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特集記事|月刊BOSSxWizBiz

2017年2月号より

相続税の大増税から2年─いまどきの相続事情|月刊BOSSxWizBiz

もはや税務署に筒抜け
個人の所得と資産

2015年1月1日から相続税の基礎控除や小規模宅地等の特例の見直しなどを含んだ改正相続税法がスタートした。さらにマイナンバーの導入後の16年1月からは相続税の申告の際、17年からは確定申告、贈与税の申告などでもマイナンバーの記載がはじまり、所得については、ほぼ税務署に筒抜け状態になっている。

加えて18年12月31日までには銀行や郵便局の預貯金の口座、債権や株式取引に使う証券口座についてもマイナンバーの通知をしなくてはならず、個人のお金の流れ、資産もガラス張りにされてしまうのだ。

そんななかでも、まだ相続に対する関心が薄い人も多いようだ。

フジ相続税理士法人 代表社員 髙原 誠さん

「自分や自分の親にもしものことがあったときに相続税がかかるか、どのくらいかかるのかを知らないという方もまだまだ多く、対策している人としていない人の差が大きいですね」と話すのは、相続を専門に扱うフジ相続税理士法人代表社員の髙原誠税理士である。

相続税の改正によって、これまで相続税の対象外の人も申告が必要になるとされ、東京23区では4人に1人が対象になるといわれている。

もちろん、関心が薄い人がいる一方で、相続セミナーはいまも活況だ。

「セミナーに来る人は増えています。相談で多いのは、自分にはどのくらいの相続税がかかるのか、また家族間でもめているがどうしたらよいかという質問です。近い将来の相続を意識している人のなかには、小規模宅地等の特例、配偶者の税額軽減といった知識をお持ちの方も多く、そうした制度についても細かく質問されてきます」

では、15年1月から施行された改正相続税制のおさらいをしておこう。

この改正でのもっとも大きな変更点は、基礎控除が5000万円+(1000万円×法定相続人の数)から、3000万円+(600万円×法定相続人の数)に減ったこと。そして、相続税の税率が細分化されたことの2点だ。

具体的には、法定相続分に応ずる取得金額1億円超の税率が2段階から4段階になり、6億円超の最高税率が50%から55%になった。なお、贈与税も10%~50%までの6段階から8段階に細分化された。

一方、被相続人が住んでいた居住用宅地に相続人が引き続いて住む場合等に80%の評価減がされるという小規模宅地等の特例は、適用限度面積が330平方メートル(約100坪)に拡大、特定事業用宅地等と特定居住用宅地等の完全併用も可能となった。また、事業承継税制の見直しなど、控除や特例、制度の簡素化も行われた。

狙われる資産1億円
自分の財産をどう守るか

この制度改革では、「資産規模としては1億円前後ぐらいの層に一番悩まれている方が多いように感じます」と髙原さんがいうように、いわゆるミリオネアといわれる富裕層が納税対象者のボーダーになると見られている。

「たとえば、相続人が2~3人であれば基礎控除は4200万~4800万円。土地の占める割合にもよりますが、小規模宅地等の特例を使えれば、相続税がかからない場合もあります。しかし、相続人の数や資産の種類によっては相続税がかかってきます」

では、「資産1億円」という人は、日本に何人ぐらいいるのだろうか。

16年11月、野村総合研究所が、「2015年における純金融資産保有額別の世帯数と資産規模」を各種統計資料やアンケートを使い調査、その結果を発表した。

これによると、日本の15年の純金融資産1億円以上の「富裕層」は122万世帯。預貯金、株式、債券、投資信託、一時払い生命保険や年金保険などの「純金融資産」の総額は272兆円になるという。また、日本の総金融資産は1402兆円で、1億円以上の富裕層が持つ総金融資産の割合は全体の19.4%になる。

13年の前回調査と比較すると1億円以上の「富裕層」は20%、5億円以上の「超富裕層」は35・2%、両方を合わせた世帯数では21万世帯、保有資産は31兆円増加した。また、5000万円以上1億円未満の「準富裕層」、3000万円から5000万円未満の「アッパーマス層」は純金融資産総額を増やし、合計額は21兆円の増加になるが、世帯数では準富裕層はマイナスになっている。さらに3000万円未満の「マス層」に目を転じると、総金融資産は64兆円増加しているものの、世帯数が9.7万戸マイナスで、このことからも人口の減少が着実に始まっていることをうかがわせる。この調査は、あくまでも金融資産だけの動向だが、これに不動産が加わると、その様相は若干違ってくる。

前の野村総研の調査より1年古いデータになるが、クレディ・スイスの「2015年度グローバル・ウェルス・レポート」(15年11月発表)では、日本の1億円以上の資産家(ミリオネア)は212万人。その資産総額は1900兆円あまりと推計。1億円以上の資産家の総数ではアメリカ、イギリスに次いで世界3位だ。また、この調査ではこうした日本の富裕層は、20年には359万人に増えると予測されている。

その一方で、世界的に格差が広がっているといわれるなかで、日本の所得格差は先進国のなかでもっとも小さくジニ係数は63%、日本の成人人口の60%の6200万人は「中流階級」に分類され、総資産の49%をこの階層の人が占めている。その結果、資産1億円以上の富裕層の数は世界3位にあるが、資産50億円以上の超富裕層の数になると、世界8位、先進7ヵ国6番目になる。

