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特集記事|月刊BOSSxWizBiz

2015年3月号より

やっぱりHONDAはヘンだ!|月刊BOSSxWizBiz

2014年末の総選挙で、安倍政権は国民から圧倒的な支持を受けた。その背景には、アベノミクスが一定の成果をあげたことがある。しかし本番はこれからだ。2020年に開催される東京オリンピックまでの5年間で、どれだけの成長戦略を描けるかが、その後の日本の将来を決めると言っても過言ではない。

企業にとってもそれは同様で、明確な未来戦略なしには生き残っていくのは難しい。少子高齢化やエネルギー問題など、日本の経済環境は相変わらず厳しい。だからこそ、そこにチャンスを見出せる企業のみが、永続的な成長をつかむことができる。

本特集では、この先、大きな役割を果たす企業を取り上げる。これら企業の活躍が、東京オリンピック以降の日本経済を支えていく。

弱点を長所に、日本の底力を再確認する時代がやってきた|月刊BOSSxWizBiz

農業も成長産業に

2015年1月6日、日本経済団体連合会、日本商工会議所、経済同友会の3団体は、恒例の賀詞交歓会を東京・紀尾井町のホテル・ニューオータニで開催した。

この交歓会で挨拶に立った安倍首相は、「今年も経済最優先で取り組んでいく」「大胆にそしてスピーディーに3本の矢の政策を進めていく」と語り、経済人たちの熱い拍手を浴びていた。

早いもので、現在の安倍政権が誕生してから3度目の正月を迎えた。最初の1年は、アベノミクスの3本の矢のうち、1本目の「大胆な金融緩和」と2本目の「機動的な財政出動」が爆発、円高はあっというまに円安へと変わり、株価も大きく上昇するなど、日本経済を長年にわたり苦しめ続けたデフレ脱出の糸口が見えたかに見える年だった。

しかし2014年は、4月に消費税率を5%から8%に引き上げたこともあり、国民の消費支出は激減、また設備投資額といった経済指標なども軒並み悪化し、来年秋に予定されていた消費税率の10%への引き上げを断念せざるを得ないところまで追い込まれた。

それだけに3年目の今年が勝負である。3本目の矢である「成長戦略」がそろそろ炸裂しないことには、日本の将来に暗雲が漂いかねない。それは、一時的なものではなく、かつて「東洋の奇跡」と呼ばれた日本経済が、永続的に埋没することを意味する。まさにいまが正念場だ。

滝川クリステルの「お・も・て・な・し」が決め手になって(?)、2020年の東京オリンピック誘致に成功したのは、すでに1年半近く前のことだ。

この時は日本中が沸き立った。1964以来56年ぶりに夏季五輪という世界最大のスポーツイベントが日本で開かれるという高揚感もあったが、同時に、これをきっかけに日本経済が再浮上できるのではないかという期待があったからだ。

2020年に向け大きく変わり始めた東京だが、社会全体が変わらなければ、今後の成長はない。

確かに、いま東京が、日本が、大きく変わろうとしている。東京のあちこちで大型ビルの建設が進むが、単に新しいビルが建つだけでは意味がない。街のあり方、都市のあり方、社会のあり方そのものが変わってこそ、オリンピックをひとつのきっかけとして、日本が羽ばたくことにつながるはずだ。

幸いなことに、少しずつではあるが、将来の希望を感じさせる企業や事業も生まれ始めている。

詳細については次頁以降の個別企業の取り組みを読んでほしいが、次稿で紹介するトヨタ自動車のFCV(燃料電池車)「MIRAI」などは燃料の自給化なども含め、経済を根本から動かす可能性を秘めている。

日本経済の最大のネックが、エネルギー問題であることは論をまたない。ここにきて原油価格が暴落するなど日本経済にとって追い風が吹くが、エネルギーの大半を海外に依存する状況に変わりはない。

東日本大震災以降、メガソーラー発電が普及したが、電力の不安定性もあって、電力各社はこれ以上の受け入れを断りたいのが実情だ。

しかしメガソーラー発電によって海水から直接水素の採取・保管・流通ができるようになり、その一方でFCVや家庭におけるエネファームなどで燃料電池が一般化すれば、日本のエネルギー事情は一変するはずだ。

エネルギーとならぶ日本の安全保障上のネックである食料問題も、大きく動こうとしている。安倍政権はこれから「岩盤規制」のひとつである農協の改革に本腰を入れていく。これまでは農協を通じて農家を保護してきたが、結果的には日本農業の弱体化を招いていた。そこで、農協の力を削ぎ、他業種からの参入や大規模化・工業化を進めることで、食料自給率を上げていくことを目指すこととなった。

恐らく農協はこれから必死に巻き返しに出るだろうが、この改革をやりきることができれば、日本の農業は根本から生まれ変わる。

本特集では取り上げていないが、電機メーカーや自動車メーカーの中には、農業参入に関心を示す企業も数多い。すでに、海外移転で空いた工場などを利用して、野菜工場として再稼働させている例もある。世界の最先端を行く日本の生産技術が農業と組み合わされることで、日本農業を取り巻く環境は大きく変わるはずだ。

五輪で世界にPR

ロボット技術も日本が世界の最先端を行くもののひとつだろう。

日本のこれまでのロボット開発は、産業用ロボットを除くと、ホンダの「アイボ」にしても、トヨタが開発したトランペットを吹くロボットにしても、技術の蓄積としては意味があるものの、実用性とはかけ離れたところにあった。

鉄腕アトムやドラえもんなどのアニメの影響もあって、日本はロボット=人型と思い込んでいた。それが実用化の障害になっていた。しかし最近では形にこだわらず、人間の生活をサポートするロボットが登場してきた。

もともとセンサー技術や制御技術において日本企業の国際競争力は高い。市場ニーズがどこにあるか的確に把握できれば、日本は今後とも世界最大のロボット大国であり続ける。

何より、日本経済の最大の弱点である超高齢社会も、企業にとっては世界で戦う武器になる。

労働人口の減少によって、日本の消費支出の伸びは期待できない。しかしそれでも、健康・介護市場はどんどん膨らんでいく。ここで覇権を握ることができれば、その技術・商品・マーケティングなどのノウハウを、今後高齢社会が到来する中国や韓国などの東アジアや、すでに人口減少時代に突入しているヨーロッパに輸出することが可能になる。世界の医療・介護市場を日本企業が席巻することはけっして夢物語ではない。むしろ前途は洋々開けているといっていい。

つまり、エネルギーや農業、そして高齢社会といった日本経済のマイナス点も、創意と工夫次第でプラスになるということだ。

そのためにも、これから東京五輪までの5年間が勝負である。五輪特需や復興特需にアベノミクス特需が加わり、大企業を中心に好決算が相次いでいる。しかも今後、法人税が引き下げられることもあり、企業の経営環境はさらに改善される。

過去の例を見ても、オリンピックが終わると景気は冷え込む。その時までに、次の日本経済を支える産業が続々と誕生しなければ、その後に本格的人口減少時代を迎える日本が再び成長軌道を描くことはむずかしい。その意味で、五輪まであと5年もあるのではなく、もう5年しかないというのが実情だ。

本特集で取り上げた20社は、5年後、日本経済をリードすると思われる企業だ。しかし可能性を秘めた企業はまだまだいくらでもある。そうした企業が覇を競い、2020年に、日本全体が最先端産業のショールームになれば、日本経済は永続的に成長することができる。

繰り返しになるが、時間は、あと5年しか残っていない。日本企業の底力を信じるのみだ。

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