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特集記事|月刊BOSSxWizBiz

2015年8月号より

独自性と収益性を高める 欲しいという思いにさせる商品づくり|月刊BOSSxWizBiz

独自性と収益性を高めろ

前稿で大西洋社長が語った、百貨店復活への道筋の、根幹を成すのが「仕入構造改革」だ。まずはその狙いを、商品統括部仕入構造改革推進部長の望月篤氏に語ってもらおう。

紳士服部門で「ISETAN MEN'S」に携わる落合将一氏。今後はさらにボリュームを増やし、日本全国の三越伊勢丹で「ISETAN MEN'S」を売っていく。

「百貨店が低迷した原因は、独自性と収益性が薄れたためです。どこの百貨店に行っても同じような品揃えで、区別がつかない。しかも返品可能な商品が大半な分、仕入れ価格は高くなり、収益が上がらない。仕入構造改革とは、この2つを解決するために始めたものです」

なぜそのような状況に陥ったかをたどっていくと、バブル時代にまで遡る。当時、百貨店は絶好調。高額商品がいくらでも売れた。そうした状況では、スピード感が重視された。自ら在庫リスクを抱えるより、売れる商品を取引先からどんどん持ってきてもらうほうが収益に寄与する。当然ながらその分、利益率は低下した。一方、仕入れ先はといえば、売り上げを最大化するため、売れている商品をどの百貨店にも納品する。その結果、どの店に行っても同じものしか売っていないという状況になった。

景気が悪化し、売り上げが低迷してから、この傾向にさらに拍車がかかる。リスクを恐れた結果、バイヤーは自分の目利きではなく、仕入れ先から「これが売れてます」と言われた商品を仕入れてしまう。その結果、「他の百貨店との差別化ができないばかりでなく、ショッピングセンター(SC)にも同じ商品が並ぶようになりました。SCは安い土地の上につくられている。同じ商品を売っていたのでは勝負になりません」(望月氏)。

百貨店が衰退するのは当然だった。「独自のコンテンツを発掘、開発し、競合百貨店やSCに対し参入障壁をつくる。さらには商品づくりにダイレクトに関わり、中間業者をなくすことで利益率を上げていく必要がありました」(望月氏)

必要なのはリスクを取ることだった。買取品を増やすことで、これまで持たないようにしていた在庫を持つ。しかも単に仕入れるだけでなく、取引先と一緒になって商品づくりに取り組む。さらには自主企画の商品開発を行う。要は受け身ではなく、自ら動くことで独自性と収益性を高めようということだ。

ではどういう商品で独自性を実現するのか。

「顧客視点に立ち返ろうと考えました。私たちの最大の財産はお客様です。発行するエムアイカードの所有者は300万人います。この人たちのライフスタイルを知り、この人たちに向けた商品づくりを行っていく」(望月氏)

売れ筋価格を自主開発

自社開発商品で、大西社長が例としてよく挙げるのが、婦人靴の「ナンバートゥエンティワン」だ。浅草の靴工場と組んで開発した商品で、プライスラインは1万9000円だが、2万3000円くらいの価値がある商品だ。4年前に3000足でスタートしたが、これまで6万足を販売するほどの人気となった。価格以上の価値を、客が認めたということだ。しかも価格は安く抑えているが、中間業者が入らないため利益は高いという。

こういう取り組みを、今後も推し進めていく。現在15%の仕入構造改革を25%にまで高める方針だ。

「ISETAN MEN'S」の商品群。今後、展開を拡大していく。

「ISETAN MEN'S(イセタンメンズ)」は紳士服部門における自主開発商品で、仕入構造改革の成果の1つだ。伊勢丹の紳士服の牙城と言えるのが、新宿本館の横に立つメンズ館。2003年にリニューアルした時は、大西社長(当時営業部長)が陣頭指揮を執った。イセタンメンズは、その名を冠した紳士服ブランドだ。

誕生したのは、10年以上前だから、歴史は古い。しかし11年に仕入構造改革が始まると、戦略的に規模とクオリティを追求するようになった。そのコンセプトは、「グローバルスタンダードのクオリティをボリュームゾーンで提供する」(落合将一・仕入構造改革担当マネージャー兼バイヤー)。

伊勢丹の紳士服部門でもっとも売れているプライスは、スーツなら7万6000円、ワイシャツなら1万3000円、靴なら2万3000円。イセタンメンズは、その一番の売れ筋価格に真正面からぶつける自主開発商品だ。

「ですから、開発にあたっては、まず価格が先にあります。スーツなら、7万6000円で提供する。その価格の中に、どれだけの価値を詰め込むことができるのか、という考え方です」(落合氏)

