしく進化している。

日帰り入院から保障の対象とする保険は、もはや一般的だが、手術給付金の対象もずいぶん変化した。以前は手術を88分類に区分する医療保険が多かったが、不払い・未払い問題の発覚以降、「公的医療保険対象の手術」とする医療保険が主流だ。それにより、「ものもらい」「中耳炎」「切れ痔」などが対象に加わる一方で、「持続的胸腔ドレナージ」「悪性新生物根治放射線照射」などは、対象外となったことは注意したい。

手術給付でも、入院日額の10・20・40倍といった倍率で出るタイプから、一律いくらというタイプが増えている。とくにこの2~3年の傾向として、入院後の通院治療を重視するタイプや、8大生活習慣病特約疾病や精神疾患を対象にするなど、保障範囲が広がっている。ただ、各社の疾病の保障範囲が違うことは覚えておきたい。たとえば肝疾患と肝硬変、腎不全と腎疾患といった具合に、保障範囲に差がある。また、女性疾病も各社によって保障範囲が異なる。

見直しや追加加入をする際は、入院後の通院保障の内容、気になる疾病の保障範囲、手術の倍率などを注意深く吟味したい。この年代の保険見直しを最後のチャンスとすれば、10年、20年後の社会保障制度の変化なども加味したい。そこで注目したいのが、今後の社会環境を先取りするような、公的医療保険制度と連動した医療費の自己負担をサポートする医療保険の登場である。

また、50代以降の医療保険では、どういった疾病に力点を置くかも見逃してはいけない点だ。

その手掛かりが、厚生労働省が発表した「平成23年人口動態統計月報年計(概数)の概況」で、下表は50代以上の死因をまとめたものだ。これを見ると、50代以上の死亡要因は自殺を除けば、「がん(悪性新生物)・急性心筋梗塞・脳卒中」の3大疾病で、3大疾病の保障の内容は要チェックポイントになる。

入院日数という点では、医療現場での入院日数の短縮化を踏まえ、病気やけがで入院した際の1入院の限度日数は30~60日のタイプが人気だ。

また、2011年度の厚生労働省「患者調査」によると、退院患者の平均在院日数は32.8日。疾病別の平均在院日数は、胃の悪性新生物22.6日、結腸及び直腸の悪性新生物17.5日、肝及び肝内胆管の悪性新生物18.6日、気管・気管支及び肺の悪性新生物21.7日、心疾患21.9日、脳血管疾患93日と、3大疾病でも脳血管疾患に備えるには、1入院の限度日数30~60日では不足が生じる。

リニューアルするがん保険

一方、50代以降の死亡原因の第1位は全世代で“悪性新生物(がん)”だ。そこで各社ともにがん保障については、とりわけ力を入れている。

がん療法は、手術療法・化学(薬物)療法・放射線療法の3大療法がメインだが、がん保険は、医療技術の変化にともない、常にリニューアルされている。その結果、いまは入院給付よりも、診断一時金と通院治療に力点を置いた商品が多い。

ところで、がん療法における日本の先駆的な役割が国際的に評価が高いことは、あまり知られていない。その典型例が「重粒子線治療」で、がん病巣の形や位置や深さに合わせ照射する“切らない治療”だ。そのため高齢者も身体の負担にならず、早期なら根治治療も可能だ。しかし、現時点では健康保険適用外の「先進医療」のため治療費は全額自己負担で、その金額も300万円前後と高額になる。そのため各社では「先進医療特約」をラインナップ、治療費のサポートをしている。

ただ、先進医療特約は、先進医療の技術料だけを対象としたものと、指定病院で治療を受けるための宿泊費や交通費までサポートするものまであり、各社まちまちなため、その内容もチェックしておきたい。

加えて、がん治療では先進医療に指定されていない健康保険適用外の「自由診療」も多彩。公的保険診療、自由診療、先進医療を問わず、がん治療費を保障するがん保険もある。とく昨年末には、がん免疫細胞療法の治療費を保障する新しいタイプのがん保険も登場、がん保険の新たなトレンドとして注目しておきたい。

また、がんだけでなく心筋梗塞、脳卒中の3大疾病保険でカバーする方法もあるが、3大疾病保険は、保険料が高いとの声があったことも事実だ。そんな3大疾病保険の新たな動きとしては、コストパフォーマンスのよいものや、長期にわたりサポートする保険が発売されている。なかでも経営者向けの法人契約が可能なものもあり、こうした法人向けは保険料を全額損金計上ができ、節税効果と相まって話題となっている。

表:50代以上の死亡要因(男女平均)


介護保険の賢い利用法

一方、老後に対応する保険として欠かせないのが介護だ。介護保険で難しいのは保障内容はもとより、どの程度の保障期間が必要かも考えなくてはならない。

生命保険文化センター「平成24年度生命保険に関する全国実態調査」(下図)では、介護の期間(介護中の場合は経過期間)は、平均56.5カ月(4年9カ月)だ。しかし、そのデータを詳しくみると、約3人に1人は4~10年未満(33.9%)、約10人に1人は10年以上(12.5%)とばらつきがあり、一概に何年と言い切れないのが悩ましいところ。とはいえ、最近の介護保険はコストパフォーマンスに優れた商品もいろいろと登場している。

さらに特記すべき、まったく知られていない意外な盲点として、介護保険の定期タイプと死亡保険の定期タイプの保険料単価を比較すると、介護保険の保険料のほうが安い商品があるいうことだ。
法人契約の、介護保険は全額損金計上できる商品がある。そこで法人契約保険の死亡定期保険の一部を見直し、介護保険に切り替えることは節税対策にもなる。

50代からの老後資金

老後の不安といえば、やはり年金だろう。セカンドライフを実際のものとして意識しはじめる50代以上にとって、老後資金問題は避けて通れない問題だ。

総務省「家計調査報告(2014年平均速報)」によれば、世帯主が60歳以上、無職である世帯(世帯員2人以上)の平均可処分所得は約17.6万円に対し、消費支出約24.7万円と、すでに1カ月間で約7.1万円不足している。

50代以上になると「老後資金作りはもう間に合わない」と感じてしまうかもしれないが、最近では10年短期払いが取り扱える個人年金や運用性の高い商品も各種発売されており、まだまだ間に合う可能性は高い。なかでも、バブル期のイメージから敬遠されがちな変額保険も商品が一新、今後予測されるインフレに対応する運用商品(外貨建て)は、チェックしておきたい。

ここまで見てきたように、各種データから中高年以降を取り巻くリスクを軽減するために重要なのは、しっかりとした情報収集で、保険見直しもどんぶり勘定ではなく、これを基本にして行う必要がある。

人生85年時代の保険選び――それは保険料より保障性、そして、万一の備えではなく、確実に使うという意識で吟味していくことが賢明といえるのではないだろうか。

表:50代以上の死亡要因(男女平均)

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WizBiz代表・新谷哲の著書「社長の孤独力」(日本経済新聞出版社)

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