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経営者インタビュー

2016年10月号より

ビール、発泡酒、新ジャンル“全方位強化”で戦っていく
平野伸一 アサヒビール社長

平野伸一 アサヒビール社長

ひらの・しんいち 1956年1月16日生まれ。79年早稲田大学教育学部卒。同年アサヒビールに入社。97年経営企画部中国室長、98年グローバルマネジメント部付上海担当チーフプロデューサー。99年中国代表部業務担当部長、2000年東京支社業務部長、01年首都圏本部営業企画部担当部長、02年東京支社副支社長、03年九州地区本部広域営業担当副本部長、05年焼酎部長、06年埼玉支社長、08年執行役員九州統括本部長、11年常務取締役営業統括本部長、13年専務取締役、15年取締役副社長、16年3月アサヒビール社長に就任。

最大の商戦真っただ中のビール業界。その中でビールの巨人というべき「スーパードライ」を擁するのがアサヒビールだ。発泡酒や新ジャンルも含めた足元の動向から今後の戦い方、海外戦略まで、前頁までの小路氏同様、2016年3月に社長に就任した平野伸一氏を直撃した。

「プライムリッチ」が急伸

―― まずは、上半期の1~6月のビール類のシェアを含めた総括から聞かせてください。
シェアで言えば39.2%、1.1ポイントほどアップをしましたので、これはよかったです。ただし、ビール、発泡酒、新ジャンルと分けて見てみると、ビールは前年比99.2%でした。それを補ったのが新ジャンルで、108.2%、トータルで101.2%という結果です。

今年の5月以降、国内の外食市場が極めて厳しくなりました。前年比101.2%というのは、ボリュームで言うと80万ケースほど増えているんですが、「スーパードライ」と新ジャンルの「クリアアサヒ」「プライムリッチ」の缶、この伸長分が180万ケースあるんです。

ところがトータルではプラス80万ケース。マイナス100万ケースの分は、主に樽と瓶なんです。つまり、業務用の数字が悪かった。もともと当社は業務用、つまりビールに強い会社で、家庭用で多い発泡酒や新ジャンルは2位、あるいは3位です。業務用が減って、いまは家庭回帰の〝家飲み〟が増えています。いままでですと劣勢に立たされるところでしたが、そこでクリアアサヒやプライムリッチなどが前年比2桁増、特にプライムリッチは135%と大きく伸ばせました。この押し上げ効果があったおかげで、業務用から家庭用にシフトしたいまの状況の中でも、当社はシェアを伸ばすことができたわけです。

―― 将来の酒税法改正を睨み、ビール回帰をメーカー側が段階的に進めている一方で、消費者の財布の紐は固く、価格の安い新ジャンルが人気化しているということですか。
原因をリサーチすると、ゴールデンウィーク明けの5月中旬ぐらいから節約モードに入っていて、外食を控えて家庭に回帰している構図がわかりました。ですから、我々メーカーサイドからすれば、(ビール、発泡酒、新ジャンルと)全方位でやることが一番、大事だろうと。これまでのように業務用に偏っていると、マイナスになります。

そういう中で当社は、年初から基幹商品のクオリティアップを図り、特にプライムリッチはベルギーの国際コンテストで三ツ星を取りまして、中身品質がものすごく上がったことが評価された。結果として大きな支持を頂戴し、さきほど言いました135%になったわけです。そういう意味では101.2%は中身のある数字だと思いますね。

―― 景況感や円高、株安の影響もあるとは思いますが、財布の紐が固くなった消費者に、再び外食など外に目を向けさせる方策は。
大きな取り組みの1つが、「アサヒスーパードライ 樽生乾杯キャンペーン」(2016年6月21日~8月21日までを対象期間として、スーパードライ等1リットルの売上げに対し1円を日本オリンピック委員会と日本障がい者スポーツ協会日本パラリンピック委員会などに寄付するもの。アサヒビールは20年の東京オリンピック・パラリンピックで、ビール&ワインでゴールドパートナー)でした。

