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経営者インタビュー

2016年10月号より

「8つのナンバーワン」を10にも12にも増やしていく
小路明善 アサヒグループホールディングス社長兼COO

小路明善 アサヒグループホールディングス社長兼COO

こうじ・あきよし 1951年11月8日生まれ。75年青山学院大学法学部卒。同年アサヒビールに入社。2000年人事戦略部長、01年執行役員経営戦略・人事戦略・事業計画推進担当、02年執行役員飲料事業担当、03年アサヒ飲料常務取締役企画本部長、05年アサヒビバレッジサービス社長を兼務、06年アサヒ飲料専務取締役、07年アサヒビール常務取締役、11年アサヒグループホールディングス取締役兼アサヒビール社長、16年アサヒグループホールディングス社長兼COOに就任。

酒類、飲料、食品のグループ中核事業会社を束ねる、アサヒグループホールディングス。同社のトップに、今年3月に就任したのが小路明善氏だ。グループシナジー最大化に加え、今後も勝ち続けていくための条件、業界再編から事業哲学、経営観まで幅広く聞いた。

新商品で先駆ける企業に

―― グループの酒類、飲料、食品、それぞれの事業の足元の課題やシナジー最大化はどう考えていますか。
これから3年程度の期間で、アサヒグループのダイナミックな成長の実現を成し遂げていく考えです。

まず、酒類、飲料、食品の各事業で、ナンバーワンブランド、ナンバーワンカテゴリーをいかに多く創出していくか。いま、ナンバーワンのブランドやカテゴリーが8つありましてね。ビール類の中のビールでナンバーワン。「スーパードライ」は1987年に発売をして、89年から27年間にわたって1億ケース超え(1ケースは大瓶20本換算)という大きな量を販売してきています。2つ目に、昨年は「ドライゼロ」を中心としたビールテイスト飲料でナンバーワンカテゴリーになりました。

東京・墨田区にあるアサヒグループホールディングスの本社ビル。

3つ目は、チリワインの「アルパカ」で輸入ワインナンバーワンを実現。4つ目は「三ツ矢サイダー」が透明炭酸飲料でナンバーワンブランド。5つ目は乳酸菌飲料市場で「カルピス」がナンバーワンです。6つ目は食品事業で、「ミンティア」という商品が錠菓市場でトップ。7つ目は和光堂のベビーフード、そして8つ目が、フリーズドライのみそ汁市場でナンバーワンと。

この数を10にし、さらに12、13と上げていく。そのためには、強みのある分野への集中を意識していかないといけません。その結果、ナンバーワン商品をたくさん持っていると、コストダウンにおける数字が非常に大きくなってくるんですね。小さい商品ではコストダウンもそれなりです。大きいブランドでコストダウン、コストリダクションをすると非常にその成果が出ますから。メーカーとしては、ナンバーワンの大きなブランドをたくさん持つことによって当然、生産効率も上がっていくわけです。

―― なるほど。ほかにも何かありますか。
既存商品を常にブラッシュアップして、付加価値を高めていくことが大事です。スーパードライも中身の付加価値を高めることによって、14年に米国で開かれたワールドビアカップで、大手メーカーでは初めて金賞を取りました。15年は、ブリュッセルビアチャレンジでも金賞受賞。スーパードライのようなロングセラーのブランド商品であっても、変えていいもの変えてはいけないものをしっかり持ちつつ、さらに磨いていくことが大事ですね。

もう1つ重要なのが、技術に裏打ちされた新価値商品。健康機能の飲料や食品です。そして、常にファーストエントリーをしなくてはいけない。一番最初に新しい価値の商品を市場に出していくと。そうすることで技術力もアップしていきますし、マーケティングも研究開発部門もモチベーションが上がる。後発でなく、ファーストエントリーということが大事なのです。これによってダイナミックな成長につなげていきたいですね。

