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特集記事|月刊BOSSxWizBiz

2018年10月号より

長生き商品&長寿ブランド|月刊BOSSxWizBiz
あらゆる環境で気軽に楽しむウォークマンが広げる音の感動

創業者の鶴の一声

ソニーが「ウォークマン®」を世に出したのは、いまから39年前の1979年のこと。来年には40周年になる長寿ブランドだ。

この初代ウォークマンの「プロジェクトリーダー」はソニー創業者で、当時会長 兼 CEOだった盛田昭夫氏。外で音楽を聴くという携帯音楽プレーヤーの生みの親の1人である。きっかけはもう1人のソニー創業者の井深大氏が、自ら飛行機内で音楽を聴くため、小型でステレオ再生ができる機器の開発をソニーの技術者に依頼したところから始まる。この試作機を使ってみて商品化を決断した盛田氏は、従来の小型カセットテープレコーダーから録音機能とスピーカーを取り除き、代わりにステレオ回路と小型のステレオヘッドホンジャックを搭載するといった、既存技術を応用して新しいスタイルを創造する形でウォークマンを世に送り出した。

録音機能がない機器が売れるわけがないという社内外の反対はあったが、盛田氏は全責任を負うことを明言し、ゴーサインを出す。結果的にウォークマンの「“いつでも”“どこでも”手軽に音楽を楽しむ」コンセプトに加え、そのファッション性は若者を中心とするユーザー層の絶大な支持を受け、大ヒット商品へと成長した。

それから約40年、ウォークマンは世界的なブランドとして展開されているが、外で音楽を聴くという体験の提供から、さらに一歩踏み出し、新たな世界観を構築しはじめている。ソニービデオ&サウンドプロダクツでウォークマンのプロジェクトリーダーを務める佐藤朝明氏は次のように語る。

ラインナップを前にウォークマンの音へのこだわりについて語る佐藤朝明氏(左)と佐藤浩朗氏。背景に並ぶのは歴代ウォークマン。

「ウォークマンのミッションとして、世の中に対して何をしなければいけないのか。音楽を聴く環境をどれだけ広げられるのかが1つの大きなポイントだと考えています。初代ウォークマンは外で音楽を聴くという新しい体験を提供し、その環境を築いてきましたが、いまや外で音楽を聴くことは当たり前になっています。それに対して、何ができるか。

いまウォークマンでは、ハイレゾ音源など高音質で音楽を楽しめるモデルもありますし、Wシリーズではジョギング中に聴くだけでなく、水泳をしながら聴くことができます。ありとあらゆる環境で音楽を気軽に楽しめる世界をウォークマンが広げることは、メッセージとして世の中に示していかなくてはいけない。私たちは音楽を聴くライフスタイルの敷居を低くしていかなくてはいけません。小学生ではハイレゾのウォークマンは買えないかもしれませんが、一番小さいSシリーズなど、音楽を聴く最初のステレオとして、音楽を聴く楽しみに気づいてもらう。そこが重要かなと思っています」

ソニーはウォークマンで携帯音楽市場を牽引してきた存在だ。しかし、スマートフォンで気軽に音楽を聴ける時代になり、デジタルオーディオプレーヤー自体が危機的な状況に陥りつつあった。ところが、である。現在はスマホで聴くユーザーとデジタルオーディオプレーヤーで聴く層に棲み分けが起こってきており、スマホからの乗り換えも確実に増え始めている。そのきっかけとなったのがハイレゾの登場だ。

455グラムのウォークマン

スマホのおかげで音楽が身近になった人が増え、ヘッドホン・イヤホン市場は急成長。一方で、音楽が身近になればなるほど、スマホの音質に不満を抱く層が増えてきている。その不満にハイレゾで応えたのがウォークマンだった。

「2013年にハイレゾ対応のウォークマンを出しましたが、価格は税込み約7万円と従来のものとは大きく変わるものでした。それまでのウォークマンは軽く小さく作って、高くても4万円、下は1万円を切る価格。音質のためだったらコストという観点は1回外していいから、何をしたら音がよくなるのかを検討してもらいました。