エネルギッシュでアグレッシブな雰囲気を持つ平野伸一・アサヒビール社長。

全国に26万店ほど樽生店があるのですが、キャンペーンポスターを掲出させていただけないお店もあって、調べましたら18万店ぐらいは掲出が可能と。そこでお客様に知っていただき、飲食店にも賛同していただけて、しかもオリンピック・パラリンピックの選手育成にもなり、売上げ貢献にもなるわけです。おかげさまで、ポスター掲出店は22万店にまでなりました。これは極めて異例なケースでして、それだけ、消費者の皆さんは〝コト消費〟を期待されているということです。この効果で、業務用の樽のボリュームも上がりました。

乾杯キャンペーンは、当社がゴールドスポンサーであるがゆえにできることで、メーカーサイド、飲食店の流通の皆さま、それにお客様が三位一体となって参画できるキャンペーンでした。

その参画意識が高揚感になりますから、そういうものが有形無形でいい影響を多方面に及ぼしていくわけです。当社のスポンサーシップはありませんが、これは19年に日本で開催される、ラグビーのワールドカップも同様ですね。

「クリアクーラー」の経験

―― 話を戻しますと、消費者の嗜好もいろいろで、新ジャンルが人気な一方、母数は小さいですがクラフトビールも人気です。キリンビールでは、主力の「一番搾り」で47都道府県別に違う商品を出しました。
日本でもクラフトビールは成長してきていますが、私は米国ほどは人気にならないだろうと思いますね。日本のビールの特徴として、極めて品質が高いことが挙げられますので、今後もクラフト市場だけ大きな変化というのはないでしょう。

各地域地域のビールを作ることも大事ですが、ビールも発泡酒も新ジャンルもある。さらに缶チューハイなどのRTD分野もある、洋酒も焼酎もワインもあってバリエーションがありますから、それぞれの中身品質を徹底的によくすることが満足度を高める要因です。

スーパードライも来年の3月17日で、発売から満30年になりますので、しっかりと新たなステージに取り組んでいきます。

―― もう1つ、最近はコンビニ向けを中心とした共同開発商品も多くなってきました。コンビニの圧倒的な販路は大事ですが、一方でナショナル・ブランドを最優先で売りたいメーカー側からすれば、少し複雑な思いもあるのでは。
たとえば、セブン&アイ・ホールディングスさんとの取り組みで言えば、RTD分野で缶チューハイの「クリアクーラー」を長年、やらせていただいてますが、そこで商品開発のノウハウをいろいろ勉強しているということと、お客様がどういう購入行動をされているかも、非常に勉強になります。そういうことがずっと知見として生かされて、今年発売した(缶チューハイの)「もぎたて」ができたのです。

チューハイ市場では、残念ながら当社はこれまで4位でしたが、今年の上期で言えば3位に浮上したと理解していますけど、それまでは売れる商品がなかったんです。なので、コンビニの店頭では当社の缶チューハイは陳列棚から弾かれてしまう。スーパーでもそうです。クリアクーラーはずっとセブンさんと一緒にやっていますから、永続的に置いていただける。もぎたてとクリアクーラーとがうまくコラボできて、売上げ貢献のお手伝いもできるだろうと思っています。

―― さて、平野さんのこれまでの軌跡ですが。
入社後は東京の世田谷区で3年、杉並区で3年、家庭用市場を担当し、その後2年はデパートと飲食店チェーン担当で、その間、東京支店におりました。当時はまだ支社でなく支店の時代です。

で、86年にマーケティング部に異動。翌年3月にスーパードライが発売されるということで、大手広告代理店を交えて休日出勤もしょっちゅうあり、侃々諤々の議論をしたのが懐かしいですね。

スーパードライの黄色と赤を使った立て看板、あれは私が考案しました。普通、デザイン的に黄色と赤の原色同士の組み合わせって絶対にあり得ないんですが、ものすごいインパクトがあるんですね。当時は「アサヒ生ビール」が4000万ケース売れていまして、翌年発売予定のスーパードライは、予算では100万ケース、それも当初は首都圏限定だったのです。手探りでみんな素人集団でしたが、それがかえってよかったのかもしれません。

