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経営者インタビュー

2014年7月号より

多様な事業は将来も進化 キーワードの1つは「再生」
井上 亮 オリックス社長兼Co-CEO(次期グループCEO)

井上 亮
オリックス社長兼Co-CEO(次期グループCEO)

いのうえ・まこと 1952年10月2日生まれ。東京都出身。75年中央大学法学部卒。同年オリックス入社。2003年投資銀行本部副本部長、05年執行役でプロジェクト開発本部長、06年常務執行役兼業務改革室管掌、08年海外事業統括本部長、09年グローバル事業本部長、10年取締役執行役副社長で投資銀行本部統括。11年1月社長兼グループCOOとなり、14年1月グループCo-CEOに就任。この6月24日、グループCEOに就く予定。

来る6月24日の株主総会後の取締役会を経て、オリックス社長兼Co-CEOからグループCEOに就く井上亮氏。多様な事業を展開してきたオリックスを、さらにどう進化させていくのか。その戦略などを聞いた。

水族館やゴルフ場運営も

―― 井上さんは今年1月からCo-CEOとなり、半年の助走期間を経て6月24日からグループCEOに就くことになりました。
井上 COOの頃は、(現CEOの宮内義彦会長とは)頻度高く話し合わなくても、執行責任者でしたからやれていました。でも、Co-CEOになるとほとんど毎日、意見のすり合わせというか、宮内の方針を確認しながら進めないとまずいなということで、ずいぶん距離感が近くなっていましたね。一度、投融資委員会の会議に宮内が出られないことがあって、次の日に「井上君、なんでこの投資案件を了承したんだ」と言われ、「いや、これこれこういう条件をつけましたから」「うん、だったらいい」といったやりとりがあって、宮内とは必ず確認していました。

―― 前期(2014年3月期)決算の好調さ(純利益で1867億円)を継続し、今期は過去最高益(純利益で2100億円)を見込んでいます。前期の総括と、好業績の中に見えてきた課題はありますか。
井上 リース業から始めて、ここまで多角化というか多岐にわたった事業を(宮内氏という)1人の力でよく広げたなという感慨が1つ。あとは、昔なら国内が好景気の時は海外がダメだったり、船舶ビジネスがダメな時に不動産が良かったりと補完し合う事業構造でしたが、いまは6つのセグメント(法人金融サービス、メンテナンスリース、不動産、事業投資、リテール、海外)すべてで収益を出していますからね。ただ、5年経ったらオリックスはまた、全然違う業態に進化している可能性もあります。

―― 宮内さんも以前、「5年後に当社の会社案内を全面改訂しているくらいでちょうどいい」と言われてました。
井上 そういう進化の過程でキーになるのはやはり人材です。たとえばリースビジネスをやっていた人間がエクイティファイナンスをやり、エクイティをやっていた人間が今度は不動産の証券化をやり、証券化をやっていた人間が水族館の経営をやりという具合に、それぞれの分野で専門性を持たないといけない。そのためにはまだ人材が足りないし、育成の強化も大事だと思っています。

―― これだけ事業が幅広い中で、生え抜きと中途採用、あるいはヘッドハントする社員の比率はどのくらいなのでしょう。
井上 半々ぐらいでしょうか。ただし、同じ中途入社でも20代で入った人、30代や40代で入った人とでは違いますからね。40代で入ってきた人たちは、ごく狭い領域のスキルを求めて採用しますから、それはそれでいいんですけど、問題はその人がほかの部門に移った時、たぶん苦労することですね。一方で、新入社員はとにかくOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)でガンガン仕事をさせますから、違う苦労はあると思いますけど、いろいろなスキルが身についていく面白さは感じてくれるでしょう。

―― いま、オリックスが注力しているメガソーラーを含む再生エネルギー分野は、必然的に中途採用が多くなると思います。実際に、東京電力を辞めた人も入社しているようですが。
井上 この事業では、技術系とか専門性を求めるところではヘッドハントもしていますからね。電気系の知見のある人や地熱発電に詳しい人などが、意外と来てくれるんですよ。なんでオリックスがそんなことやるの? でも面白いから行ってみようという方が結構、いらっしゃるんです。

