ビジネス誌「月刊BOSS」。記事やインタビューなど厳選してお届けします! 運営会社

特集記事

2013年9月号より

エルテス・菅原貴弘社長

エルテスは「レピュテーション対策」で評価の高い会社だ。レピュテーション対策とは、インターネット上で誹謗・中傷された時、そうした書き込みのあるサイトが検索で上位にこないようにするサービスのこと。この会社を率いるのが、菅原貴弘氏(33)。岩手県出身で東大在学中の2004年にエルテスを創業、翌年には事業に専念するために大学を中退した。思い残すことは「まったくない」という。

信用されるけど儲からない

―― 菅原さんはエルテス創業前にも、もう1社、ハードウェアの会社を立ち上げています。最初から起業家になろうと考えて東大に入ったんですか。
菅原 必ずしもそうではありませんが、大物になりたいという思いは、ずっと持っていました。

それと、地方にいる頃は、東大とはとてもいいところなのだろうという期待ばかりが膨らんでいました。ところが実際に入ってみると、それほどたいしたことはないことがわかった。でも優秀な人たちはたくさんいる。そうすると私としては、彼らを逆転してやろうという思いが湧いてくる。そのためには、彼らのやらないことをしなければならない。それが、リスクを取るという生き方です。

つまり起業であり、大学を中退して退路を断つということでした。

―― 昔に比べ、東大出身の起業家が増えているように思います。
菅原 いま東大出身の社長たち5、6人で「東大創業者の会」というのをつくって、2カ月に1度、集まっては飲んでいます。でも増えたかというとそうも思えませんね。はっきりとはわかりませんが、私の同期で起業したのは恐らく3、4人。1学年5000人ですから、けっして多くない。ただ毎年、それだけの人数が積み上がっていけば、10年もたてば増えたなということになるんじゃないですか。

―― 東大出身起業家の長所、短所というのはありますか。
菅原 長所といえるかわからないけれど、つまらないコンプレックスは持たずにすみますね。それと、東大ということで尊敬してくれる人がいることは確かです。こいつはバカではない、と思ってもらえる。

リスクを選んだ菅原貴弘・エルテス社長。

それと、金を持っている人が多い。私は一時、借金が5000万円、現金が25円しかないという時がありましたが、ゴールドマンサックスに勤める先輩に相談したところ、ポーンと1000万円貸してくれたことがありました。

デメリットとしては、東大出身の起業家の中には営業できる人が少ない。営業というのは上からガツンと言われないとできないんですね。そういう経験があまりない。

それともう1つの欠点が、マクロから入りがちなことです。たとえば世界平和の役に立ちたいなんてことを平気で言う。立派なことですが、実際にはいいクルマに乗りたいといったような、次元の低い欲求に基づいたほうがビジネスの現場では強いんです。あるいは、自分がきちんとやっているところを見せたいという気持ちが強い。だから周りからは信用されるかもしれないけれど、儲かっているかというとそうでもない。そういう傾向があるように思います。


―― アメリカでは、優秀な学生ほど就職しないでベンチャーを立ち上げる傾向があるようです。日本で言えば、東大出身者こそ起業家にならなければいけないのに、そうはなっていません。
菅原 文化の違いと言えばそれまでですが、アメリカの場合、当たった時はものすごくでかいということがあると思います。一発当たれば世界に広がる。そのぶんリターンも大きい。日本の場合、成功してもアメリカとは比較にならない。ハリウッド映画と日本映画のようなものです。ということは、起業はハイリスク・ミドルリターン、サラリーマンとしてそれなりに出世すればローリスク・ミドルリターンです。だったらどっちを選ぶのか、ということではないですか。

何より、自立できている学生が少ない。自立できないから親の価値観に縛られてしまう。リスクを取れるわけがありません。

経営ノート | 社長・経営者・起業家の経営課題解決メディア

WizBiz代表・新谷哲の著書「社長の孤独力」(日本経済新聞出版社)

WizBiz代表・新谷哲の著書「社長の孤独力」(日本経済新聞出版社)

 

0円(無料)でビジネスマッチングができる!|WizBiz

WizBizセミナー/イベント情報

経営者占い