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2018年5月号より

真の働き方|月刊BOSSxWizBiz
真の働き方改革実現には問題の本質を捉え、社会の在り方を考える 近藤太香巳 ネクシィーズグループ社長

「社会の問題点を解決する」という創業以来変わらぬ企業理念のもと、“ダイバーシティを推進し、誰もが自由に好きな仕事を選択でき、それぞれのライフスタイルに合わせた働き方のできる社会”の実現を目指して事業活動を展開してきたパソナグループ。まさに「働き方改革」の最前線で働く人のサポートをしてきたパソナグループ代表の南部靖之氏に、「働き方改革」の現状と課題について聞いた。

創業時の御旗の現実化

私は創業時から、定年というものをなくして、働きたい人は、男女関係なくずっと現役でいられる環境をつくりたいと御旗のひとつに掲げてきました。そして、もうひとつが、子育てを終えて再就職を希望する女性たちを応援することです。女性が自分の才能や経験を好きな時に好きな時間帯で、しかも給料格差や待遇格差がなく、安心して働ける環境をつくりたいと想っていました。これらの法案成立はとても嬉しいことです。

それといま話題になっている「同一労働同一賃金」。1日4時間だけ働いても、毎日働いても、雇用形態に違いがあっても、役割と仕事が同じなら同じ賃金を払う。これも私の御旗のひとつとして、ずっと考えてきたことです。

ですから今は、私が起業した当時、自分がやろうとしていたことが、まさに現実化してきたと感じています。

企業内保育所もそのひとつです。27年前に日本で初めて企業内保育所をつくりました。そのときは、みんなからおかしいとも言われましたが、今では、待機児童の問題が表面化して、企業内に保育所をつくることはまったく珍しいことではありません。また、自治体でも横浜市のように待機児童ゼロに取り組む自治体があるということも嬉しいことです。

そのほかにも、正社員でなくても加入できて、転職をしても持ち運びができる確定拠出年金日本版401kもできるようになりました。これも素晴らしいことだと思います。

そう考えると、いまの環境は、43年前に比べると良くなってきていると思います。ただ、問題もあります。

規制への見極めが必要

それは、規制緩和をすべきものと、逆に規制を強化すべきものがあるということです。

例えば、女性の子育て。子育てといっても子どもの年齢によって手の掛かり方は違います。ですから、子どもの成長に合わせて、法律や条例をつくって、仕事に戻れる体制と、安心して子育てができる仕組み、そして生活をサポートする福利厚生のようなものを企業に求めていく。企業ができなければ、それを国がつくっていくべきだと思います。働きたくても、子育てなどそれぞれの家庭の事情で働けない人を支援するための規制の強化が必要なのです。

私はそのためにも雇用創出大臣、または雇用創生大臣でもいいが、働く人の雇用環境を専門にみる大臣や組織があっても良いと思っています。

今は厚生労働省なので、厚生と労働を一緒にみています。厚生に明るい人は労働や雇用のことは専門ではありません。ですから、雇用や労働に強い立場の大臣を置いて、他の大臣にも匹敵する強力な権限で、緩和すべきものと規制すべきものをきちんと見極めていく。働く人の環境は常に変化しているし、価値観だって変わっていきます。時代に応じた制度や仕組みを常につくっていくことが必要だと思います。

それともうひとつは、働き方改革自体は歓迎です。ただ、基本的な間違いがあります。

改革の基本的な間違い

それは、いまだに全員をひとつの働き方に押し込めようとしているということです。一昔前のように、国民はみんな同じように働けばいい。終身雇用でひとつの会社でずっと働いてくれればいいと。しかしながら、いまの時代は違います。独立をして起業を目指す人や、オリンピックを目指しているアスリート、芸術家やミュージシャン、政治家、弁護士など、仕事と働き方はたくさんあります。

