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2015年3月号より

松本順市 ENTOENTO社長 「600社にノウハウを提供した「返金保証付き」の人事コンサル」
松本順市 ENTOENTO社長

松本順市 ENTOENTO社長

まつもと・じゅんいち 1956年福島県生まれ。中央大学大学院中退。株式会社魚力に入社し、社長の参謀役として社内改革を行う。1993年に独立。当初は多摩研という名前だったが現社名はENTOENTO。2014年11月までに627社と、人事コンサルとしては日本一の実績を誇る。

魚屋のバイトがスタート

―― 松本さんはこれまで、600を超える企業に人事制度づくりのノウハウを提供してきたそうですが、その前は魚屋さんだったとか。
松本 ええ。魚力という魚屋に15年間勤めていました。なぜ魚力で働くようになったかというと、在籍していた中央大学がそれまでの駿河台(東京・神田)から多摩キャンパス(東京・八王子)へと移転したのがきっかけです。駿河台にはアルバイト先がいっぱいあった。ところが多摩にはあまりない。やむなく魚力で働き始めました。

いまでこそ魚力は東証2部に上場していますが、当時はまだ3店舗しかない魚屋でした。

―― あくまでバイト先で、就職するつもりはなかったんですか。
松本 魚の名前も知りませんでしたが、入ってすぐに「参謀としてそばにいろ」と社長に言われ、社長室で働きました。その後、大学院へ行ってもアルバイトを続けたのは、その仕事が面白かったからです。

―― それがどうして就職することになったのですか。
松本 大学院に行ったものの、教授と折り合いが悪く中退することに。でも商学部で学んでいたので、いずれ税理士になろうと考えていました。そうしたところ、魚力の社長が、「専門学校に行かせてあげるから、うちで働きなよ」と言ってくれたのです。それで、3年ぐらいお世話になろうと思ったのですが、仕事をすればするほど、どんどん面白くなって、いつの間にか専門学校にも行かなくなり、本格的に魚力で働くことになったのです。

―― 何が面白かったのですか。
松本 魚力の社長というのは、社員に成長してもらい、それによって会社も成長させたい、と考えている人で、その仕組みづくりを私にまかせてくれたのです。そこで社長室長として、会計システムから最後は人事システムまで構築していきました。この仕事を7年したあとで、実際にシステムが現場でうまく機能するかチェックするために現場に出て8年働きました。

この15年の間に、魚力の売上高は3億円だったものが150億円に、3店舗だったものが25店舗に、客単価も4倍に増えました。

―― そのノウハウがいまのビジネスに結びついたのはわかるのですが、もともとどうやってノウハウを身につけたのですか。
松本 本も読みましたし、セミナーにも通いました。でも、そうした経験を積めば積むほど、専門家と言われる人たちにまかせてはだめだなという思いを強くしたのです。

たとえば、あるコンサルタント会社に人事システムを構築してもらおうと問い合わせたら、300万円必要だという。当時の魚力の経常利益はわずか50万円です。300万円はあまりに高すぎます。

何よりおかしいと思ったのは、社長が下す社員の評価と、コンサルタントのつくった評価シートによる評価に、あまりに差があったことです。ある評価シートを使って、社長がよくほめる社員を評価したら、50点ぐらいにしかならない。本来なら80点や90点取らなければおかしな話です。そこで気づいたのは、専門家には経営者の考えがわからないし、社員の評価は社長にしかできないということでした。

そこで私が最初にやったのは、社長の考えをよく聞くことでした。どのような社員を評価するのか、社員にどう成長してほしいのか。そしてそれが社員にもわかるようにした。

社長が優秀だと認めほめる社員とは、次の4つに集約できます。(1)成果をあげているか(2)やることをやっているか(3)知識やスキルがあるか(4)勤務態度――です。そしてそれぞれを高めるために何をやっているか。これを可視化し、そういう人が評価されるシステムを構築したのです。

もう1つやったのが、優れた手法やスキルがあったら、それを社員が共有する仕組みです。

よく人事制度というと、成果主義が話題になります。でも多くの日本企業は間違った成果主義を導入しています。成果の評価は、ほとんどの場合、相対評価です。そうなると社員の考えることは2つに1つです。成果をもっと上げるか。あるいは他人の成果を上げないか。当然、後者のほうが楽ですので、その結果として、自分のスキルやノウハウをほかの人に教えなくなる。これでは社員も成長しないし会社の業績も上がりません。

そこで魚力では、社員を5段階で評価する際、いくら実績をあげても4止まり。でもそのうえで他の社員に教えると5になるようにしたのです。つまり教えることを評価対象にしたのです。こうするだけで、社員は一斉に教え始めます。それによって他の社員も成長でき、業績も上がっていきました。

―― それだけの実績を残したのに、なぜ独立したのですか。
松本 独立したのは22年前、37歳の時ですが、ちょうど魚力の上場話が出始めていました。社長からは「上場すればキャピタルゲインが2億円ぐらいになる」とも言われました。その時、考えたのがこのまま会社に残るか、株を返して退職するか、ということでした。そして最終的には後者を選びました。

ただ独立後は、魚力の社長からもずいぶんと顧客を紹介していただきましたし、魚力での実績があるので、私の顧客になっていただけたのだと思います。

返金したのは過去3件

―― 以来22年間で630社近い会社に松本式人事制度のノウハウを移植したわけですね。
松本 最初は1社1社、訪問して人事制度づくりを手伝いましたが、年間10社が限度です。今後30年かけても300社にしか提供できない。これでは世の中の人事制度を変えることはできません。

そこで毎回10社を集め6回の講義を行うというグループコンサルを始めてから、どんどん件数が増えていきました。

―― それでも個別コンサルと同様の成果をあげることができるのですか。
松本 基本は、先ほど言った評価基準にのっとった成長シートをつくってもらいます。そしてこれはどんな業種・企業にも通用します。

相談に来られる経営者の中には、売り上げが前年比90%で困っている、という人もいます。でも詳しくみれば、その中にも前年比205%の人や店があるはずです。それを共有化すれば、必ず業績は伸びていきます。

ただ勘違いしてほしくないのは、この制度は人件費を抑えるためのものではないということです。さらには、私自身には評価はできません。評価は経営者にしかできません。

―― しかも、成果が出なかった場合は返金にも応じています。これも画期的ですね。
松本 どんな商品でも、買ったものに不満があれば、「金を返せ」と言うでしょう。だけどコンサルでそんなことを言うところはなかった。そこで返金保証を始めたのですが、いままで返金したのは3件です。その3件に共通するのは、私に評価までしてほしいというものでした。

返金保証を始めた時は、真似されるかと思ったけれど、なかなか真似してくれませんね(笑)。

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WizBiz代表・新谷哲の著書「社長の孤独力」(日本経済新聞出版社)

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