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2015年3月号より

中部電力 原発劣等生が“いきなり”優等生 エネルギー産業再編のキーマン|月刊BOSSxWizBiz

攻めの1年の幕開け

「今年は攻めの1年。他社に先がけた行動を起こし、攻めの姿勢で取り組もう」

2015年1月5日、愛知県名古屋市の中部電力本店で開かれた新年祝賀式の席上、水野明久社長は社員に向けてこう呼びかけた。水野氏は2010年6月に社長に就任し、今年、5年目を迎える。社長就任の翌年3月11日に東日本大震災が発生。以来、水野体制は浜岡原発の運転停止にともない、電力の安定供給に追われた防戦一方の5年間だったといえる。

しかし、2014年5月、浜岡原発に匹敵する発電能力を持つ最新鋭の上越火力発電所が全面運転を開始し、逼迫していた電力供給が一段落。さらに電力料金値上げによって収支も好転し、赤字から黒字に転換した。そして、10月には東京電力との包括提携を発表し、まさに今年は「守りから攻めへ」と転じる体制が整い、スタートに立つ年明けになった。

絶好のポジション

2020年に向けて、同社が期待される理由――それはこの5年間は日本のエネルギー産業の大きな構造変革が予想されるなか、その中心的な役割を担うのが、中部電力であり社長の水野氏にあると見られるからだ。

最初の注目点は、発送電分離による電力の自由化である。そのスケジュールを見ると、今年4月に電力システム改革の第1段階である自由化について関係会社の調整などの役割を担うであろう「広域的運営推進機関」が設立される。第2段階は16年4月の電力の小売りの全面自由化。そして、第3段階は18年ごろで、20年までには発送電は分離され、発電と小売りは完全に自由化されると見られている。

これまでなら、こうした場合の中心は東京電力だった。しかし、現在の東電は実質国有化された状態で、そうした立場にない。業界2位の関西電力はというと、原発の再稼働問題を抱え身動きが取れない状態にある。そうなると、地域の壁を越えた自由化によってしか、成長が期待できない中部電力がどう動くのかが、注目される。

また、「電力」という枠組みではなく、「エネルギー産業」という枠組みに広げて見ると、さらに中部電力の立ち位置は絶好のポジションにあることがわかる。

昨年10月、中部電力は東電と包括提携を発表し、燃料調達から火力発電所の新設・リプレイスを一体的に進める共同出資会社を15年度内に設立することで合意した。この合意をめぐっては、LNGの調達規模が世界最大規模の年4000万トンになることから、調達コストの削減につながり両社のメリットが大きいと報道された。

しかし、中部電力は、調達コスト削減だけを狙っているわけではない。最終目標はトレーディング事業で世界的な影響力を持つことだ。

これまでも中部電力は、自社の抱える原発は浜岡のみで、発電の主力は火力だったから、経営安定のために、燃料調達の多様化を進めてきた。そのため他の電力会社に比べ交渉能力が高いといわれているが、それでも川下の輸入業者としての交渉では、受け身でしかない。そこでトレーディング事業に進出し、川上で価格決定にも影響を持ついわばLNGメジャーになるのが中部電力の目標だ。それには扱う量を大きくすることが手っ取り早い。そこで出てきたのが、東電との包括提携だった。これによって世界最大の調達量を手にできたわけだ。

さらにこの中部・東電連合に、大阪ガスが加わる可能性も出てきており、3社になれば、そのポジションは揺るぎない。しかも、3社の商圏は関東・中部・関西と分かれており、経営効率面からもメリットは大きい。

追い風は中部電力に

水野氏が社長に就任した8カ月後に、中部電力では「経営ビジョン 2030」と題する長期経営ビジョンを作成し、発表した。そのなかで「燃料調達を基盤とした事業」について、次のように記している。

〈多くのエネルギー資源を取り扱ってきた実績と、他の電力会社に先駆けて取り組みを進めてきた石炭トレーディングの経験を活用し、燃料バリューチェーン(権益・輸送・貯蔵・トレーディングなど)へ参画します。

こうした燃料調達を基盤とした事業を展開することにより、調達の安定性を高めるとともに新たな収益の確保を目指します〉

この長期ビジョンが発表されたのは2011年2月、東日本大震災直前。震災後も見直されることはなかった。

それから4年。電力業界の景色は一変した。原発の発電量が少なく劣等生だった中部電力が、いまや少ないことで電力自由化のトップランナーのポジションにある。東日本大震災は、電力業界に革命的な変動をもたらしたのである。

「主役は私、あなたは脇役」(手前=水野明久・中部電力社長/奥=廣瀬直己・東京電力社長)

そのため中部電力は東日本の大震災に端を発した、電力システム改革を前向きにとらえている。事実、自社で発行する広報誌のなかで水野氏はこう話している。

〈「電力の小売り完全自由化」が始まれば、大きな転換期を迎えます。受け身ではなく、むしろポジティブに「お客さまのお役に立つためには何が必要か」「どうチャンスに結びつけていくか」を考え、積極的に先んじて手を打っていくことが重要なポイントです〉

中部電力に、すべての追い風が吹いているようだ。というのも、中部電力にとって最大のリスクと懸念されていたのが、東電の福島第一原発の廃炉費用の負担や新会社の人事、発電所建設に対する政府の介入だった。しかし、これも今年1月には、政府の原子力損害賠償・廃炉等支援機構より「独立性の確保と債務保証を負わない」とする言質を取ることに成功している。

さらに2015年、関西電力社長の八木誠氏が電力会社の業界団体「電気事業連合会」の会長任期(4年)満了を迎える。電事連の会長は東電、関電、中部電力の3社の社長が順番に務めているが、この次期会長に中部電力の水野氏が就くのではないかと見られている。

これから4年、自由化に向けた山場をにさしかかる電力業界を水野氏が切り盛りすることになる。

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