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2015年9月号より

“レガシィの伝説”に革命 ─ らしさを詰め込んだレヴォーグ|月刊BOSSxWizBiz

今年2015年4月21日、年次改良をしたレヴォーグが発売された。昨年6月に発売されて以来、わずか10カ月での改良だが、これは欧州市場への投入を見据えたものでもある。欧州では日本より高い平均速度での走行が求められるため、室内の静粛性を高める改良が施されている。加えて、燃費や走りのしなやかさの向上、サンルーフの追加等々、多岐にわたって改善が施された。

レヴォーグと開発責任者の熊谷泰典氏。バックは群馬製作所本工場にある旧中島飛行機本社。

注目すべきは、先進技術のアドバンスドセイフティパッケージが導入された点だ。メーカーオプションではあるが、前方向だけでなく、後側方の車両を検知したり、左右から接近するクルマを検知したりと、クルマの死角を消す技術が投入されている。安全・安心をさらに突き詰めた形だ。

もともとレヴォーグは「国内専用車」の位置づけで開発されたクルマ。それだけに“スバルらしさ”と呼ばれるものをすべてこのクルマに凝縮させようとしてきた。安全と楽しさを追求した結果生まれてきたクルマだと言える。

そのレヴォーグ、2014年に発売された新型車だが、その系譜はスバルの看板車種である「レガシィ」にある。レヴォーグの開発者で、スバル商品企画本部プロジェクトゼネラルマネージャーの熊谷泰典氏は、レヴォーグ開発の経緯を次のように語る。

「レヴォーグの発祥は、レガシィにベースがありました。1989年に初代が発売されたレガシィは、もともと国内のお客様に向けたクルマという要素が強かった。しかし、スバルの主力車種であるために、グローバルで展開して、成功していかなければならなかった。こうなると、北米市場の比重が高くなる。私は09年に発売した5世代目レガシィの開発も行いましたが、国内に気を配りつつも、軸足はグローバルに置こうと決めたのです。そこでサイズを一回り大きくして、北米ではおかげ様で成功したのですが、4代目のレガシィが好きだったお客様からは、良さが失われたのではないか、という話が出てきた。成長していくうえで、レガシィとして壁に突き当たったのです。4世代目のレガシィは日本市場にちょうどよいサイズで、恰好もよく、スポーティで最高のレガシィと呼ばれるほど評価の高いクルマでした。

14年に6世代目のレガシィを発売しました。6世代目はグローバルでの成長を考えると、さらに一回り大きくしてスタイリングに磨きをかけ、走りも質感を重視して熟成させる必要があった。そうすると国内市場では合わないサイズ感になってしまいます。日本のレガシィ像とグローバル市場を目指すレガシィを両立させようと思うと、中途半端なクルマにしかならない。レガシィは思い切ってグローバルカーに成長させ、国内のお客様にはレガシィの後継として、新しい位置づけのワゴンを入れることにしたのです。それが11年のことでした」

新しい国内専用車の開発は12年にスタート。北米市場を顧みないクルマは開発の自由度を高めることに繋がった。

「5世代目レガシィの開発をふり返ると、大きくなったことで凝縮感やステアリングを持った時の人馬一体感等、ドライブの楽しみが薄れたとの声をいただいた。望まれる姿や現行車に対する不満をたくさん聞いて“これが欲しかった”というクルマをつくろうと。海外の要望は一切、聞く必要はない。迷いなく国内向けのキャラクターと性能をつくることができたと思います」

レヴォーグの車名の由来は「レガシィ・レボリューション・ツーリング」。レガシィを革新して次世代ツーリングカーをつくるという、開発陣のコンセプトをそのまま車名にしたものだ。


(左)レヴォーグのステアリングと水平対向エンジン。(右)群馬製作所本工場では、レヴォーグのほか、BRZ、インプレッサ、XVが同ラインで組み立てられている


技術者のブレない姿勢

1989年のレガシィの登場は、ツーリングワゴンという新しいカテゴリーを切り拓いた。他メーカーも参入して一大ブームを巻き起こしている。しかし国内市場は、ブームが去ると、比較するワゴンがなくなるほど市場はシュリンクした。そんななか、継続して発売し続けたのがレガシィであり、輸入車勢だった。

