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特集記事

2013年7月号より

欧米、中韓主要メディアは“黒田ショック”をどう報じたか

「日本が金融革命を開始した」

これは4月5日付の英フィナンシャル・タイムズ(FT)の見出しである。4日の金融政策会合で、日銀が異次元の金融緩和策を決定したことを受けてのものだ。日本ではこの緩和策について、各紙とも当日の夕刊の1面トップで大々的に報じたが、それでも、FTほど「刺激的」な見出しを掲げたところはなかった。

FTはかねてから、日銀は金融緩和策に転じるべきだと主張する記事を掲載してきた。日本がデフレ経済から脱却するにはそれ以外にないと判断していたためだ。しかし日銀の重い腰はなかなか上がらない。それが黒田総裁が就任し、ただちに政策転換したことが、これまでの日本ではありえない「革命」に映ったのだろう。記事では「世界でもっとも慎重だった日銀が、他の中央銀行の先を行こうとしている」とまで書かれている。

独フランクフルター・アルゲマイネ電子版は「天変地異が起きた」と、これまた最大級の驚きをもって伝えたうえで、「政府への財政支援と受け取られる可能性もあるが、黒田総裁ははっきりと否定した」と書いている。

一方、アメリカでの反響はどうか。

「黒田総裁は劇的なスタートを切った」と社説に書いたのはウォールストリート・ジャーナルだ。ただし同紙は、「日本経済が回復するのは金融政策よりも構造改革次第だ」と、黒田総裁よりも、安倍首相の手腕にかかっていることを指摘している。

またワシントン・ポスト紙は「日銀の野心的な決定は世界を駆け巡った」と、その衝撃の大きさを伝えている。

AP通信の配信は多少手厳しく、「日銀の政策変更は参院選までに経済を向上させたい自民党政権に協力したもの」と、日銀の独立性に疑義をはさんでいる。

5月のG7でも日銀の政策は受け入れられた。(アフロ)

それでも欧米系のメディアは、驚きを伝えるとともに、日銀の「賭け」がどうなるか興味を示している。

もちろん好意的な報道ばかりではない。特にこれまでウォン安によって日本との経済戦争に勝ち続けてきた韓国メディアは危機感を募らせている。

朝鮮日報は、4月20日のG20で日銀の金融緩和に大きな異論が出なかったことについて触れて「韓国経済は、円安の影響で輸出が行きづまり、政策の一貫性の中で内需も危機的状況にある。韓国大統領と経済閣僚は現実を直視し、なるべく早く対策を講じるべきだ」と社説で論じている。すでに昨年秋以降、ウォンは円に対して高くなっており、それに伴って経済状況は一気に悪化しているだけに、非常に深刻にとらえている。

中国メディアも日銀が金融緩和を決定すると同時に一斉に報じたが、人民日報は「量的緩和の規模は米連邦準備制度理事会(FRB)を上回り、新たな通貨戦争を引き起こす可能性がある。現在、韓国と欧州が日本のやり方に不満を表明している。日本が現在の隣国を防波堤にするようなやり方を続けるなら、新たな円安競争を引き起こし、ひいては世界金融市場に動揺と不安をもたらすことは必至だ」

と警告を発している。

お手並み拝見といった感じの欧米メディアに対して、中国と韓国のメディアは、自国の利益への影響もあって、強い懸念を示す。ただそれでも、中韓両国が本気で不満を表明する際のような過激さはいまのところ見られない。

これもアジア銀行総裁を長く務めた(次頁の経歴参照)黒田総裁の威光のおかげかもしれない。

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