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2015年11月号より

浮き沈みの激しい映画事業を安定成長させるソニー2つの強み|月刊BOSSxWizBiz

映画分野の3本柱

7月30日にソニーは第1四半期決算を発表した。それによると、前期決算で大赤字に陥った最大の要因である携帯電話事業(モバイル・コミュニケーション分野)の赤字は解消できなかったものの、それ以外のエレクトロニクス分野(ゲーム&ネットワークサービス、イメージング・プロダクツ&ソリューション、ホームエンタテインメント&サウンド、デバイス)は揃って営業黒字を計上、エレキ全体では591億円の営業利益を生み出した。低迷が続いたエレキ事業が、ようやく上昇気流に乗り始めた。

ところが、1年前に585億円の利益を上げた映画分野は、117億円の赤字となった。それでも、「赤字の原因は映画のリリースのタイミングによるもの。第2四半期も赤字となるが、通期で640億円の営業利益の期初見通しは変更しない」(吉田憲一郎CFO)という。

実際、9月に日本でも公開された『ピクセル』は、米国では予想を覆す7000万ドルを超える興行収入を獲得、さらに伸びている。また10月には東京国際映画祭のオープニング作品に選ばれた『ザ・ウォーク』(日本公開は来年1月)、11月には007シリーズの最新作『007スペクター』(日本公開は12 月)などの作品が公開される。これらの作品が期待どおりの興収を上げることができれば、利益の期初見通しは達成できるに違いない。

見方を変えれば、作品がヒットするか否かによって、業績が大きく左右されるのが、映画ビジネスの最大の悩みである。映画部門をより安定的なビジネスに変えるには、まず映画製作そのもののリスク管理をきちんと行い、毎年同水準の売り上げが上がるようにすることも重要だが、同時に、映画製作以外のビジネスを拡大することだ。そしていま、そのチャンスが到来している。

ソニーの映画分野は、次の3つからなる。

(1)モーションピクチャーズ。劇場公開する映画の製作で、興収やその後のDVDやテレビ局への販売収入が売り上げとなる。

(2)テレビジョンプロダクションズ。テレビ局向け番組制作で、クライアントはABC、NBC、CBSの3大ネットワークに加え、CATV局やCS放送局となる。

(3)メディアネットワークス。放送事業のことで、ソニーの場合なら、「AXN」というチャンネルを全世界で展開している。日本発の「アニマックス」というアニメ専門チャンネルは、日本の有料放送の中でもっとも会員が多く、最近では海外展開にも力を入れている(別稿参照)。

この3つの中で、最近大きく伸びているのが(2)と(3)だ。テレビジョンプロダクションズはテレビ局向けの制作が増えていることに加え、ネットフリックスなど、SVODと呼ばれる定額で動画を見放題のサービスの普及も追い風になっている。

SVODにはネットフリックスやアマゾンなど、いくつかのプラットフォームがある。このプラットフォームが会員を獲得するための武器が、オリジナルコンテンツで、各プラットフォームはここに非常に力を入れている。そこにソニーの出番がある。

SVODの登場は、映画業界にとってマイナスな部分も多い。たとえば、普及が進めば進むほど、DVDなどのパッケージソフトは売れなくなるし、映画館に出かける人も減るかもしれない。それでも、コンテンツの需要が拡大することは、ソニーの映画分野全体にとっては追い風となる。

ソニーの強みは、独立系であることだ。ワーナーブラザーズやユニバーサル映画など、映画メジャーと呼ばれる会社は、たいていテレビ番組制作部門を持っている。ところがソニー以外のメジャー各社は、いずれもグループ内に放送局をかかえている。ワーナーはCNNなどを擁するタイム・ワーナーの一員だし、ユニバーサルはNBCの傘下である。以下同様に、20世紀フォックスはメディア王ルパート・マードック率いる21世紀フォックスに、ディズニー映画はABCと、パラマウントはCBSと、それぞれ密接な関係にある。

その点、ソニーはいくつかのチャンネルは持っているが、放送局を持っているわけではない。そのため、どのテレビ局とも等距離につきあうことができる。これは他のテレビ番組制作会社と比べて大きなアドバンテージとなっており、今後とも成長が期待できる。

放送事業は刈り入れ期

放送事業の伸びも大きい。前述のように、ソニーはテレビ局を持っていないが、その代わりに世界150カ国でAXNなどのチャンネルを放送している。しかも、収穫期をこれから迎えるという。

昨年のIRデーで、エンタ部門の責任者、ソニー・エンタテインメントCEOのマイケル・リントン氏は次のように語っている。「放送事業は、開始して利益を上げるまでに時間がかかる。現在は半分近くの4チャンネルが開始5年以下だが、17年度には大半が開始後6年以上のチャンネルとなる」