企業オーナー、地主と税務署
それぞれの“相続税対策”

では具体的な相続税対策にはどのようなものがあるのだろうか。

「ケースバイケースですが、暦年贈与の非課税枠110万円を利用した生前贈与がオーソドックスな方法です」(髙原さん)というように、最初に考えたいのがこの生前贈与だ。

実際、先の野村総研のレポートでは、企業オーナーの富裕層、超富裕層の43%は、生前贈与は「したことはないが関心がある」というところまで含めると76%で、気になる対策といえる。その一方で、別のアンケートでは31%が財産の大半を生前贈与することに抵抗を持っており、どこまでを贈与するかは微妙なところだ。

もっとも、この調査は企業オーナーが対象で、そこには事業承継が関係してくる。相続財産には自社株も多く含まれるため、贈与しやすい一方で、経営権は渡したくないというような思いも垣間見える。また、サラリーマンであれば、すべてを贈与してしまうと自らの老後資金への不安も残るため、なかなか贈与を進めにくい部分もあるようだ。

次に相続財産に土地が多いケースにはどうか。髙原さんはこう話す。

「賃貸マンションなどの収益物件を建てるというのが一番わかりやすい方法ですが、大きな建物を1棟建てるだけでなく、小規模な物件を複数棟建てて評価単位を分けるという方法もあり、その場合遺産分割もしやすくなります。また、広大地評価の適用を検討するなど、不動産は資産を圧縮する方法がいろいろあります。たとえば、2つの道路に挟まれた土地の場合、一部をコインパーキング等にして評価単位を分けることで、路線価の高い道路に面している部分を小さくし、評価額を下げることで相続税を抑えることも可能です。

そのほかの対策としては買い替えもあります。つまり、収益性の低い土地を売却し、もっと利回りのよいところに買い換えるということです。なお、小規模宅地等の特例の貸付事業用宅地等に該当すれば200平方メートルまで50%減額になりますが、平方メートル単価の低い土地で50%減の適用を受けるよりも、単価の高いところで受けた方が有利だと言えます」

オーソドックスな節税対策とはいえ、いまも根強く利用されているのが生命保険をつかったものだ。

「マイナス金利の影響で、一時払い終身保険については販売中止も増えていて使いづらくなっています。しかし、単に自分(親)を被保険者とする生命保険だけでなく、保険金受取人を自分(親)にして子どもに死亡保険を掛け、自分の死後はその子どもが保険契約の権利を引き継ぐというやり方もあります」

法人を使った節税対策は、むしろ清算する人も増えているという。

「法人化しても、その会社が儲からなくては、あるいは法人の存在意義が家族に理解されなければ意味がありません。相続をきっかけに会社を解散するというケースも目立ちます」

一方、税金を取る側の税務署側は、この相続税引き上げで変わったところはあるのだろうか。

「改正後、税務調査が増えたというような実感はありません。税務署のマンパワーの問題もあると思いますが、税率の高いところから入りやすい傾向はあるように思います。

1つの目安として相続税納税額が1000万円以上ですと、税務調査が入る可能性について触れるケースもありますが、これも一概には言えません」

一般的に調査が入った場合、8割方は追徴課税の対象になるといわれている。しかし、「税務調査で問題となるのは、多くが名義預金などの金融資産です。きちんと申告しておけば、心配することはありません」とのことだ。

これからの相続に
欠かせない考え方とは

相続税の引き上げからおよそ2年、さまざまな相続税対策が出され、ハウスメーカーや生命保険会社などによるセミナーも数多く開かれ、いまなお多くの人が集まっている。しかし、「アパート建設や、タワーマンション、信託、生命保険などいろいろな相続対策が出てきましたが、そもそもの資産状況や正確な予想相続税額を把握しないまま対策に手をつけている方も多いように思います」と髙原さんはいう。とはいえ、多くの相続に携わるなかで、「もっと早く聞いておけば、やっておいたのに」という言葉をしばしば聞くという。

「相続財産が増えれば、生前贈与、生命保険、不動産活用…とその対策の方法も増えていきます。そして、相続税を一切払いたくないという方のなかには、多額の借入れを伴う不動産活用を実行する人もいます」

しかし、そこで重要なのは、配偶者や子どもたちといった家族の思いだと、髙原さんはいう。

「相続税対策でアパートを建てた方で、その後、奥さんが相続され、それを子どもが引き継ぐときに、その奥さんが『相続税対策のために借金をしてアパートを建てたけれど、後年はその借金の返済とアパートの修繕費のやりくりに追われました』と話されたんです。アパートを建てたことで相続税を減らすことはできたんですが、果たしてそれが家族にとってよいことだったか……」

節税対策としては成功でも、本当に家族のことを思った相続対策としては、疑問が残る対策もあるという例といえるかもしれない。

そのうえでこれからの相続対策を考えるときに欠かせないのが、介護問題だと髙原さんは指摘する。

「相続対策はすべてそうですが、親だけで考えてもダメ、子どもたちだけで話してもダメな問題です。親子両方で取り組んではじめて効果が出ます。親を相続という舞台に引っ張り出すのは大変ですが、介護はだれしもが見過ごせないもので、相続はその地続きにあります。残りの人生を幸せに過ごし、円満な相続をするためにも、介護状態になったらどこでだれに世話してもらいたいか。子どもは親が介護状態になったらどう取り組むか、双方の意思疎通からはじめてみてはどうでしょうか」

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