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経営者インタビュー

2016年7月号より

「モノ比較」から「コト比較」へ 一段の飛躍は次世代に
田中 実 カカクコム社長

田中 実 カカクコム社長

たなか・みのる 1962年5月6日生まれ。開成中学、高校を経て、86年東京外国語大学ロシア語学科卒。同年三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。2001年9月にデジタルガレージに転職。02年カカクコム取締役に就任。CFOや副社長を経て、06年6月より現職。これまでに乗り継いだクルマはすべてマニュアル車といったこだわりも。
(2016年6月の株主総会後に副会長に就任予定)

価格比較サイトの価格.comと飲食店の検索・予約の食べログが2大看板サイトのカカクコム。売上げ、収益ともに階段を1段ずつ上るがごとく最高益を更新し続ける。同社の田中実社長は今年で社長在任10年、来年はカカクコムの創業から20年という節目で、5月11日には後継者も発表した。今後、どんな企業進化を遂げようとしているのか、田中氏に聞いた。

決済までは手がけない

―― まずは、価格.comと食べログの2大看板サイトの足元の状況と今後の戦略ですが、売上げ構成比で言えば前者が5割、後者で4割だそうですね。
ここ数年、価格.comの年率の伸び率は7~8%と、一桁の後半ぐらいに落ち着いていました。これは消費税増税の影響もあって、耐久財の消費も若干、踊り場で推移してきたことも影響があると思います。

むしろ、この4月からスタートした電力の自由化、あるいは来年のガスの自由化など、インフラ系の自由化が行われることで、価格.com全体としてはこうしたサービス分野の価格比較が活発になり、向こう2~3年は2桁の成長に復帰できるのではないかと。実際に手で触れる耐久財分野は、当社もだいぶ掘り尽くしていますけど、電力やガス以外でも、たとえば住宅ローン比較はマイナス金利なども相まってサイト訪問者がすごく増えています。ですから、金融やサービス、こうしたジャンルがしばらくは牽引役になると考えています。

―― 食べログはどうですか。
数年前から、ただ単にレストラン検索とか人気店ランキングを見るだけではなく、レストラン側に対してオンライン予約の仕組み、あるいはそれを支える台帳システム(=予約台帳サービスの「ヨヤクノート」)を提供していく。もともとそこを目指していたのですが、レストラン検索は、たとえば米国ですと「Yelp」というサイトにまずアクセスし、さらにオンライン予約しようとすると、「オープンテーブル」というサイトに飛んで、そこで予約する。つまり2つのサイトをまたがなきゃいけない。

これはとても不自由な話で、食べログというブランドの中で統合したシステムとして提供できれば、日本の消費者は、より便利にレストラン予約できますから。我々としても、来年度の下期ぐらいになるかもしれませんが、課金システムも入れて少しマネタイズできれば、食べログはさらに伸びが加速できるんじゃないかと。価格.com、食べログ併せて総事業比で9割という数字は偏りが大きいので、向こう3年ぐらいかけて、残り1割の事業を2割まで引き上げたいと思っています。

伸びが大きい「WebCG」

―― この4月には、飲食店向け予約サービスでKDDIと組み、「オープンリザーブ」という合弁会社もスタートしています。決済にも関わっていくのでしょうか。
いえ、決済には触りたくないですね。理由は2つあって、グループ会社であるデジタルガレージが、「イーコンテクスト」という決済企業をすでに持っていますので、わざわざ二重投資する必要はありません。カカクコムという会社が昔から志向しているベクトルとしても、あまり金融とか決済とかには深入りしないんです。

かつて、金融界で多少ながら関わらせていただいた身(=田中氏は三菱銀行出身)からすると、ネットでの事業とはいえ、金融や決済に絡む事業はそんなに軽いビジネスではなく、投資も重いです。カカクコムはバランスシート上、大きな資産を持つような会社にはならないほうがいいと思っていますので、決済のところは我々自身でがっちり何かを作るとか、あるいは持つというのは考えてないですね。

看板サイトの価格.comでカバーするジャンルも耐久財からサービスまで年々拡大している。

―― 価格.comと食べログ以外の事業を伸ばす上で、どんな構想がありますか。
たとえば「WebCG」(=自動車専門誌の「CAR GRAPHIC」のインターネット版)を一昨年の秋、日経新聞社さんから買収したんですが、それからの1年でものすごい伸びを示したんです。利益額は開示していませんが、それまでの3倍ぐらいの利益水準になっています。

もともと、CGは二玄社さんから発行され、Web版だけ日経さんに売却していたのですが、(クルマ好きの)私は、もう何年も前から「絶対にWebCGはほしい」とラブコールをかけてきました。カカクコムの社内には私以外にもクルマ好きがたくさんいますので、こうしたほうがいい、ああしたほうがいいという提案がたくさん出てきて、あっという間に人気化し、トラフィックもうなぎ上りでした。我々は何百億円という大規模なM&Aはやりませんが、小さく買って大きく育てるという戦術を取ってきましたし、WebCGでまた1つ、いい成功事例ができました。

―― とはいえ、たとえば日本はまだ、海外に比べるとネット通販比率なども低いのが現状です。もちろん、今後はそれだけ伸びしろがあるということでもありますが。
世界の中で、消費全体に占めるインターネット比率が高いのは英国で、15%あります。そうなった要因はいくつかあると思いますが、たとえば小売店には大したものがなかった。あるいは英国は天気が悪い日が多いので、重いモノを買って帰ると雨でびしょびしょになってしまう。
一方で米国は、昔からテレビショッピングがすごく盛んだったんですね。というのは、州をまたいで、たとえばテキサスに住んでいる人がカリフォルニアから買うと州税がかからないんです。アマゾンなんかもそれで広まったところはありますが、昔からあるリアルの店舗に行ってモノを買うという以外に、テレビで商品を見て、電話して買うという行為が非常に一般化していたので、オンラインのシフトにもうまく移行していったわけです。