つまり、今後放送事業は収穫期に入り、より大きな利益を生むというのである。

放送事業の中でも、特に力を入れている地域がインドだ。すでに8つの全国チャンネルと1つの地方チャンネルを持っているが、さらに今期中に、2つの全国チャンネルをスタートさせるという。

「インドの人口は12億人を超え、いずれ中国を抜いて世界一になると言われています。一方、テレビ世帯普及率は60%にすぎません。ということは、普及率が10%上がれば、新たに2500万世帯を超える市場が誕生する。これはビッグ・オポチュニティです」(ソニー経営企画管理部エンタテインメント・金融グループゼネラルマネジャー・齊藤義範氏)

またアジアだけでなくヨーロッパにも手を広げ、昨年、イギリスで16チャンネルを展開する番組放送会社、CSCメディアを買収した。ソニーが全世界で提供するチャンネルは今後とも増えていく。

このように、映画以外の分野が急速に拡大している。数字の上でもそれは明らかで、04年度には3分野の中でモーションピクチャーズの比率が72%を占めていたが、いまでは50%にまで落ちている。残りの半分のうち30%がテレビジョンプロダクションズ、20%がメディアネットワークスという構成だ。

しかもソニーにとってうれしいことに、後ろの2つのほうが利益率が高いことだ。ソニーの映画分野は前期まで4期連続増収増益を続けているが、この間、売上高が33.6%増えたのに対し、営業利益は71.5%伸びている。利益率は5.2%だったものが、6.7%に改善した。今後テレビ向け番組制作や放送事業が好調に推移すれば、利益率はさらに伸びていく。

その一方で、コストの見直しにも取り組んでおり、15年度末までに、約3億ドルを削減する予定で、売上増と経費削減により18年度には、映画部門の売上高100億~110億ドル、営業利益率7~8%を目指していく計画だ。

日本の映画市場の特殊性

さて、ここまではグローバルな映画部門についてみてきたが、日本の状況はどうか。

日本のソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPEJ)には、米国のソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)が60%強、ソニーが33.3%出資している。主たる業務は、SPEの製作した映画の日本国内での配給及びパッケージソフトの販売だ。日本の映画市場は、米国、中国に次いで3番目に大きいが、米国でヒットしたものをそのまま持ってくればうまくいくというほど甘いものではない。

今年2015年公開された『ワイルド・スピード SKY MISSION』は、全世界で興行1位を記録したが、日本ではアニメ2作に阻まれ3位止まりだった。世界の中でも特殊な市場である。

それだけに、日本に向けたプロモーションが必要になる。たとえば現在公開中の『ピクセル』の主演、アダム・サンドラーは米国では知らない者はいない俳優だが、日本での知名度は低い。そこで宣伝にあたっては俳優の扱いをほとんどわからないくらい小さくし、代わって「パックマン」のキャラクターを前面に出している。このようなきめ細かな創意と努力があって、初めてヒット作は生まれる。

SPEJ単独の決算は公表していないが、最近の業績は安定しているという。さらに今後はアニマックスやAXNなどの放送事業をさらに伸ばしていく。

放送事業は視聴料だけではなく、広告収入も入ってくるため利益率が高い。映画事業に並ぶ2本柱に育ち、SPEJの収益はさらに高まることになれば、その次の段階として自主コンテンツ制作などの可能性も考えられる。

ソニー・ピクチャーズは、コロンビア・ピクチャーズの時代を含めると、アカデミー賞7部門を受賞した『アラビアのロレンス』や、5部門を受賞した『クレイマー・クレイマー』など、数多くの名画を送り出してきた。過去の最優秀作品賞受賞作は12作品にのぼる。

では、いちばん興行収入を上げた作品は何か。右にベスト10を記す。『スカイフォール』は全世界で11億ドル以上の興収を記録。10位の『メン・イン・ブラック3』でも6億ドル以上を稼いでいる。

このベスト10で驚かされるのは、『スパイダーマン』関連作品が5作も入っていることだ。また、『スカイフォール』も『メン・イン・ブラック3』にしてもシリーズ作品だ。単独作品は3つにすぎない。

このことからも、映画ビジネスにおいては、ヒットシリーズを持つことが、経営安定に直結することがよくわかる。SPEではまもなく007シリーズ最新作『スペクター』が公開されるほか、『バイオハザードVI』と『ゴーストバスターズ3』の製作が進んでいる(公開は、共に2017年を予定)。これらの中から、新たにベスト10に入ってくる作品が出てくる可能性は高い。

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