買収、提携、さらに積極化

―― 企業買収、あるいはそこまでいかなくても、提携によっても事業の幅は広がります。
M&A、事業提携、あるいは統合、事業再編ももちろんです。欧州で大型買収(イタリアの「ペローニ」、オランダの「グロールシュ」など)を手がけ、欧州でのビールビジネスで大きな基盤を獲得することができました。「日本発のプレミアム・グローバル・ビールメーカー」を標榜して、量で戦うのではなく、今後もプレミアム・ビールメーカーとしての幹を太くするようなМ&Aを続けていきたいと思っています。

提携という意味では、我々は(沖縄県の)オリオンビールの筆頭株主ですが、沖縄フェアなどを活用して、沖縄県外にも広く拡販することで、ビールのカテゴリーを増やすことができます。ほかに軽井沢ビールとも提携をしまして、ここのクラフトビールをギフトセットで売ることもスタートしています。クラフトってあまり定義がないのですが、我々の流通ルートを使って、ある特定エリアでしか飲めなかった美味しいビールを、通年というわけにはいきませんが、ギフトなどを活用して売っていくわけです。

カゴメさんも筆頭株主ですので、以前、「レッドアイ」という共同開発商品も出しておりますし、自販機分野では大塚製薬さんと提携。さらに業界内で言えば、数年前からキリンビールさん、サッポロビールさんとは首都圏でビールの共同配送をしています。同業他社と共通のもの、特に物流面での協業はメーカー共通利益の確保にもつながりますしね。酒類や飲料分野は、競争と協調を明確にしていくべき時期に入ってきたのではないかと。この協調の部分はトップダウンで進めていきます。

―― ビール市場の縮小が始まって久しいわけですが、再編の可能性、あるいは必要性は、今後の状況によってはどこまで出てくるという認識ですか。
遠い将来、再編があるのか、あるいは現時点で再編の必要性があるかどうかというのは、何とも言えません。敢えて言うと、私は現時点での再編の必要性はあまり感じません。なぜか。たとえばオリオンビールを含めたビール5社それぞれが、規模は別にして、各社ごとに特徴ある商品を持っているわけです。それを持って事業を営んでいるということは、それに対する顧客がいるということなんですね。

再編すると、ブランドというのは必ず集約されます。せっかくいる顧客の嗜好をあまりにも無視してブランド集約をするというのは、メーカー論理に偏ってしまっているのではないかと。顧客に対して付加価値の高いブランドをいかに出していくかということと、再編の前に業界協調が必要です。もちろん、カルテルになるようなことは絶対にあってはなりません。

物流1つとっても、いまの首都圏での協業で効果が出ていますから、そのエリアを拡大していく。浮いた費用で商品の開発に回すことができるのです。あるいは、流通の効率化に使うこともできる。これは、流通や顧客にとっても歓迎されることですから。

そういうことを十分にやり切ってから、オリオンビールを含めたビール5社が、日本国内で多いのか多くないのかと考えていくべきですね。それを通り越して、一気にいまの5社体制でいいのかという議論は、まだまだ時期尚早であるという感じを強く持っています。

国内にも海外にも等距離で

―― 同業他社に比べて海外比率が低いアサヒグループですが、市場も嗜好も民族性も、あるいは気候も味覚も違う海外での展開は、特にクルマや家電と違って、口に入る食品分野はなかなか難しい面も多いと思います。

海外事業は、基本的には国内と同じようにやらないといけないと思っています。あまりにも現地に任せきりでもダメですし、かといって手を入れ過ぎてもダメ。任せることとハンズオンでグリップすることを、しっかりと明確にしていけば、海外事業はそんなに失敗しないはずです。

大事なのは、国内事業と海外事業のどちらにも、いかに当社(=アサヒグループホールディングス)が等距離でいるかということでしょう。物理的な距離はあっても極端な話、欧州でも2泊で出張に行ってこれるわけで、そこは意識して、国内事業と海外事業との距離感を常に同じに保っていくことは、非常に大事だと思います。

持ち株会社と事業会社のトップは、国内も海外も、あるいは酒類でも飲料でも食品でも、すべて同じ距離感を保っていくことが重要。特に海外の場合、出張が大変だと言って距離感が開いてしまうと、海外で何が起こっているかわからなくなる。その結果、打つ手が後手に回ってしまうわけです。