そのためには、従来の開発手法とは異なるプロセスが必要だった。

「以前なら、アパレル工場に行き、こちらの希望を伝え、それを商品開発に活かしてもらっていました。そのうえで工場が生地を仕入れ、デザイナーにデザインを任せていた。ところがいまは、自分で生地を仕入れ、パターンナーやデザイナーも探します。それを工場に持ち込んで縫製してもらう。関わり方がまったく異なります。バイヤーがどれだけこだわりと思いを込められるかにかかっています」(落合氏)

リビング部門の今井寛氏は繊維のスペシャリスト。今治や泉州を何度も訪ねている。今井氏のような人材がいてこそ仕入構造改革は可能となる。

最近は三越伊勢丹以外にも自主開発商品に力を入れるところが増えている。しかしここまで徹底しているところは稀有だろう。

しかも、粗利益率は、従来のやり方より10ポイント以上高いという。ただし、三越伊勢丹がここまでできるのは、圧倒的な販売力があるからだ。新宿、日本橋、銀座の基幹3店の売り上げだけで4500億円。この販売力があるから、素材にまで踏み込んでリスクを取ることが可能となる。その意味では、08年の三越と伊勢丹の経営統合があったからこそできた仕入構造改革と言えるかもしれない。

今後はさらに販売量を増やしていく方針だ。商品数を増やすよりも、一つひとつのボリュームを膨らませていく。これまでは基幹3店での販売が中心だったが、地方の店舗へ拡大していく。さらには、今年12月に東京・丸の内に「メンズファッションセレクト」を出店するなど、新宿のメンズ館にはなかなか足を運べないビジネスマンにも訴求していく。ボリュームが増えれば、三越伊勢丹が生地を一括で大量購入することも可能になる。それによって利益率をさらに高めることもできる。仕入構造改革は、さらなる可能性を秘めている。

人気のオリジナルタオル

仕入構造改革を「もっと進めろ」と大西社長から発破をかけられているのがリビング部門だ。

リビング売り場は少し前まで問屋に頼りきりだった。仕入構造改革で、状況は大きく変わりつつある。それに伴い利益率も高くなってきた。

「もともとリビングは問屋商売構造が強い部門でした」と言うのはリビング統括部仕入・EC・中小型・新規担当部長の梅田大輔氏だ。

問屋商売構造とは、メーカーや卸から返品可の商品を仕入れ、販売も任せてしまうという構造で、これでは利益は出ないし独自性も生まれない。さらにはモノづくりができる人が育たないという欠点があった。

それを解消するために始めたのが、「プロダクト・プロジェクト」。

「実用的な定番的ベストセラーを、お取組先(取引先)と一緒につくっていく。我々もお取組先も、お互い収益を上げようというもので、商品はすべて買い取りです」(梅田氏)

タオルを一例に挙げよう。以前なら、問屋やメーカーの商品をセレクトして品揃えし、問屋派遣の販売員に販売を任せていた。それをプロダクト・プロジェクトでは、完成度の高いナショナルブランド商品を買い取り、自社で販売する。これだけで、粗利益率は通常商品より10~20ポイント高くなる。そこからさらに一歩踏み込んで、オリジナル商品(そのブランド名もプロジェクト・プロダクト)を開発すると、利益率はさらに10ポイントほど高くなる。その結果、現在、タオルの中でオリジナル商品の比率は40%を超え、粗利益率は53%になったという。

「問屋やメーカー主導で商品開発をすると、まず最初に納めの値段ありきになってしまう。でもオリジナル商品なら、お客様の喜ぶものをつくるというのが最初にある。そのために、今治(愛媛県)や泉州(大阪府)のメーカーと組み、素材や撚りの回数までこだわってつくっています。今治と泉州はそれぞれ持ち味が違うので、それぞれのいいところを商品づくりに活かしています」(リビング統括部仕入構造改革・新規ビジネス推進担当マネージャー、今井寛氏)

リビング部門の仕入構造改革を進める梅田大輔氏。

オリジナル商品はタオルだけではない。いまでは定番商品の多くでつくられており、品目数(型数)は1000近くになった。それでも、オリジナル商品を含むプロダクト・プロジェクトの売り上げは、リビング全体の4%にすぎない。これを18年度に15%にまで伸ばしていくことが目標だ。

仕入構造改革の成果をより大きなものにするために、三越伊勢丹は今年、組織変更を行った。これまでは基幹3店と残る23店は仕入れを分けていたが、今年から一体化したのだ。紳士服部門のところでも述べたが、イセタンメンズ商品は基幹3店の販売が中心だった。それを全26店舗で販売するための組織変更だ。これにより、バイイングパワーはさらに高まるため、より高付加価値を追求できる。

「スピードを持って、3店で売っているオリジナル商品を全国に波及させていく。そのためのインフラづくりを必死になってやっていますが、大西からはもっと急げと言われています」

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