オリックスは今年、節目の50年を迎えた。

我々としては、太陽光発電のメガソーラービジネスも、いわば金融サービスの広がりの中にある事業と考えています。金融は、お金を融資するだけでなく、借りるのも金融だし、ポートフォリオを築いて証券化を展開するのも金融です。水族館の経営だってPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ。公共施設の建設、維持・管理、運営を民間事業者が担って無理・無駄・ムラなく経営)から始まってますからね。ゴルフ場経営も、最初のきっかけはお取引先が破綻してしまい、当社で肩代わりしたのが出発点。経営していくうちに、ほかにも安く手に入るゴルフ場があるから買い増していった結果、いまでは41カ所のゴルフ場運営に携わっています。

―― メガソーラーのビジネスだけでなく、オリックスの事業は「再生」というのが1つのキーワードになっている気がします。
井上 その通り。当社は独立系ですからしがらみが意外と少ないですし、事業再生のお手伝いをし、最終的には再生して元の事業主に戻すのが基本です。ただ、再生後に「もう要らない」ということであれば、付加価値をつけた上で第三者に売却するといった出口戦略を取ることもありますね。

ロベコ・ジャパンを新設?

―― 一方で、主力の金融サービスではロベコ(オランダの資産運用会社)買収で2500億円、さらに米国のハートフォード生命保険買収で900億円と、かなり攻勢をかけている印象です。
井上 当社はケチですから高い買い物はしない(笑)。それが基本方針です。財閥系でもないしメガバンクがバックにある会社でもありませんから、いったん(M&Aの)エントリープライスを間違えて高値掴みしたら、その後の苦労が大変なものになってしまいます。また苦労するにしても、エントリープライスが低ければ経営のやり方次第で生き残ることができますから。

―― ハートフォードのほうはいずれ、グループのオリックス生命保険と一緒にしてということになると思いますが、ロベコのほうはたとえば、国内の金融サービス事業とのシナジーは考えていますか。
井上 ロベコ・ジャパンみたいな会社を作れば、日本でのアセットマネジメントビジネスも可能です。もちろん、アセットマネジメント分野には、すでに野村證券さんをはじめとした大手がいますからどこまで食い込めるかわかりませんが、日本でもやる価値はあると思っています。

―― オリックス銀行の旧社名はオリックス信託銀行でしたが、ロベコ・ジャパンは信託銀行のイメージに近くなるのでしょうか。
井上 いや、ちょっと違いますね。やっぱり資産運用会社としての位置づけで、まず日本円でのビジネスを考えています。もともと、お取引のある日本の投資家はロベコのファンドにはかなりお金を入れていただいてますし。その資金は運用上、これまでは必ず円を海外通貨に換えていましたけど、円でもお取引ができますよということになれば、サービスの幅が広がりますから。

―― 保有していた大京の優先株を普通株に転換して、議決権で64%を持つ連結子会社にしました。シナジー向上は見込めそうですか。
井上 マンション管理の受託ビジネスは基本、アセットマネジメントと一緒ですし、大京には電気技師関連の人材もたくさんいますから。これまではいわば、大京の自前のマンションだけの技術者じゃないですか。それを、さらにオリックスグループ全体に広げれば効果が出てきますよね。たとえば、電気技師の方にメガソーラービジネスのほうを見てもらうこともできるのです。

―― 不動産も、最近はマンション開発より管理などのストック重視になってきています。
井上 ケースバイケースで、メリハリをつけてやればいいと思っています。さきほど言いましたように、(マンション用地の仕入れで)エントリープライスが高いと身動きが取れなくなるのは一緒ですから。逆に言えば、安い時に土地を仕入れればどうにでもできる。そういうメリハリさえつければ、どんな事業でも収益性は確保できると思います。

―― 逆に、資産の入れ替えというか、売却していくケースも出てくると。
井上 たとえば今回、ハートフォードの買収で資産が膨らみますけど、一方的に資産を膨らませていく気は全然ないんです。資産の中身を入れ替えながら優良資産に変えていく。長く保有していれば、やっぱり売り時というのがあるじゃないですか。それを失するとプライスが下がってしまうので、いい時に売ることが大事。で、また景気が悪くなったら出物が出てくるかもしれませんし。

