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企業の匠

製造業、サービスを問わず、企業には「◯△の生みの親」、「△◯の達人」と呼ばれる人がいる。
そうした、いわば「匠の技」の数々がこれまで日本経済の強さを支えてきたのだ。日本の競争力低下とともに、そこがいま揺らいでいるという指摘が多いからこそ、各界の匠にスポットを当ててみたいー。

2017年4月号より

パナソニックが持ち込むデジタルカメラのイノベーション

「デジタル時代の新たな写真文化の創造」を掲げるパナソニック。 その姿勢は次々と業界に新機軸を生み出してきた。 参入15周年の区切りに登場した「DC-GH5」とは?

発売15周年の「LUMIX」

「GH5」について語る前田将徳氏。

昨年10月に発売15周年を迎えたパナソニックのデジタルカメラ「LUMIX」。その最上位機種、ミラーレス一眼カメラ「LUMIX DC-GH5」が3月23日に発売される。

このGHシリーズと言えば、特に高く評価されているのが「動画対応力」。イメージングネットワーク事業部商品戦略企画部担当部長の前田将徳氏はGHシリーズについて、次のように語る。

「前モデルのGH4くらいから、このカメラを使って動画制作をするというトレンドが起きています。アメリカ等では、独立系の小さい制作会社が多く動画ニーズが顕在化しているのですが、購入者の7割がたが動画を目的に買われています。ここは外せないということで、プロカメラマンやプロビデオグラファーへのヒアリングを重視し、企画前段階からニーズを掴んでGH4に足りない部分をGH5に盛り込んでいくというプロセスを踏みました」

動画に注目が集まるGH5だが、この製品はあくまでハイブリッド。1月25日に行われた発表会では、静止画についても強調された。

「ハイブリッド・ミラーレスですから、動画も静止画も最高峰を目指したい。今回はまず写真画質をどれだけ上げられるかに重点を置いて開発してきました。2つのキーデバイスを一新して、これにより最高画質にこだわっています。1つは新開発のイメージセンサーであり、もう1つは新世代画像処理ヴィーナスエンジンです」

新開発のイメージセンサーにより、画素数はGH4の16.1メガから20.3メガにアップ。約8メガの秒間60コマ連写(4K60fps)は世界初で、この動画記録に対応したイメージセンサー読み出しはGH4の約1.7倍に高速化し、高画質・高速性を実現している。画像処理エンジンも解像・高感度画質・色再現性が大幅に進化し、高速演算による信号処理速度もGH4比1.3倍以上アップした。

GH5から登場した新開発の「6Kフォト」を使えば約18メガの秒間30コマ連写で決定的瞬間を高画質で撮影することができる。高精細撮影の6K30コマと、超高速撮影の4K60コマを使い分けることでユーザーの高いニーズに応えている。

LUMIX史上最高の高品位写真画質を生み出した2つのキーデバイスは、動画の面での進化にも大きく寄与している。前述のように4K60p動画記録はミラーレス一眼カメラとして世界初の領域だ。

世界初をちりばめた「LUMIX DC-GH5」。2017年3月23日発売予定。

「動画性能については、プロ使用に堪えるということです。特にGHシリーズでこだわってきているのは、動画記録時間無制限というところ。単にデジタル技術だけでなく、放熱技術にもこだわっています」

GH5では、すべての記録方式で時間無制限に動画記録できるため、中断することなく長時間記録が可能になっている。スマートフォンなどでも長時間使用すると機体が過熱し、保護回路が作動して強制的にシャットダウンすることがある。プロ使用に堪えるのであれば、高いクオリティの画質を維持しつつ、連続使用は不可欠になる。

「熱シミュレーション自体は、GH4の開発時よりも数段精度が上がっていますので、金型を製作する前に、何度も高精度でギリギリのところまでシミュレーションをして追い込むという作業を繰り返しています。カメラの開発を重ねるにつれ、放熱技術やシミュレーション技術が高まっていますので、それがノウハウとして蓄積されています。プロフェッショナル仕様として、こうした部分にはこだわっています」

「業界初」が標準化に

パナソニックのデジカメ事業は、参入してわずか15年。しかし、存在感は年を追うごとに増している。

「写真業界で言えば、15年はひよっ子です。海外でのイベントではティーンエイジャーという言い方をしたことがありますが、ティーンエイジャーは時々とんでもないことをしでかします。我々はニューカマーならではの冒険ができる。今回の6Kフォトだったり、デジカメなのに動画性能を追求するとか。例えば、GH5では手ブレ補正の『Dual I.S 2』を発表しましたが、これはボディ内の手ブレとレンズの手ブレを両方シンクロさせて、手ブレ補正効果を最大化する技術です。こうした技術を業界で初めて製品に取り入れる。常にイノベーターであり、チャレンジャーでありたい。老舗ではできないようなことをやりつづけたい」

1月25日に開かれた記者発表で「GH5」の商品説明をする前田氏。

手ブレ補正をデジカメに搭載したのはパナソニックが初であり、高倍率ズームのコンパクトデジタルカメラや、ミラーレス一眼カメラも初めて世に送り出したメーカーはパナソニックだった。

「我々は業界初のイノベーションに取り組んでいますが、それがいまや、他メーカーさんにも標準化されてきています。他と違うことをやりつづけるのではなく、新しい方向への写真文化をつくり、マネされるものを作ってきたと自負しています」

発表会でも話題になったのが、8Kフォトの実現だ。8Kになると画素数は約3300万画素に達する。技術的なハードルは高いが、2020年の製品化が期待される。

「我々の夢としては、東京五輪のスポーツカメラマンのなかにLUMIXを持っている人がいたらいいなと。8Kフォトでスポーツ選手の決定的瞬間を捉えてもらいたいと思っています」

(本誌・児玉智浩)

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