約7万円もするウォークマンが本当に売れるのか、心配だったのですが、発売してみたら予約が殺到して3~3カ月ほど品切れが続くほどヒットしました。音のよさを、お客様は求めていたことがわかったんです。15年には約12万円のモデル、16年にはさらに音をよくしたフラッグシップモデルとして約30万円のウォークマンを出しましたが、それでも手に取っていただける。このモデルは金色のシャーシで、それは無酸素銅の塊から削り出してつくり、金メッキをしている。基板がこのシャーシにきちんとねじ止めされているところがポイントで、ソニーがホームオーディオで培ってきた技術などもポータブルに適用して、究極の形に作り出しています」(佐藤朝明氏)

ウォークマンは創業者の熱意から始まった。

フラッグシップモデルのNW-WM1Zの重量は約455グラムと、携帯しづらい数字になっているが、購入者の評価は高い。

「ソニーストアなどでWM1Zは重いよねという話をしていると、他のお客様から『大丈夫ですよ』とポケットからWM1Zが出てくる。重さに対して、この音質なら納得できると、持ち歩いてくださっている方は多いです。15年にアルミシャーシのZX2を約12万円で出しました。その後の検討でアルミの純度を上げてみたら、音はよくなるのですが、柔らかくなって削りにくくなることがわかりました。削りにくいのであれば銅で作ってみようとなったのがWM1Zです。金色もデザインの金色ではなく、接触抵抗を低くするための金メッキで、他の材質(色)を使うと音が変わってしまう。サイズも大きくなりましたが、電池の性能が上がったこととメモリの容量がすごく上がったことで、ハイレゾという大きなサイズのファイルを持ち歩けるようになりました」

こう語るのは商品設計でエレクトリカルエンジニアを担当する佐藤浩朗氏。ウォークマンの音のスペシャリストだ。ソニーとしては「ソニーは、ハイレゾ。」を謳い、戦略的にグループとしてハイレゾ商品のラインナップを揃えている。ソニーはもともとオーディオからヘッドホンまで自社で開発し、さらにコンテンツも所有していることで、ハイレゾコンテンツの提供側にも回ることができる。いい音の追求は、聴く側にとって初めての体験に繋がっており、ソニーの新しい顧客開拓に繋がっている。

「ウォークマンではアンプにこだわりがあって、『S‐Master HX』と呼んでいるフルデジタルアンプをウォークマン用に半導体に落とし、ポータブルに実装させています。アンプと言っても周辺回路が重要で、上のクラスになるほどリッチな設計になっていますが、ウォークマンのいいところは、フラッグシップ用に開発した技術の中で小さくて軽くできる部分を汲み取って、Aシリーズなど他のクラスにも展開しているところで、シリーズ全体の音がよくなっています。音質に関わる部分はホームオーディオのハイレゾ商品群の部品と共通で使ったりしていて、非常に連携は強いです」(佐藤朝明氏)

CDの音も“別モノ”に

ハイレゾ対応のウォークマンだが、購入する層は20~50代まで幅が広く、聴いている音楽もJポップやアニメソングと多様だ。さらに80年代、90年代に買ったCDを改めて聴き直す人も多いという。

「CDも大切にしなくてはいけないと思っていまして、CD音源もきちんと再生ができてこそのハイレゾプレーヤー。実は多くの人がCDのファイルをMP3などに圧縮して取り込んで聴いているため、CDの持つ本来の音を聴いていない場合が多いんです。ハイレゾ対応の性能があるからこそ、CDをロスレスのフォーマットで取り込み直すことでCDの音も細かい音までちゃんと聴くことができます。従来では考えられなかったことですが、いまはAシリーズでも、CD系とハイレゾ系のサンプリング周波数にそれぞれ最適化したクロックを2個積んでCDもハイレゾも楽しく聴けるようにしています。入門機だからこそ、マジメにちょっとでもいい音を届けようと取り組んでいます」(佐藤浩朗氏)

記者も体験したが、従来のCDの音源がまったく違った聴こえ方をする。この感動はやはりソニーの上層部にもしっかり届いた。

初代ウォークマン(左)とフラッグシップモデルの「Signature Series」。

「約30万円のモデルは、さすがに少々やり過ぎたかなと思っていました。試作機をつくって上の者に聴いてもらったところ、すごいな、でも重いなと(笑)。最終的には社長の平井(一夫氏、現会長)のところまで行って、『すごいな。ぜひ、やれ』と。ゴーがかかった時点ではコストは見えなかったのですが、音って本当に説得力がある」(佐藤朝明氏)

初代ウォークマンも商品化ありきの開発だったとか。ソニーのこだわりも健在だ。

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