さらに自分には夢や目標があるから、それを叶えるために朝から晩まで、できるだけ休みをなくして働きたいという人がいても、今ではそんな人を企業は採用もできません。

私は、人はそれぞれ違う才能を持って生まれているのだから、それぞれが得意な才能や能力をフルに使って成長して、その成長した能力で周りの人を助けるべきだと思っています。それがなぜかいまは、才能や能力を活かすことよりも、得意ではない人に合わせようとしている。例えば、足が速い人が遅い人を待って、いっしょにゴールしましょうという感じになっています。これは優しさという意味では一見正しいように見えますが、そうではないと思います。足が速いのであれば、その才能を磨くべきだし、遅い人を待つのではなく、手を貸して背負っていっしょにゴールしましょうと、その才能を活かすべきです。「働き方改革」という名のもとに、そんな個人の才能を活かして働くことができにくくなっています。

「女性活躍推進法」や「ニッポン一億総活躍プラン」で、誰もが活躍できる社会となりましたが、現実的には、個々人の価値観や才能を活かした多様な働き方が、まだまだしにくい環境にあると感じます。

社会の在り方を考える

私は、働き方改革ももちろん大切ですが、それよりもまず「社会の在り方改革」をすべきだと思います。これからの時代に日本国民が豊かな生活を送るためにはどうあるべきなのか。それを企業や働く人の意識だけでなく、社会全体の制度や仕組みまで見直していく必要があるのです。

日本人はもともと勤勉で、みんなよく働いて、そして、みんなで助け合うという互助・共助の精神がありました。「向こう三軒両隣」といって、隣近所が力を合わせて助けあう。しかしいまは、例えば子育てにしても、女性が育てることが前提となっていて、産休を取りやすくしましょうと制度にばかり目がいってしまう。女性が社会に進出しやすくするための仕組みは必要ですが、それ以外にも少し発想を変えて、子どもは地域全体で助け合って育てていく仕組みをつくってもいいと思います。地域や市、県や国が、子供の世話を家庭の親だけに任せるのではなく助けあって育てる。そんな制度や仕組み、条例ができれば、女性はもっと働きやすくなります。そうでなければ、せっかくの女性活躍推進法も、本来の目的を失ってしまいます。

教育にしても、テレビをつけたら与党と野党が揉めあう姿が映し出される。時には強い口調で相手を罵る。模範を示すべき大人がそんな姿を見せていて、子どもたちの教育がどうだとか、ゆとり教育は間違っていたとか、教育について意見を言われても説得力に欠けます。意見を言うときでも、相手の立場を思いやり、尊重して、時には褒め合う姿を子どもたちに示すべきだと思います。

日本の子どもに勉強する目的を聞くと「いい学校に入りたい」と答えます。そして、学校も入学者の数や卒業後の進路先のことで評価されるので、進学や進路といった上ばかりを見ています。アメリカの子どもたちは、誰に聞いても勉強する目的、学校に行く目的は、「自分の才能・能力を引っ張ってもらって、それを活かして生きていくため」と答えます。しっかり社会を見ています。学校もそのために、生徒には自立することを教えています。そう考えると日本は、ゆとり教育が云々ではなく、教え方そのものが違っていると感じます。

福沢諭吉の「学問のすすめ」の中に「一身独立して、一国独立す」という言葉があります。すなわち、国民一人ひとりが頑張って、それぞれが才能を伸ばして、幸せになってはじめて国が栄えるということです。それがいまは逆になっていると感じます。国家が先にあって、国がこうしたいから、国民に無理強いをしているような感があります。これは間違いです。

いま社会の環境はものすごいスピードで変化しています。AIやIoTの技術で働き方も仕事そのものさえも変わってきています。新しい雇用機会を創るのは、私たち民間の役割です。

問題や課題はまだまだありますが、性別にかかわらず働きやすい社会の環境整備はいい方向に進んでいます。あとは、それぞれの価値観、多様性が尊重されて、働く人、一人ひとりがイキイキと活躍できる社会になるよう、私たちはサポートしていきたいと考えています。

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