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2015年11月号より

ネットフリックス日本上陸で始まる「コンテンツ新時代」|月刊BOSSxWizBiz

“黒船襲来”

2015年9月2日、ネットフリックス(NET FLIX)が日本でサービスを開始した。同社は米カリフォルニアに本社を置く、世界最大の映像ストリーミング配信会社で、会員数は全世界で7000万人に迫る。その巨大さから「動画配信の黒船」の異名を誇る。

ネットフリックスが提供するのは、SVODというタイプのVOD(ビデオ・オン・デマンド)だ。VODには3種類ある。AVOD(advertising video on demand)は公告収入によって成り立つもの。ソフトバンクが提供するGyao(ギャオ)がこのタイプだ。もう1つがTVOD(transactional video ondemand)。都度課金型動画配信と呼ばれるもので、1つのコンテンツを見るたびに課金される。ビデオレンタルのウェブ版と言っていい。そしてSVOD(subscription videoon demand)は、定額制の動画配信サービスだ。

ネットフリックスの場合、いちばん安いコースなら、1カ月704円(消費税込み)で1200タイトルの動画を好きなだけ見ることができる。仮に1日1本の映画を見たとすれば、1本あたり単価は20円強となる。TVODではこの料金は実現できない。

SVODとしては、やはりアメリカに本社があるHuluが2011年にサービスを開始した。しかし思ったほど利用者が伸びず、14年からは日本テレビが事業を引き継いだ。また携帯3社、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクもそれぞれ、dTV、ビデオパス、UULAというSVOD型のサービスを始めている。

米国のHuluが運営譲渡したことからもわかるように、これまで日本ではSVODが根付かないと言われてきた。携帯3社が手がけているのも、加入者サービスが目的から始まったために、本業として提供しているわけではない。

日本進出を果たしたネットフリックスのリード・ヘイスティングスCEO。

しかしネットフリックスは違う。開業にあたっては、創業者でCEOのリード・ヘイスティングス氏が来日、インタビューを受けるだけでなく、芸人と絡むなど、あの手この手でPRを行っていた。

「動画コンテンツは、いずれすべて配信に取って代わる」というのがリードCEOの持論だ。電波からインターネットへと伝送手段が変わっていく。インターネットの場合、電波のような一斉送信とは違い、ユーザーの好みに応じた多種多様なコンテンツを送信できる。テレビの視聴者は受け身だが、ネット視聴者は自らコンテンツを取りに行く。動画コンテンツの見方は今後、大きく変わるかもしれない。ネットフリックスは、その覇権を目指している。

最大のライバルはアマゾンだ。アメリカではネットフリックスに次ぐ会員数を誇っており、間もなく日本でもサービスを開始する予定だ。アメリカでは年会費を99ドルに設定しているが、アマゾンのプライム会員になれば無料で楽しむことができるため会員が急増中だ。物流によって世界を制しつつあるアマゾンが、情報のデリバリーにおいても頭角を現しつつある。

音楽の世界でもiTunesに代表されるダウンロード型(映像のTVOD)から、定額のストリーミングサービスへと大きな地殻変動が起きている。

新たに広がる巨大市場

9月3日、グーグルの音楽配信サービス「グーグルプレイミュージック」が日本で始まった。アメリカでは2年前に始まり、全世界の会員数は5000万人に迫る。それに先立つ7月には、アップルが「アップルミュージック」のサービスを開始した。グーグルもアップルも料金は1カ月980円(アップルは現在無料期間中)。この価格で、それぞれ3000万曲を超える楽曲が聴き放題だ。さらにはスウェーデンの巨人、スポティファイも進出のチャンスをうかがっている。

これをLINEミュージックと、サイバーエージェント系のAWAが同様のサービスで迎え撃つ。

動画も音楽も、定額型見放題・聴き放題サービスの時代が始まりつつある。当然のことながら、既存の有料無料を含めメディアは大きな影響を受ける。淘汰されるメディアも出てくるだろう。DVDやCDなどのパッケージソフトが売れない傾向に、さらに拍車がかかるのは間違いない。

その意味で、ネットフリックスやアップルミュージックのサービス開始が黒船襲来であることは事実だが、必ずしもネガティブに受け止める必要はない。

むしろこれをきっかけに、「コンテンツは有料」の意識が根付くことのメリットは大きい。日本は民放放送の強い時代が続いたために、「安全と水とコンテンツは無料」と考えている人は多い。それが定額見放題・聴き放題のサービスの普及により意識改革がはかれれば、そこに膨大な市場が開けてくる。

他稿でも触れているが、定額型サービスが広まると、ユーザーがコンテンツ1本あたりに支払う金額は減るが、総額ではむしろ増える。また、コンテンツホルダーの価値はいままで以上に高まってくる。

ソニーがエンタ部門を成長分野と位置付けているのもそのためだ。

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