「レガシィの独自性と言えば、実用性、走り、運転する楽しさを兼ね備えたワゴンという存在そのものでした。スバルのコア技術で言えば、独自のAWD(4輪駆動)システム『シンメトリカルAWD』で、優れた走行安定性、路面を問わない走破性と水平対向エンジンを核とした左右対称のパワートレーンがもたらす重量バランスの良さとの相乗効果により、運動性能の高いAWDの走りを追求してきました。衝突安全も常に業界でトップクラスを維持していますが、それも努力の結果です。最近であればアイサイトにプリクラッシュ、衝突してからの安全ではなく、ぶつけないようにするためにどうするかという予防安全の分野も究め続けています。レヴォーグは1.6リットル、2.0リットルともにターボですが、ターボエンジンも初代レガシィから搭載してきたものです。パワーから環境に向けたクルマづくりへと変わって競合車もずいぶん減ってきましたが、環境規制に対応しながらもターボの気持ち良い走りを提供しようと、インプレッサやWRXでもターボの独自性を貫いてきました。

レヴォーグは、スバルがブレないで磨いてきた、AWDの走り、安全性、ターボの楽しさ、ワゴンの実用性、それらをすべて受け継いで、新たに日本専用のサイズのなかに凝縮したクルマです。ですからレヴォーグの独自性は、スバルの独自性とも言えるわけです」

またレヴォーグは、同時期(14年8月)に発売された高性能スポーツモデル「WRX STI」とも共通性が高いクルマだ。

「開発時期がほぼ同時期だったこともあり、うまく共通化できるところは共通化しながら、セットで作り込むという開発をしました。WRXは走りのポテンシャルが高いクルマですから、車体や足回りを補強し、いわゆる剛性をアップして、スポーティな走りに十分な性能を持っています。そこをワゴンに移植し、長距離を走っても大丈夫なようにしなやかさをレヴォーグとして加えました。このようなツーリングワゴンは他の国産車では見当たらない。欧州車にはアウディやBMW、ボルボがワゴンを備えていますが、価格的には高い。レヴォーグは日本向けに作っていますので、気配りをインテリアのつくりにも入れて、バリュー・フォー・マネーで勝負できるクルマにしたいと考えたのです」

レヴォーグとレガシィの決定的な違いはその大きさにある。表にある通り6世代目との違いは明らかだが、サイズ感を4世代目に戻すところから設計が始まっている。これは国内ユーザーの声に耳を傾けた結果だ。

「車幅はあまり狭くするとヨコの造形のふくよかさがなくなってしまいますから、1780ミリとそれなりに取っていますが、全長は4700ミリを切って、いわゆる5ナンバー枠に入れ、お客様が持っている車庫から鼻先が飛び出ないように、高さも立体駐車場に入ります。そして今回は1.6リットルのほうはレギュラーガソリンにしています。欧州車もダウンサイジングターボは運用されていますが、すべてハイオクガソリンです。全車ターボで敷居が高くなったわけではなく、ダウンサイジングでも従来の2.0リットルや2.5リットルのNAエンジンと同等、あるいはもっと気持ちのいい伸びを持った走りができて、しかもガソリンはレギュラーということが重要だと考えていました。

レガシィ系は、その寸法のなかでいかに堂々と立派に大きく見せるかというところが肝でしたが、レヴォーグの場合は、同じ寸法枠にあったとしても、なるべく凝縮されて引き締まって、むしろ小さく見えるくらいの佇まいを持たせるのが狙いになっています」

レヴォーグは新しいクルマではあるものの、25年前から積み上げてきたレガシィのノウハウを凝縮し、スバルのブレない姿勢が込められたクルマに仕上がっている。それが共感を生み、スバル車を愛する“スバリスト”が増えつつある。

「ずっと水平対向エンジンでクルマをつくり、AWDと組み合わせて、それだけで走りの素性は出来上がっています。不幸にも衝突してしまった時に、乗員をいかに保護するか、その技術も『スバル360』の頃から衝突試験を自主的に取り組んできました。スバルの発祥である中島飛行機時代からエンジニアが新しいもの生み出し、それを頑なに突きつめていく。安全に対する考え方は、まさに飛行機と同じです。

クルマの本質的な楽しみは、気持ちよく自分で移動できること。さらに一緒に乗っている家族もその時間を楽しめる。そういうツーリング性能を持ち、いざという時に安全なクルマをつくる。誠実に突きつめてきた技術がちょうどいま、時代にマッチして花開いたということではないでしょうか」

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