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2013年9月号より

起業=社長でなくてもいい

有機野菜や青果物のネット通販、宅配を手がけるオイシックス(今年3月に東証マザーズに株式上場)。同社を創業した髙島宏平社長(39)は、横浜にある私立の中高一貫校、聖光学院から東大工学部、さらに同大大学院に進み、1998年に外資系コンサルティング会社のマッキンゼーに入社。2年後の2000年にオイシックスを立ち上げた。なぜ、大卒で就職を選択しなかったのか。キャリア観、人生観などを高島氏に聞いた。

大学院時代に「プチ起業」

―― 東大の学部時代、就職活動はしなかったのでしょうか。
髙島 いわゆるエリートのレールに乗っている自分に対する、恐怖心みたいなものがすごく強かったんです。このまま、東大卒業生によくある人生になっちゃうことへの恐怖ですね。プラス、あまり就職観というものがなくて、就活にも出遅れてしまった。インターネットに最初に触れたのは4年の頃でしたが、正直、やりたいことも定まらない感じで、気がついたらもう、就活は終盤戦。そこで大学院でも行くかと(笑)。

―― 学部時代は物理専攻、大学院では情報工学が専門でしたね。
髙島 結局、大学院時代もあまり学校には行ってなくて、代わりに仲間と立ち上げたのが「Co.HEY!」という会社で、いわば会社ごっこを始めました。とはいえ事業計画も何もなし。インターネットを使ったイベントの生中継、たとえば「世界鉱山サミット」というのがあって、これは秋田県で行われたんですが、それを全世界に配信してみたり。

ともかく、最初は遊びで始めたビジネスが面白くて、仲間と一緒に何かを達成することが非常に性に合うなと思ったんです。あとは企業のホームページづくりなども手がけていました。ただ、サークルみたいな乗りでしたから、当時は偶然うまくいっていたものの、計画性も何もないので今後、学生の延長線では大きな成功は望めないだろうなと。

―― そこでいったん、会社勤めすることになるわけですが。
髙島 マッキンゼー以外にも商社など5、6社受けましたが、商社では5年ぐらいは修業の身で下積みでしょう。そんなに時間はかけられない。マッキンゼーが、一番早く内定を出してくれたということもありますが、3年間、こき使われて密度の濃い時間を送れそうだと考えた結果、マッキンゼーに決めました。

結局、在籍期間は2年でしたが、入社後の直属の上司が南場智子さん(ディー・エヌ・エー創業者)で、一緒にIT関連企業のコンサルの仕事をさせていただきました。当時、マッキンゼーでもIT系の仕事が急増していた時期でしたので、とてもいい経験になりましたね。

大学院時代の仲間とも、「一度、ビジネスの世界で勉強してこよう」と言ってましたので、僕は僕でマネジメントを学びに行くし、システムを担当していた人間は、勉強のために日本IBMに行きました。メーカーや金融関係に行った者もいます。それぞれが、違う専門知識を身につけた上で、再び集まろうと約束したんです。

「食」にこだわった理由

―― マッキンゼーを辞める時、両親には反対されませんでしたか。
髙島 事後報告で、辞めて1カ月経ってから伝えました。ウチの両親はもともと放任主義で、「どんな選択をしてもいいけど自分で責任を取りなさい」というタイプでしたし、僕自身、他人と人生を比較しないという人生観がありましたから。

―― マッキンゼー入り後、どんな事業で起業するのかは、かなり早い段階で決めていたのでしょうか。
髙島 インターネットを使って世の中を変える仕事、というのはいろんな人が考えると思います。僕はその中で、衣食住に関わる、いわば生活に密着したビジネス、それも、あったらいいとか便利なではなく、なくてはいけないものでチャレンジしたかったんです。

ネットとの親和性で真っ先に挙がるのは旅行や金融ですが、それだけ競争も多い。その点、食分野はサプライチェーンが複雑で、生産者と消費者の距離も遠いでしょう。そこに有機や無農薬の商品で勝負すればマッチングの相性もいいと考えました。

―― 母校の東大で講演する機会もあると思いますが、後輩たちにはどんなメッセージを送っていますか。
髙島 学生の選択肢は、就職か起業かの二者択一で、起業となるとイコール社長とばかり考える人が多いんですね。中には、「起業も考えたいけど、自分は社長に向いてないから」と言って諦める人もいます。「でも、本当にそれでいいのか」と。

「早い時期に売り上げを4桁(1000億円)にしたい」と、事業拡大に貪欲な髙島宏平・オイシックス社長。

僕の場合は、最初から社長ということが念頭にありましたけど、そうじゃない選択肢もあるはずです。たとえば、起業の立ち上げメンバーになって、ファイナンスでもいいしマーケティングでもいい、何らかの部門のスペシャリストになればいいんです。

会社は社長1人では回っていきません。ほかに、大事な役回りを担う人は何十人と必要なはずです。そこで、会社がいい組織、いいチームになっているかどうかが問われるわけですから。




―― 髙島さんが起業したのは20代半ばですが、最近の若手起業家の中にも東大出身者がいます。当時と比べて、何か相違点は感じますか。
髙島 ソーシャルゲーム系を例にすれば、善し悪しではなく、昔に比べて起業が手軽になった気はしますね。起業というよりは趣味の延長からスタートみたいな。いまの若い人はネットのプログラミングができるという武器がありますから、楽しく軽やかな印象といってもいいですね。僕らの世代だと、もっと歯を食いしばってやる感じがありました。その分、事業大きくをしたい、成長したいという欲求は、僕らのほうが強いかもしれません。

(聞き手=本誌編集委員・河野圭祐)

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