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2015年11月号より

「モノ」ではなく「コト」を伝えるPOP制作で“脱・下請け” 橋本英雄 アサヒ・ドリーム・クリエイト社長
橋本英雄 アサヒ・ドリーム・クリエイト社長

橋本英雄 アサヒ・ドリーム・クリエイト社長

はしもと・ひでお 1968年大阪府生まれ。92年関西大学法学部を卒業しリクルート入社。『ケイコとマナブ』事業部配属。96年父親が創業した朝日化工紙(現アサヒ・ドリーム・クリエイト)入社。2004年社長に就任。「エンジョイ・カンパニー」を経営理念とした。

リクルートから父の会社へ

―― 橋本さんは、大学卒業後、リクルートに就職。その4年後に退社し、父親が創業した会社に入社しています。最初から会社を継ぐ気だったんですか。
まったく考えていませんでした。リクルートの仕事もとてもやりがいがありました。でも入社して4年後に父から電話があって、体調を崩したこと、業績が悪化していることを告げられ、助けてほしいと言われました。

―― 悩みませんでしたか。
そんなには悩みませんでしたね。どうせ誰かのために働くのなら、親のためと思いましたから。ただ、入ってからは、なぜリクルートを辞めたんだろうと。当時は年商以上の借金があって、給料はリクルート時代の半分、休みもない毎日でしたから。父の会社は、印刷の表面加工をやっていて、印刷会社などの下請けが主たる業務でした。でもバブルが崩壊してから、業績は悪化の一方です。そこで会社の施設を使って新しいことができないかと考えて始めたのが、スチレンボードを加工しPOPなどを作成することでした。といって、そんな営業はやったことがない。そこで、ライバル会社の前で張り込み、そこに来たトラックのナンバーを控えて、ある外食産業に営業をかけました。

そうしたところ、納期に対する不満があったため、当社なら確実に納期を守るといって仕事を請け負うことができました。その後、これからは多品種少ロットの仕事が増えると考え、パネルに直接印刷できるジェットプリンタを導入。するとすぐにホームセンターのPOP作成の仕事を受注することができ、この事業は軌道に乗りました。

―― そこからは順風満帆ですか。
経費を抑え、POP関連の仕事を増やすことで、徐々に業績は上向いてきましたが、出血が止まった程度です。いまから考えれば、当時はまだ覚悟ができていなかった。入社から8年後、2004年に社長に就任したのですが、4億円以上の借金がありました。この保証人になった時、ようやく覚悟が決まりました。それまでは父親に対する遠慮があった。でもこれからは社員のために、言うべきことは言っていこうと決めたのです。

―― 具体的に何を変えたのですか。
志したのは理念経営です。会社の経営理念を「エンジョイ・カンパニー」と決め、社員が成長し、お客様が感動し、会社が利益を出す「ハッピートライアングル」を目指しました。ハッピートライアングルはリクルート時代に叩き込まれたものですし、エンジョイ・カンパニーは、大学時代、準硬式野球部のキャプテンを務めていた時のスローガン「ハッピー・ベースボール」がもとになっています。部を引退する時には、後輩から「ハッピー・ベースボールは楽しかった」と言ってもらえた。チーム一丸で楽しく戦うことの大切さをそこで知りました。

でも、会長だった父は理念経営には猛反対。ワンマン経営で、会議などやる意味もない、社員は俺の言うことを聞いていればいい、という考えでした。朝礼をする時間があったら機械を動かせ、という考え方でした。昔はそのほうが効率的だったのでしょうが、これからは社員一人ひとりが判断する必要があると考えたのです。でも父とは相いれない。そこで最後は、「これからは自分のやり方でやりたい。まかせることができないなら、会社に来ないでほしい」と言って、自分のやり方を押し通しました。

―― 180度の転進ですね。社員はついてきてくれましたか。
親子で言いあっているより、方針が明確になりましたから、社員は迷わなくてすむ。そのことは喜んでいました。とはいえ、最初は指示してもらったほうが楽だと思っていたでしょうね。でも、6年前に入った社員は僕のブログをずっと読んでいて、僕の理念に共感して入社してくれた。未経験者だったのですが、意欲が高く、すぐに戦力になってくれた。彼を見て、理念に共感して働くことの価値を改めて知り、理念経営をさらに推し進めようと思ったのです。

新卒社員の「働く場」

―― ところで、最近では「コトPOP」事業に力を入れているようですね。
店内に掲示するPOPによって、売り上げは大きく変わります。普通のPOPは、商品名と価格といったモノの情報を伝えますが、そうではなく、その商品を使うことでどんなによいことがあるか、という「コト情報」を伝えたほうが、消費者の購買につながります。POPひとつで、売り上げが倍増した、という例はいくらでもあります。こうした価値の伝え方「コトマーケティング」を提供して、売り上げアップにつなげてもらおうと、セミナーを開催しています。

―― POP制作だけでなく、コンサルタント業務も始めたわけですね。でも、人材をどうやって確保したのですか。
3年前から当社は新卒採用を始めました。そのほうが、理念に共感した人材を採用しやすいと考えたためです。せっかく入ってくれた社員が生き生きと働く場所を提供しよう。そこで下請け業務ではなく、自ら主体的に働くことのできる仕事をしようということで、コトPOPを始めました。新入社員に1年間、コトマーケティングを学んでもらい、展示会「販促EXPO」に出店し、“「コトPOP」つくります”とやったら、非常に反応がよかった。

しかもそれまでは代理店や印刷会社の人ばかりだったのに、店舗や流通の人が来るようになりました。それだけ売り上げに困っている人が多かった。そこで、セミナーを開き、POPの作り方を教えることにしたのです。それが当社のPOP制作の売り上げにもつながります。その結果、以前はほぼ100%、下請けの仕事だったものが、いまでは直接依頼されるユーザーの比率が30%にまで増えました。数年後には下請けと直ユーザーの比率を逆転できるのではないでしょうか。

―― 今後の目標を教えてください。
現在、売り上げは7億5000万円ですが、5年後に倍の15億円という目標を立てていますし、いずれ30億円にしたい。そして現在47歳の僕が引退する時には、50億円にまで伸ばせたらいいなと考えています。

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WizBiz代表・新谷哲の著書「社長の孤独力」(日本経済新聞出版社)

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