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2014年3月号より

「視聴率200%男」が語るアイデアを生み出す技術
放送作家 安達元一

放送作家 安達元一

あだち・もといち 1965年群馬県生まれ。早稲田大学社会科学部卒。在学中から放送作家としての活動を始め、「視聴率200%男」との異名を持つ。放送作家として担当した番組が第42回ギャラクシー大賞、2007国際平和映画祭特別賞などを受賞している。また『LOVE GAME』『痛妻』『ハイエナたちの25時』などの小説がある。

放送作家と小説家

―― 安達さんは放送作家として、視聴率200%男との異名を取っています(『ダウンタウンのガキの使いじゃあらへんで!!』や『SMAP×SMAP』、『伊東家の食卓』など、テレビ全盛期に担当した番組の1週間の合計視聴率が200%を突破した)。
安達 高校時代から深夜放送への投稿を繰り返していました。自分のハガキが番組で読まれると、次の日は学校でヒーローです。それがきっかけで、放送作家への道に入っていきました。当時はバブル経済が上り詰めていくところで、番組制作にかける費用も余裕があった。ですからひとつの番組に多くの放送作家が携わっていました。私もすぐにいくつかの番組に関わるようになり、今日にいたっています。

―― 以来30年近くにわたり放送作家として第一線に立ち続けてきたわけですね。
安達 自分に特別な才能があったとは思っていません。それでもここまで続けることができたのは、真面目に仕事をしてきたから、としか言いようがない。締め切りはきちんと守る。相手が期待した以上のものをつくり続ける。「ま、いいんじゃないか」ということだけはやらないよう、日々、考える。これを自然にやってきただけのことです。

―― ただそうは言っても、視聴率を稼ぐアイデアを出し続けることは容易ではありません。アイデアを生むルーチンのようなものはあるんですか。
安達 机の前で考えているだけでもだめで、リラックスすることで発酵させることも必要です。僕の場合だと、朝、風呂に入っている時に思いつくことが多いですね。そういう時は、神様が与えてくれたようにも思いますが、何もしないで与えてくれるわけではありません。日々考え、努力することで、ようやく神様が与えてくれるのです。

―― 年明け早々、『ハイエナたちの25時』(中央公論新社)という小説を出しましたが、小説家としての活動も増えてきました。
安達 ほとんどの放送作家は、小説を書きたいと思っているはずです。僕も例外ではありませんでした。小説家というのは物書きの世界の頂点です。一方、放送作家は底辺です(笑)。放送作家はみな、小説家にあこがれています。

しかも、テレビ番組の場合、放送作家の僕の役割というのは、ほんの数%です。プロデューサーがいるし、タレントがいる。仕事として楽しくて面白い、大好きな世界ですが、所詮は巨艦の乗組員にすぎません。ところが小説の場合、その責任のほとんどすべてが自分にかかってくる。売れるのも売れないのも自分次第。いわば小船の船長です。どっちがいいというのではなく、それぞれが面白い。

―― ところで安達さんは昨年、『アイデアを脳に思いつかせる技術』(講談社+α新書)という本を出し、さらには「安達元一のアイデア工学Works」というサイトを開設、いかにしてアイデアを生むかを、多くの人に向けて発信していますね。
安達 もともとはアイデア発想法などというのは、一種の職人技のようなもので、人に教えることなどできないと思っていました。でも、いままでアイデアを生むためにやってきたことを体系としてまとめてみようと考え、大学院に入って学術的に研究したところ、科学的な技法によってアイデアを生み出すことができることがわかりました。

僕はいままで、先輩の放送作家など、多くの人たちからいろんなことを学んできました。ですから、その恩返しの意味でも、自分の学んできたことを後進の人たちに教えようと思っています。

これまでにも、放送作家を目指す人たちを集めてスクールのようなものを開いてきました。それを今度は放送業界の人だけでなく、もっと多くの人に知ってもらいたいと思って本を書き、サイトをオープンしたわけです。

機械的にアイデアを生む

―― 本を読むと、「しりとり法」「シックスハット法」など、アイデアを生むためのさまざまな方法が紹介されています。
安達 こうした技法は、僕がこれまで、特に意識しないでやってきた方法です。何がアイデアを阻害しているかというと、凝り固まった常識です。従来の延長線上で物事を考えても、新しいものはなかなか生まれない。裏を返せば、それを取っ払うだけで自然に脳は動き出す。そこで、たとえばしりとり法なら、テーマとなるキーワードからスタートして、しりとりで思いつく言葉をつなげていくだけです。これによって先入観を持たずに、思考を広げることが可能となります。

―― 中でも紙幅を割いているのが、「セレンディピティFA法」というアイデア発想法です。
安達 これは、僕と、大学院の指導教員であり共同研究者でもあった東洋大学総合情報学部の藤本貴之准教授と開発した発想法で、簡単に無理なく、機械的に発想力を引き出す手法です。セミナーなどでは参加者にこの技法を実践してもらっていますが、みなさん、ユニークなアイデアを出していますよ。

ニュートンはリンゴが落ちるのを見て万有引力を発見したと言いますが、そのチャンスは誰にでもあったはずです。でもニュートン以外は気づかなかった。セレンディピティFA法はそれと同じで、日常生活をちょっと意識するといったような、ちょっとした積み重ねによって発想力を引き出そうというものです。

―― 機械的にアイデアが生まれてくるなら、凡人には嬉しいですね。
安達 このようなトレーニングを積むことで、柔軟な発想法を身につけることができます。
ただ、そうした技法をさらに磨く方法があります。技法というのはいわばアプリです。つまりOSの上に乗っているわけです。アプリを最大限活用するためにも、OS自身が進化する必要がある。つまり、脳そのものの機能を進化させるのです。そのためには常に刺激を与え続けなければなりません。

―― 安達さん自身はどうやって脳を進化させてきたんですか。
安達 毎日、いろんなところに行きますよ。居酒屋で女を口説いている男のそばに座って、その会話を盗み聞く。海外に行ったら、最底辺の地区にも足を運ぶ。身の危険を感じて逃げて帰ったこともあるけれど、こうやって常に刺激を与えています。

僕の「超アイデア会議」というセミナーの最後は、街に繰り出し、経験をしたことのないようなディープな場所を紹介します。こういう経験をすることで、脳のリミッターを外すことができるのです。

―― 今後はどんな活動を考えていますか。
安達 最近、スクールを3つ立ち上げました。1つは、「コンテンツブレークスルーカレッジ」。いかにしてコンテンツを企画・作成し、それをどうやって世に送り出していくのか、というスクールです。もう1つが「日本ビジネスプロモーション協会」で、これは埋もれているコンテンツを発掘し、ムーブメントを起こしていくための協会です。

新しくつくるか、既存のコンテンツかの違いはありますが、いかにヒットとブームを生むかという意味では同じです。

そして、これから始めるのが、WiZ×Bizさんと一緒にやる経営者向けセミナーです。私と放送プロデューサー、雑誌編集長、テレビショッピングのプロデューサーが講師になって、ヒット商品やサービスの生み出し方を講義します。

僕の思いとしては、いままでのように自分でものをつくっていく仕事を半分、次の人たちに伝えていく仕事を半分という配分でやっていけたらいいと考えています。

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