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2015年9月号より

住宅ローンに苦しむ人を助ける「任意売却119番」富永順三 任意売却支援機構社長
近藤 繁 ココペリインキュベート社長

富永順三 任意売却支援機構社長

とみなが・じゅんぞう 1966年大阪・堺市生まれ。大阪市立大学大学院を修了し中堅ゼネコンに入社。阪神大震災でボランティアを続けるうちに起業家支援を行うようになり、のちにコンサルタントとして独立。その後、任意売却を手がけ、5年前、任意売却支援機構を設立した。

競売で家を追われた高校時代

―― 富永さんが社長を務める任意売却支援機構は、「任意売却119番」というサービスを行っていますが、具体的にどんなことをしているのですか。
マイホームを手に入れたものの、所得が下がったり病気になったりして、住宅ローンが払えない人たちがたくさんいます。その場合、最後は競売ということになりますが、それでは高く売れないことが多いため、債務も残ってしまう。その点、任意売却なら、競売より高く売ることができる。そのお手伝いをしましょうということです。

―― なぜ、このサービスを始めたのでしょう。
私は大阪市立大学大学院で都市工学を学んだあと、ゼネコンに入社しました。1995年の阪神大震災の後は復興ボランティアとして現地を飛び回りました。そこで自分たちに何ができるかを考えたところ、ライフラインの復旧はできないけれど、ビジネスの復旧ならできるのでは、と考え、その一環としてSOHOの共同オフィスを運営することになりました。

これをきっかけに、行政と組む形で起業家支援を行うようになり、コンサルタントとしても独立しました。ただ、起業家支援を続けていくうちに、日本には足りないものがあることに気づいたのです。

私のやっていたコンサルは産婦人科医のようなものです。会社が生まれる手伝いをする。成長する過程で相談に乗ってくれるベンチャーファンドなどの金融機関は内科医のようなものです。ところが、企業が大きくなる時には面倒を見てくれる相手がいるのですが、業績が悪くなると、途端にいなくなる。本来であれば、悪いところを切ってくれる外科医のような存在があればいいのですが、銀行などは業績が悪化するとすぐに手を引いてしまう。弁護士に相談すれば、清算や自己破産を勧められる。これは安楽死の支援のようなものです。

―― 任意売却は外科手術というわけですね。
10年ほど前のことですが、国の留学生受け入れの方針が変わったことで経営危機に陥った語学学校の相談に乗りました。民事再生法を申請しようにもスポンサーが見つからない。とはいえ、倒産させたくはない。その時、ある再生コンサルタントから、任意売却を活用することで会社の一部を残せる可能性があることを聞きました。そこで自宅や社屋を任意売却したところ、業務を存続することができたのです。

それまでそういう手法があることを私自身知らなかったし、周りの人も誰も知らなかった。そこでまず、任意売却について知ってもらおうと自分のブログで書くようにしたら、相談が相次いだのです。そこで、任意売却を業務の中心とするために、任意売却119番を始めました。

―― 競売と任意売却では、そんなにも違うものですか。
競売の場合、どうしても価格が安くなります。しかも競売物件は公告されるため、近所に知られる可能性もある。そして落札後は強制的に追い出されてしまう。その点、任意売却は一般売却に近い値段で売却できるし世間体も悪くない。引っ越し時期も相談できるし、引っ越し費用も負担してもらえるかもしれません。残った債務に対しても柔軟に対応してもらえます。リースバックという方法を使えば、売却後に家賃を払う形で、同じ家に住み続けることもできます。

実は私自身、高校時代、親が保証人になったために家が競売にかけられたことがあります。春休み、家に1人でいたら、突然、「不動産引渡命令」を持った男たちが入ってきて、強制執行されたのです。その日をかぎりに、私たち家族は家を追い出されました。あの時、任意売却を知っていたら、もっと違う道があっただろうし、両親も救われたのではないか。その思いが、いまの任意売却119番を始める原動力になりました。

目標は相談センターの全国展開

―― 相談する人の数は増えてきていますか。
これまでに5000人の相談に乗っていますし、相談の数も毎年1~2割増えています。相談が増えるきっかけになったのがリーマンショックです。リーマンショックはアメリカの住宅ローン問題に端を発したことから、フジテレビの「サキヨミ」という番組で、日本の住宅ローン事情を紹介する特集を組み、任意売却119番がとりあげられ、翌日から電話が鳴りやみませんでした。

いま住宅ローンを組んでいる人は日本に1100万人。そのうち、3カ月以上支払いを滞納している人が2~3%、すなわち20万~30万人いると言われています。また、住宅金融支援機構のホームページによると、3カ月以上の延滞債権の比率は4%にのぼります。それだけローン返済に苦しんでいる人がいるのです。アベノミクスで景気がよくなったと言われていますが、実際には二極分化が進んだだけで、苦しい人は苦しいままです。

―― 少し前までは、任意売却について誰も知らなかったかもしれませんが、いまではインターネットで「任意売却」と検索すると、同業者がいくらでもヒットします。けっこう競争が厳しいですね。
気をつけてほしいのは、任意売却は不動産売却だけの仕事ではないということです。担保を設定している金融機関との交渉も必要ですから専門知識を持っていなくてはいけません。中には、甘い言葉で誘って、買い叩くようなところもあるようです。われわれには経験があるだけでなく、弁護士や司法書士とも連携しながら、困っている方のサポートをしていきます。

報酬も、任意売却を希望する方からはいただきません。売却成立後、金融機関などの債権者からいただくシステムです。

―― 今後の目標を教えてください。
いま任意売却119番では、札幌、東京、横浜、名古屋、大阪、福岡に相談センターを設置していますが、日本全国すべてをカバーするには至っていません。ですから、当面の目標としては、3年後くらいをメドに、全都道府県に、相談できる場所をつくりたいと考えています。これを自力でやるのはむずかしいので、FC化も視野に入れながら、全国展開を目指します。

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WizBiz代表・新谷哲の著書「社長の孤独力」(日本経済新聞出版社)

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