―― キャリア的には営業経験がお長いですが、持ち株会社の小路明善社長同様、平野さんもかなり多彩なキャリアを積まれてきてますね。
確かに、人事や経営企画にもいて、中国室長や中国駐在も経験し、焼酎部長もやりましたから、営業経験と半々ぐらいですかね。

―― これまでのキャリアで、最も苦労したのが中国事業担当の頃だそうですが。
確かに一番、苦しかったですね。当時、深センで青島ビールとの合弁会社を作りましたけど、それをずっと担当していました。これはもう、すごいプレッシャーで、中国ビジネスを黒字化しないといけない。当社の技術者も100人以上、出張、あるいは駐在してもらいましたし、技術陣総動員でやりましたからね。結果的には、初年度から黒字になったのでホッとしましたけど。

当時はいつでも中国に行き来できるよう、上着のポケットにずっとパスポートを入れてましたし、あの頃は2年半で計52回、中国に出張していましたから。

豪州では2位ブランドへ

―― その中国をはじめとした海外ですが、今後の展望はどうですか。今年の年初から、海外事業の一部が持ち株会社からアサヒビールに移管されていますが。
端的に言えば、スーパードライとニッカウヰスキーをさらに海外で売っていこうということです。ブランドエクイティを上げるために輸出を促進すると。

6月21日~8月21日まで、「アサヒスーパードライ 樽生乾杯キャンペーン」を実施し、成功を収めた。

韓国やシンガポール向けは輸出で、遠隔地の欧米向けは現地で作ってもらっていますが、基本は「ハイネケン方式」だと思っています。ハイネケンでは、自社で生産した商品を全量、輸出して、大きい市場に成長したら、現地で直営の工場を作る、あるいは買収して100%子会社にするというやり方です。

この秋口には、イタリアの「ペローニ」が、アサヒグループの100%子会社になります。そうなると、欧州ではいま、違う会社に当社製品を作っていただいてますけど、もしかしたらペローニで作ってもらったほうがいい。当社から技術者も行きますし、100%子会社ですからね。そこで作れば、いわばメイド・イン・ジャパンのスーパードライを輸出する延長線上です。

韓国では、輸入ビールで5年連続ナンバーワンですが、これはロッテさんと組んで「ロッテアサヒ」という会社を作れたことが一番大きいですね。

海外に出る時に、やみくもに出るのではなく、その市場を一番知っていて、しかも流通への配荷力があるところとの契約が大事。そこは、大手商社の方も同じことを言っています。現地で3位とか4位の企業では売り切れない。そうなると、こちらにいくらブランド力があっても売れないのです。

豪州に我々の子会社がありますが、現地ではスーパードライって4位なんです。1位は「コロナ」、2位が「ハイネケン」、3位が「ペローニ」、そしてスーパードライと。このプレミアム市場で、スーパードライとペローニが戦っていた。でも、今後は3位と4位が合流し、合わせると、ハイネケンを抜いて2位になります。豪州のプレミアム市場ではかなり大きな位置づけになるわけで、今後はいろいろなシナジーも出てくるでしょう。

ペローニは、イギリスでは輸入ビールでナンバーワンですが、スーパードライはダウンタウンで戦うビールではありません。価格は高くていい。「4つ星、あるいは5つ星ホテルや国際空港でスーパードライを売れ」と指示しています。

ただ単に、海外でどれだけのケース数を売るとかではなくて、ハイエンド市場で売りたいなと。いわば、BMWのような高級路線の市場でスーパードライは戦いたいのです。高くても買っていただける市場で勝負していくことが大事。

いま、海外ではスーパードライはまだ販売が1000万ケースに達していませんが、さらにブランド価値を上げていくマーケティング活動をしていきます。それがスーパードライ、およびニッカウヰスキーの戦略の立ち位置です。

(聞き手=本誌編集委員・河野圭祐)

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