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2016年4月号より

社長交代発表から1年 本当にホンダは変わるのか|月刊BOSSxWizBiz

ホンダジェット納入開始も…

ついにホンダジェットの納入が始まった。中央が八郷社長。

2015年のクリスマスイブ、12月24日にホンダが独自開発した小型ビジネスジェット機、「Honda Jet(ホンダジェット)」の引き渡しが開始された。

なぜホンダが飛行機を作るのか、前社長の伊東孝紳氏は航空機事業についてこう語っていた。

「三次元のモビリティである航空機業界への参入は、創業者・本田宗一郎の夢であり、ホンダはその夢の実現に向けて、ジェットエンジンと機体の両方を開発するという、いまだかつてないチャレンジを長きにわたって続けてきました」

実際、本田宗一郎は1962年の社内報で「軽飛行機を開発しようと思っております」と社員に伝えている。しかし、当時はまだ一介の二輪車メーカーであり、四輪の発売もしていなかった。そんな時代に航空機業界に参入するなど、夢のまた夢のような状況だったろう。

現在、ジェットエンジンの開発は航空機エンジンR&Dセンターを中心に行われているが、ホンダが本格的に飛行機の開発に取り組み始めたのは86年のこと。和光基礎技術研究センター発足と同時に航空機用小型ガスタービンエンジンの研究をスタートさせている。

基礎技術研究センターでは、ジェットエンジンだけでなく、エレクトロニクス、新素材、コンピュータ科学といった、当時としてはバイクやクルマに結びつかないような分野の研究が進められていた。ここから生まれたのが、ロボットの「ASIMO」であり、被災後の福島第一原発で運用されている「災害対応ロボット」、ナビゲーションシステムの「インターナビ」、環境分野の「太陽電池」や「燃料電池」等々、数え上げればキリがない。しかし、研究分野には事業化されていないものも多い。数十年後の未来の技術革新を見据えた研究開発という理想がそこにある。新技術をM&A等で買い集めるのではなく、できるだけ自前で開発し、そのノウハウを研究所に蓄積していく“こだわり”は、ホンダならではの精神と言える。

ホンダの事業領域は、とにかく広い。事業の三本柱の1つである汎用製品では、耕運機やポンプ、船外機、除雪機、芝刈機など、さまざまなジャンルの製品を出している。

しかし、ホンダは何をやっている会社なのかと言えば、世間一般的なイメージは「自動車メーカー」が一番に挙げられるだろう。実際、いまや売り上げの約8割が四輪事業になっている。メディア等で取り上げられる機会も圧倒的にクルマだ。そのホンダを代表するビジネスであるクルマが大苦戦している。

品質問題で苦境

2014年のホンダは、欠陥地獄にはまってしまったかのように厳しい逆風が吹いた。13年秋に発売した3代目「フィット」が不具合を連発。発売後約1年で5度のリコールは、消費者の不安を煽るのに十分だった。加えて、タカタが欠陥エアバッグの回収のために世界で約3000万台のリコールをしたことも打撃を与えた。ホンダはタカタ製エアバッグの最大のユーザー。後日タカタからの賠償はあるのかもしれないが、最近は決算発表のたびにリコール関連費用を上乗せし、ホンダの四輪事業の利益率を押し下げてしまっている。

そもそも昔からホンダ車は販売台数のわりにリコールが多く、モータースポーツ流に言うならば「信頼性の低い」メーカーだと言われていた。その理由としては、他社がやらないことを技術導入することで、成熟度に欠ける面があったからだ。それでもホンダファンが増えたのは、革新性のイメージが先行していたからにほかならない。

だが、手がかかるクルマほどかわいいと言われたのは昔のこと。近年のクルマはコンピュータが走っているようなもので、たとえエンジニアでも専門分野以外の修理ができないレベルだ。

さらにユーザー側もクルマ離れとともに技術に関する知識がなくなり、どんな不具合であれ、リコールが多い=信用できないメーカーと認識されるようになっている。クルマ選びに「安全性」を求める比重が高くなっており、たとえタカタの問題であってもホンダ車が敬遠されるのは致し方がない状況だったと言える。

13年から続いた品質問題は、他社に比して次世代技術の遅れが生んだ焦りが原因と言われる。他社に負けない環境対応車を早く市場に出すという、いわば経営の都合で新しいハイブリッドシステムがフィットに搭載された。それゆえ、テスト不足による不具合が頻発。信頼性の検証が不十分なまま市場に出たツケがリコールになって表れたのだった。

信頼回復がなされないまま、昨年6月、伊東氏から八郷隆弘氏に社長交代が行われた。八郷新社長のミッションは明確であり、リコールのホンダという悪しきイメージの払しょくと、低迷する営業利益率を改善し、利益を出せる体質に変えることだ。

品質問題については、Mr.クオリティの異名を持つ福尾幸一氏が本田技術研究所の社長に就任し、いわゆる経営側と開発現場との綱引き役を担当する。八郷改革には〝技術のホンダ〟の再構築が欠かせないだけに、福尾研究所社長の責任は重い。

そこで今回の特集では、八郷ホンダ社長と福尾研究所社長のインタビューをもとに、八郷改革は成就するのか、あらためてホンダの課題とともに検証してみたい。

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