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特集記事|月刊BOSSxWizBiz

2015年6月号より

わが社のIR戦略(2) 日産自動車 透明性の高い情報を投資家へ 質と速さに強いこだわり|月刊BOSSxWizBiz

高い外国人持ち株比率

田川丈二・常務執行役員

日本の自動車メーカーのなかでは、72.5%と突出して外国人持ち株比率が高い日産自動車。大株主であるルノーは43.4%を保持している。半面、個人株主数も20万人以上と、根強い人気を保ち、毎年行われる株主総会では多くの個人投資家が集まる。独特の株主構成を持つ日産だが、IRに本格的に取り組み始めたのは、2000年ごろからだという。

「本格的にIR部をつくったのは、ルノーと提携してからです。部署をつくってIR専任の人材を配置したのは2000年以降のこと。欧米の企業は、会社は株主によって支えられているものであって、株主が社長の任命権も罷免権も持っていることを意識しています。日本人は、頭ではわかっていても、社長が株主によって更迭されるということが、意識としては高くなかった」

こう語るのは日産自動車常務執行役員の田川丈二氏。05年から日産のIRを担当している。

ルノーとのアライアンス以降、日産に持ち込まれたのがストックオプションだ。その対象は経営陣だけでなく、部長クラスにまで広がった年もあったという。自社の株を持つことは、仕事をするうえでの意識改革にもつながる。

「従来は、自社の株価を知らなかったり、配当がいくら出ているのかを知らない人が多かった。それが、たとえば自分がやっているダットサンのビジネスで成功すれば株価が動くというふうに、影響の大小はあるにせよ、自分たちの仕事が株価に反映するという意識が芽生えるんですね。これはとても大きなインパクトです。当然、国の政策や為替等、いろんな要素で株価は動きますから、あまり一喜一憂してはいけないのですが、少なくとも経営陣の多くの人間が日産の株価の動きに敏感になり、自分は何ができるかを考えるようになる。社内の研修でIRについて話をすることはありますが、幹部候補の研修ほど、関心が高い。同業他社さんと比べても、日産の社員は関心をもっていると思いますね」

日産の株主総会は、毎年1000~2000人が出席している。しかし、平日の午前中開催がほとんどのため、個人株主の100人に1人くらいしか出席していないのが現状だ。株主の声を聞くために、日産は独自の交流を進めている。

「株主総会が終わったあとに、株主と経営陣との懇談会を行います。立食形式ですが、食事をしながら、歓談できるようにしています。実際は、社長のカルロス・ゴーンと一緒に写真を撮りたいという方が多いのですが、ご意見等はIR担当者に伝わります。

また、先進技術イベントという形で、株主を抽選で200人ほど招待して、EVや自動運転車に試乗していただき、いろんな感想やご意見をいただいたりしています。こちらは土曜日に開くイベントですから、若い方も参加していただいています。ここにもゴーンをはじめ経営者はみな来ます。午前と午後に分けていますが、ランチの時だけは重なるようにして、経営陣と食事をとりながら情報交換をする。こちらは200人と人数が少ないこともあって、いろいろ交流ができると思います。

どうしても、ゴーンはカリスマティックな経営者で報酬を10億円もらって……、とのイメージを抱かれていますが、実はとてもクルマのことをよく考え、お客さんのことを考えている。顔は怖いけど非常にフレンドリーであることをわかってもらえる機会になるのではないでしょうか。我々IRの側も、株主がどんなことに関心があるのか、意見を吸い上げるいい機会ですので重要なイベントです」

個人株主だけでなく、海外の機関投資家に対するIR活動も欠かせない。田川氏は、日産のIR活動について、“包み隠さない”ことをこだわりとして挙げる。

「人間誰しも、いいことをアピールしがちです。しかし、投資家はワーストケースに備えるとか、リスクシナリオを求めている。第2のリーマンショックが起きたらどうなるか、また大震災が起きたらどうなるか。そうした事態に、会社がどれだけの備えをしているのかを開示することが重要なんです。私が心がけているのは、悪い情報も必ず伝えること。問題を会社は認識していて、どんな手を打っているのか等、できるだけ透明性をもって情報を伝えることが求められる。これは長年の信頼関係を築き上げないと難しいことです。

投資家は、IRにウソをつかれた、裏切られたことをよく覚えています。仮に、すべてうまくいっていると言っていたものが、翌日問題が報じられるようなことがあった場合、隠していたことが、担当者が代わっても記録は残る。会社の実態を、いいこと悪いことを包み隠さずにちゃんと伝える。さらに、報道される前に伝える速さも必要です。こうした積み重ねが、日産の株を持つことの安心感につながります」

ゴーン社長の舵取り

株主との交流イベントで笑顔を見せるゴーン社長。

日産の場合、社長CEOのゴーン氏が、大株主のルノーのCEOを務めていることもあり、その関係性は複雑だ。企業規模で上回る日産の総会決議の拒否権をルノーが持つといういびつさもある。

「IRの立場で言うのも変ですが、ルノーが株主という意識はあまりありません。ルノーはパートナーである、と。1999年3月に提携をして、当時のシュバイツァーがルノーから日産に行く人間に叩き込んだのだと思いますが、自分たちが優れているという態度を見せれば、アライアンスがうまくいかないことが徹底されていた。ルノーも、日産がいなければ生き残れない。お互いにシナジーを出さない限り、将来はないという意識で取り組んでいます。ゴーンが両方のCEOをやっているからといって、したいことができないということはない。むしろ、もっとシナジーを出して、お互いのパフォーマンスをよくしていきたいという思いがあります」

ルノー、日産は14年に露アフトワズの経営権を取得。ダイムラーとも10年に資本提携し、その範囲も拡大している。

「世界中のすべて国々で先進技術をすべて自前でやるのは無理です。トヨタやVW、GMくらいのサイズなら可能かもしれませんが、我々はそれに対抗するためにパートナーシップを組み、投資を抑えてリスクを回避している。それぞれの会社のカルチャーやアイデンティティを壊すことなく、シナジーだけは大きなサイズ分を取ろうという考え方です。

仮にルノーが短期的な利を獲ろうと日産の経営に口出しをすれば、日産が反発をして、あらゆるプロジェクトがうまくいかなくなるでしょう。ルノーにとってもマイナスです。いまの日産なら、ルノーの持ち分を買い戻すこともできますが、それをやらないのは必要がないからです。とてもデリケートなバランスをゴーンは取っている」

ゴーン氏が2000年に社長に就任して、丸15年になる。

「ゴーンはもともと日産の代表としてルノーのマネジメントと戦う立場にあったわけです。いまは一歩上の立場になり、彼自身が裁定することを極力避け、アライアンスボードのなかで問題解決するような仕組みを作っています。どちらかが有利にならないようにしている。これは両方のトップを経験している彼でなければできないかもしれない。ゴーンの存在は、両社にとってメリットがあると言えます」

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