「強くなければ生きていけない、優しくなければ生きていく資格がない」という言葉を座右の銘にする小路社長。

―― もう1つ、企業の意思決定では、行き過ぎたトップダウンもいけないでしょうし、さりとてボトムアップばかりでももちろんダメでしょう。その兼ね合いはどう考えていますか。
トップダウン、ボトムアップは両方必要だと思っています。私の経営観で申し上げますと、トップというのは直観力と情熱がなければダメ。情熱が時にはトップダウンになりますし、直観力で判断、決断したものが、時には外からはトップダウンに見られることもあります。トップダウン、ボトムアップがバランスよく必要とは、あまり感じません。

それより大事なのは、社長にしか果たせない役割が直観力と情熱なのです。直観力も観察の観と感性の感の2つあって、少ない材料でも決断しなくてはいけないことがある。常に観察眼を研ぎ澄ませて、いろんなデータを見たり得意先に行って情報を聞いて、仮に少ない情報であっても、最適な判断、決断をトップとしてしなくてはいけない。それが観のほうです。

感性の感のほうは、たとえばスーパードライのピンク缶は、何年か前に私がゴーサインの指示を出しました。あるクルマ(=トヨタ自動車の「クラウン」)のピンクカラーバージョンを非常に研究しました。ただ、スーパードライは屋台骨ですから失敗は許されません。

ですから、ピンク缶のスーパードライは絶対に下からは案として上ってこないですね。ピンクにしてブランド棄損でも起こしたら、誰が責任を取るんだということになる。そういう、思いきり踏み出す時の決断というのは、感性を磨いてないとできないことです。

大学時代はギターが趣味

―― さて、小路さんのこれまでの軌跡ですが、就職活動、あるいは大学時代のクラブ活動などは。
音楽が好きなので、大学時代は、よくギターを弾いてましたね。就職活動は、オイルショックの直後でしたので、衣食住分野なら永遠になくならないだろうと。プラス金融の会社を受けました。

入社後は、当時の千葉支店に配属になり、自分ではそれなりの成績を残したつもりでしたが、その後1年で東北に転勤になりまして、4年半ぐらい営業担当です。

さらに、ある日突然、労働組合の専従になれと言われまして、確か1980年だったと思います。そこから約10年を過ごしたのですが、組合専従ではいまの会長(=泉谷直木氏)が先輩でいまして、2年ほどは一緒に仕事をしています。

―― 幅広い分野で経験を積まれてきた小路さんなので、多くの武勇伝があると思いますが。
東京の大きな飲食店の契約をひっくり返したというのはあります。そこには2日に一度、1年間通い詰めました。10階建ての飲食店ビルを改装、改修する時に全部、我々の商品棚にしていただいたのです。ただし、ビールは併売でしたけれども。

確かに、私も職歴だけは多いですね。営業10年、組合専従で10年、人事を7年ほどやり、飲料事業も5年ほど。その後、飲料分野で自販機会社の社長もやり、アサヒビールで財務担当、環境、経営戦略、広報や事業計画推進、あるいはITと。

―― 最後に、中長期で見たアサヒグループの近未来像はどうですか。
海外ウエイトをこれからどんどん高めていきます。全世界で存在価値が認識される、グローバル・プレイヤーになっていきたいですね。

いま、スーパードライは約70ヵ国で販売し、海外7ヵ国8ヵ所に生産拠点がありますが、国の数は広げなくていいと思っています。韓国のように、アサヒビールが輸入ビールでナンバーワンという国もありますし、こういうエリアをたくさん作っていきたい。

言い換えれば、生活になくてはならない商品を持った企業集団。これが近未来像の私のイメージですね。事業構成比は、買収で欧州のグローバル・ビールメーカーもグループに入ってきますし、これまで、М&Aの優先順位ではアジア・オセアニアで飲料事業中心に投資してきました。私の在任期間は、酒類、つまりビール、ここへの投資が優先順位としては高くなっていくと思います。

(聞き手=本誌編集委員・河野圭祐)

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