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特集記事|月刊BOSSxWizBiz

2018年11月号より

社長!!あなたの使命はなんですか?|月刊BOSSxWizBiz
新社長に直撃! 経営者に課せられた重圧と責任

300人超の新社長

今年上半期、上場企業で行われた社長交代は310人に及んでいる。全上場企業3698社の約1割が新社長になったということだ。

社長交代の理由は、企業によって異なるものの、大きく分けると、任期満了、業績不振からの経営刷新、若返り、M&A、不祥事の引責、創業者からの事業承継など、いくつかのパターンを見ることができる。それぞれに新社長は使命があり、任期中はその実現に向けた取り組みを進めていかねばならない。

縄文アソシエイツ社長の古田英明氏。9月19日には新著『次世代トップリーダーの座標軸』(PHP研究所)がリリース。

「どんな立場であれ、資本主義の切り口で言えば、経営者の使命は結果的にBS/PLをよくするということに集約されます。すごく抽象化して言えば、前任よりもいい会社にするために就く。それ以外にはありません」

こう語るのは、カリスマヘッドハンターで知られる縄文アソシエイツ社長の古田英明氏。多くの経営者や経営者候補と面談し、大手からベンチャーまで様々な企業の社長交代を目の当たりにしてきた。その古田氏いわく、もっとも難しい社長交代が創業経営者の次の社長だという。

「創業経営者は、基本的に天性の才能で会社を成長させています。まだ若いうちは、10年、20年は人事も好きなように決めたほうがいい。そうしないと企業の基盤が作れません。しかし、それ以上長く続けようとすると、ワンマンが弊害となって、人が育たず、残っているのはイエスマンだけというケースが増えてきます。2代目以降は、息子さんであれ、プロパーであれ、外部招聘であれ、ある種の組織的な決定ができるようにしないと、会社の継続性には繋がらない。言ってみれば、1人の芸術家が作った作品を、これからは5人がかりで作っていくということですから、非常に難しい役回りになります。

2代目からは、バトンランナーだという認識が必要です。それが上り坂なのか、下り坂なのか、競合はどのような状況なのか、与えられた条件は異なりますが、次のランナーにどう繋ぐかで、社長としてやるべき使命が定まってくると思います」

社長就任には、親子の事業承継もあれば、100年企業で6年任期と期間が定まっているような場合もある。それぞれ社長の役割は異なってくるが、どちらの場合にも共通して背負わなければならないのが、社長としての責任になる。企業としての不祥事が発覚した場合、辞任するしないにかかわらず、責任を取るのは社長、あるいは経営陣のつとめだ。

「大企業であってもベンチャー企業であっても、事故やコンプライアンス違反は起こる可能性はあります。その事故に対して、隠蔽ではなく、どう処理、対応をしていくのか。それは組織としての成熟度が問われることになります。創業経営者の場合、本能的に不祥事に発展する前に、その事業をやめようと決断できる可能性がありますし、老舗企業であれば、どう対応していくのか、長年の歴史で培った組織力と知恵で乗り越えていくことができるかもしれない。新社長は、自分の会社の組織力はどうなのかを把握し、そこから予見することで、5~6年、長い方で10年とか、その間にすべきことがわかるでしょう。

また、不祥事で前任が辞任した場合でも程度問題があって、10年、20年後に、どうということはないものもあれば、2度繰り返せば会社の存続が危ういというものもある。後者なら徹底的に改善するしかありません。そのどちらかで新社長の役割も決まってきます」

リーダーの心構え

新社長に限らず、経営者のリーダーとしての資質やあり方は不変のものがある。結果を出す職務遂行能力は当然のことながら、能力以上に問われるのは人間性だ。組織のトップに足るだけの器の大きさ、品格がなければ人は付いてこない。いくら数字を追っても、笛吹けど踊らずでは組織は成長しない。

「リーダーとしての心構えで一番大切なことは、いざとなったら『私』を捨てられるかどうかです。『リーダーになってはいけない人』とは、ひと言で言えば、そのポストをステイタスと考える人、そのポストを踏み台にして、次へのステップにしようと考える人です。組織のトップに立つということは、組織の命運を握るだけでなく、社会に対しても一定の影響力を行使することになります。利己的な目的のために仕事をする人を、『リーダー』とは呼べません。

社長までになる人に特徴的なことですが、『俺が俺が』という気持ちが強い人が多い。でもそれは必ずしも悪いことではなく、こう経営しなければ先はないという自分の意志や思いがあります。しかし、その自分の天性に抗って、いざとなったら自分を捨てられるかどうか、社長に求められる要素といえば、そこでしょう。命がけで仕事をするという次元を超えて、『公』のために自らを捧げる覚悟があるかどうか、リーダーは常に問われています」

また、優れた経営をした経営者であっても、後継にバトンを渡すことができず、何十年も経営に残る人も珍しくない。創業経営者ではないにもかかわらず、長くそのポジションに固執する大手企業の経営者もいるのが実情だ。最近ではどこかのスポーツ協会にも見られた光景だ。

「地位のある人にとって、最も難しいことの1つが出処進退の『退』、引き際です。企業とは、ずっと継続していくことを前提に経営がされているわけですから、次世代に承継することに躊躇があってはいけません。最後に抑えなければいけないのは、『俺がもっとやったほうがいいんじゃないか』という気持ち。優れた経営者であればあるほど注意が必要です。自制心を失い、執着心をむき出しにしてしまうと、後に『晩節を汚した』と評されるようになります。社長は、いい引き際できれいに退くつもりで、いい仕事をすることが大切だと思います」

就任した時から、いかに引き際を考えるのか。いつどのように職責を離れるのかは、経営者は常に考えておくべき最後の経営判断となる。

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WizBiz代表・新谷哲の著書「社長の孤独力」(日本経済新聞出版社)

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