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2015年3月号より

食料とエネルギーの未来を変えるミドリムシ ユーグレナ|月刊BOSSxWizBiz

日本の安全保障上、最大の問題が食料とエネルギーの自給率の低さにあることは論を待たない。この2つの問題を同時に解決できる可能性を持つ企業が、ユーグレナだ。

ユーグレナは3年前に東証マザーズに上場、2014年12月には東証1部に指定替えとなり、また社長の出雲充氏が『僕はミドリムシで世界を救うことに決めました』という本を出版したこともあって、知名度も高まってきた。

本のタイトルにも使われているとおり、ユーグレナとはミドリムシの学名のこと。出雲氏が東京大学在学中にバングラデシュを旅した際、栄養失調に苦しむ子供たちが多いことを知り、その解決策として、アミノ酸を大量に含み栄養価の高いミドリムシの大量培養ができないかと考えたところから始まった。

ミドリムシは動物と植物の両方の性質を持つ単細胞生物。繊毛を使って自由に動き回るが、光合成も行う。しかし食物連鎖の最底辺に位置しているため、すぐに捕食されてしまう。自然界にいくらでもいる生物ではあるが、それだけを大量に純粋培養することはむずかしかった。それに世界で初めて成功したのがユーグレナだ。

すでにユーグレナの製品は、サプリメントやダイエット食品の形で多くの人に愛用されている。また化粧品の成分としても使用されるようになり、現在その市場規模は70億円に達したという。

ユーグレナでは、今後、ミドリムシ製品を、東南アジアやアフリカなど最貧国に提供することを検討している。2013年には出雲社長にとって原点の地であるバングラデシュに営業所を開設、世界展開に向けて動き始めた。

そしてもう一つの期待が、ミドリムシによるジェット燃料の生産だ。これが実現すれば、産業的には食品よりもはるかに大きな規模になるとみられている。

バイオ燃料というとサトウキビやトウモロコシからつくられるのが一般的だが、ミドリムシから精製されるオイルはより軽質なため、ジェット燃料に向いているという。

「自動車など大半の交通機関は電気で動かすことができますが、飛行機だけはジェット燃料に頼らざるを得ない。それをミドリムシで生産しようというわけです」(出雲社長)

CO2を吸収して光合成で育ったミドリムシは、それを燃料にして燃やしても、結果的にCO2を増やすことはない。

そのため、新日本石油や日立プラントテクノロジーと共同で研究が進んでいる。東京オリンピックが開催される頃にはミドリムシからつくられた燃料で飛行機が飛ぶ時代となっているかもしれない。

また、培養施設と火力発電所をセットすることで、CO2削減に寄与することも可能だ。

具体的には、火力発電所から出る排気をミドリムシの培養液に送り込む。それによって、培養液のCO2濃度が上がるため、ミドリムシの光合成はより促進する。地球環境にとっての悪役であるCO2を、次の燃料へと生まれ変わらせることができるのだ。

東日本大震災以降、日本の原子力発電所はすべてストップし、火力発電所に頼る状況が続く。そのため、日本のCO2排出量は昨年、過去最悪を記録したが、ミドリムシを活用することで、削減させることもできるのだ。

こうしたミドリムシの可能性に着目して、いまでは数多くの企業がユーグレナと提携し、新商品の開発や新エネルギーの共同開発に着手している。

ここに至るまでには、「最初はどこの企業からも門前払いを食って、500社回ってようやく、伊藤忠商事が出資に応じてくれた」(出雲社長)という苦労もあった。

しかしそんな困難も、強い信念さえあれば乗り越えられることを、出雲社長は体現している。

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WizBiz代表・新谷哲の著書「社長の孤独力」(日本経済新聞出版社)

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