―― マネックス証券もオリックスが大株主でしたが、手堅い地銀の静岡銀行に売却しましたね。
井上 証券、特にネット証券は競合が激しくて収益性はきついし、マーケットに依存せざるを得ません。マーケットに依存する投資は、できるだけ限定的にしたいですから。

ベンチャー投資に課題

―― 海外の重点エリアや重点分野はどうでしょう。
井上 国ごとに景気は違うので、たとえば中国はダメでも中東がいいとか、常に目を広げて、安く買えて将来性のある事業や企業かどうか、さらに純投資なのか戦略投資なのかを見極めていく。で、後者の場合はどういう形でならオリックスとのシナジーを発揮できるのか、前者の場合はパートナーの能力、業界のポテンシャルを見て投資して、たとえば5年と決めたうえで5年後の出口戦略を考えながら投資していくと。

―― 外国人持ち株比率がいま6割強と高いですが、国内でもこれだけ多様に事業展開しているオリックスを、海外の投資家たちはどんな業種と捉えているのでしょうか。
井上 海外IRに行くと大変ですよ、1時間説明してもなかなか理解してもらえないケースもありますから(笑)。やっぱり6つの事業セグメントを1時間で説明するのは無理がありますよね。最近は、それぞれのセグメントで注目してほしいところをメインに説明していますが、ホールセール(法人向け事業)とリテール(消費者向け事業)という2カテゴリーの分類だけにして、あとは何も説明しないほうが逆にいいかもしれません(笑)。

―― 当面は、6つのジャンルの深掘りだと思いますが、これから可能性のある領域や地域はどう考えていますか。
井上 エリア的に言うと、これから見ないといけないのはアフリカですね。それからラテンアメリカがまだできていない。当社は商社と競合する気はありませんから、(商社のように)資源関連事業は手がけませんが、食料や農業関連も含めて、アフリカやラテンアメリカでも、かなり広範囲な分野でビジネスができるのではと考えています。

もう1つ、ベンチャー投資もやりたいんですが、我々にはまだこの分野での目利きがないんですね。昔、アリババやフェイスブックといった企業が誕生した頃、当社にも投資の引き合いはあったんです。でも、土地勘がないから結局、やりませんでした。もちろん、ベンチャーキャピタルの投資はこれまでもずっとやってますけど、もっと能動的に、新興企業の技術や将来性を分析して、ここだったら10年後にここまで成長する可能性があるから投資してみようという、そんな案件をものにしてみたいですね。分析力と将来性の目利き、オーナー経営者と親しくなって信頼に足るリレーションシップを作るとか、これから当社でも頑張りたいと思います。

―― オリックスはある意味、資源分野を除いた商社の業態に似ている感じですね。商社という業態は海外にはないので、海外投資家から見るとわかりにくいですから。
井上 確かに、資源を除いた部分ではほとんど商社とオーバーラップしてますね。食料や農業分野は当社ではまだそんなにやっていませんが、それ以外はかなりダブっているんじゃないでしょうか。

―― 最後に、足元の決算を踏まえた今後の展望を。
井上 ロベコ、ハートフォードの買収に大京の子会社化、メガソーラーにプラス風力や地熱発電もやっていますし、それらをうまく安定収益に結びつけていく間に、必ず新しいビジネスの話が出てきますから、それを模索していこうかなと。あとはUSA(米国)ですね。

―― オリックスの米国法人社長に今年、元あおぞら銀行社長のプリンス氏を起用しました。
井上 これまでオリックスUSAのメインの収入は、フィクスインカム=手数料収入だったんですが、いまはフィクスインカムで収益を維持するのはかなりハードルが高くなっていますので、そうなると、プライベートエクイティを含めたファンドやアセットマネジメント事業が主力になってきます。彼(=プリンス氏)はもともとそういうキャリアとネットワークを持っていますので、ちょうどいいのかなと。プラス、ロベコを買収したことで欧米の収益バランスも取れるようになるでしょう。

(聞き手・本誌編集委員・河野圭祐)

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