2015年10月号より
会社の保障はいくら必要──計算方法
法人契約での保険契約の目的は大きく分けて2つある。
その1つが、万一に備えた保障の準備で、これはさらに2つに分けられ、経営者に何かあっても会社を存続させるための事業保障資金の確保と、経営者や従業員の死亡退職金や弔慰金といった家族への保障だ。
そして、法人契約保険のもう1つの目的は、資産形成で、これは勇退退職金の準備になる。
これらの保障金額はドンブリ勘定ではなく、業種や資本金、借入金、従業員給与など、数字を当てはめて計算することができる。このシミュレーションケースで計算すると、およそ1億5000万円になる。
「借入金や従業員の平均給与などわからない部分もありますが、このくらいの保障は必要です。現在、7000万円の保険に加入されていますが、これでは事業保障資金だけで、社長の死亡保険金や弔慰金は入っていない数字ですね」
と話すのは、前出の日本生命・久保田麻理子さんだ。また、久保田さんの試算によれば、このケースでは7000万円の勇退退職金を受け取って問題はないという。
勇退資金5500万円+α
「法人向けの提案はさまざまな保険商品がありますが、ご提案したものは社長の老後の資金を会社に貯めてもらうためにベーシックな保険を使ったものです」と久保田さん。その内容は経営者である夫は1億円、役員の妻には5000万円の保障で、100歳までの長期定期保険にそれぞれ加入するというシンプルなものだ。
保険としては定期死亡保険だが、狙いは本人が75歳で会社を廃業し、その際に夫婦が勇退資金として受け取るお金を会社に貯めるためのもの。
このプランでは本人が受け取れる勇退資金は、解約返戻金と配当の合計金額で4182万円。妻は1587万円になる。また、このタイプの保険は保険料の50%を損金にできる、節税の効果もある保険だ。
さらに久保田さんは、この保険に加えて夫婦の老後の医療費カバーの保険として、法人契約で総合医療保険への加入をすすめる。
「医療保険は全額損金計上でき、退職時には現物支給として名義を書き換えれば、終身で医療保険を確保することが可能です」(久保田さん)
ただし、名義変更の際に課税対象になる(評価額は20万円)。保障、勇退資金、節税と、法人保険は使い方次第だ。