翻って日本では、新宿でも渋谷でも池袋でも、デパートや家電量販店がたくさんあるし、そんなにオンラインに頼らなくていいとか、オンラインにしたほうが得だという感覚があまりなかったと思うんです。

ここから日本がオンライン化比率を圧倒的に高めていくキーワードは高齢化ですね。日本という国としてはあまり喜ぶべきことではないかもしれませんが、私が住んでいる家の周りも非常に高齢化が進んでいて、単身者や夫婦2人の高齢者は、食材を買ってきて料理を作るエネルギーもないし、お弁当を届けてもらったほうが得だと。年を取ると量販店で重いモノを買って帰ることがだんだんなくなってきますしね。

―― あまり大きなM&Aはしないということでしたが、無借金経営のカカクコムとしては、このマイナス金利下、資金の運用などはどう考えていますか。
基本、銀行の金利を比較しながら預けてはいますが、運用というところでは、そんなに気にしてないです。カカクコムが持っている現金は、200億円から300億円の間をいったりきたりという感じですが、そこで仮にうまく儲けることができたからといって、会社の評価に対してほとんどプラスはないですから。投資家からすれば、自社株買い、あるいは新しい事業に投資をして、そこから新しいキャッシュを生むビジネスを生んでほしいというのが偽らざる気持ちだと思いますので、必要十分なキャッシュは持ちますけど、それ以上は持たないというのが一番、重要です。

結婚関連の商材にも注力

―― 最近はAIやIoT、あるいはウーバーや民泊、シェアリングエコノミー、フィンテックなどがこれからの時代のキーワードのように喧伝されますが、こうした分野において、カカクコムとして何か事業化の可能性はありますか。
ウーバーは、我々が入り込んでサービスや料金を比較するようなことは、あまりイメージしていません。一方で、民泊となると日本に来てから決める人はあまりいなくて、訪日前に決めるわけです。

いま当社では「プライス・プライス・ドットコム」というブランド名で、価格.com と同じ比較サイトをインド、タイ、フィリピン、インドネシアで展開しており、すでに700万人以上のユーザーがいます。

そのサイトに民泊というコーナーを設けて、それぞれの国の現地語で、東京に来た時のホテル検索や予約サービスを提供できたらすごく面白いですね。私もかつての銀行マン時代、駐在員で海外におりました頃、出張の時はテキサスから、あるいは台北から東京のホテルをブックしないといけないわけです。これは非常に面倒くさい話で、旅行代理店を挟むと宿泊代も高くなってしまいますし、そういうところをお手伝いできたらすごく嬉しいですね。

―― 必然的に、モノ比較よりサービスなどコト比較が多くなります。
今後はイベントなどにも関わっていきたいと考えています。たとえば結婚式関連。新婚旅行となれば当社の「フォートラベル」のサイトを使っていただけるでしょうし、生命保険比較なども入ってくるでしょう。家電製品の買い替え需要や新居の家賃比較、あるいは住宅ローンの比較など、我々が持っている商品やサービス比較が一気にピークに達するわけですから。なので、結婚関連自体で儲けるというよりは、カップルが結婚式を決めて、その後でいろいろな消費をする時に当社を派生的に使っていただけるような仕組み作り、そこにはすごく興味があります。

もう1点、ライフタイムで見ていった時、青少年に対するサービスが我々にはないんですね。オンラインゲームのようなサービスは一切、やっていませんし、教育ツールや受験アプリみたいなものもありません。最近、シニア向けの介護施設やデイケアセンターのサービス比較を、東京都だけに限定して展開しているんですが、若い世代からシニアの方まで、ライフタイムをずっとサポートするという意味では、働く前の世代とリタイア後の世代をカバーしていくことも大事です。

―― カカクコムは毎期毎期、売上げも利益も一歩一歩階段を上るがごとく、きれいな増収増益を続けて、最高益も更新し続けています。
カカクコムのビジネスモデルは、とにかくコツコツ積み上げていく形なので、その傾向は今後も継続していきます。価格.comと食べログ以外の事業比率が上がってくれば、カカクコムという社名のままでいいのかどうかという議論も出てくるでしょう。3年後には、かなりリアリティのある課題として社内で検討する時期に差し掛かると思います。

―― 最後に、今年6月で社長在任10年になります。田中さんはまだ54歳になったばかりですが、後事を託す、畑彰之介取締役の体制についてはどう考えていますか。

この4月に、今年も15人ぐらい優秀な新入社員を迎えました。ですが、企業って大きくなるとどうしても保守志向に走って、優秀な人を無難に採りにいくでしょう。でも、エネルギーや野望のある人、少しぐらいはクセのある人も必ず採らないと。実際、当社でもたまに、秋葉原の現金問屋からヘッドハントして価格.comのサイトを見てもらったりしています。現場感覚で、汗くさい、泥臭いことを厭わない人を一定比率は入れておかないと、組織はダメになるものなのです。

次を担う畑君には、最適な人材ミックスを探りながら会社全体の陣容を見ていってほしい。戦争するためには、兵隊もいないと、大本営だけでは戦えません。彼はそこを理解している人ですから、安心して任せられます。

(聞き手・本誌編集委員・河野圭祐)

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