2015年3月号より
現代社会は、なんといっても健康ブームだ。そんなかでも一過性のブームで終わらないのが乳酸菌飲料やヨーグルトといわれる。
というのも、ヨーグルトの場合、最初はブームだからと食べはじめても、すぐにやめず、その後も食べ続ける“常食”となることが多いからだ。そのため効果のほどが実感できて、おいしければ売り上げが継続するらしい。
とくに最近は、機能性ヨーグルトと呼ばれるものが数多く登場。テレビのワイドショーや書籍などで「○○に効果がある」とされるものは、注目され、その“機能”によって子ども、女性から中高年男性、高齢者まで幅広く浸透しやすい。
そんななかで俄然注目を集めたのが「免疫力を高めインフルエンザを予防する」といわれ、スーパーでも在庫切れになって一世を風靡する人気だった、明治の「R-1」というヨーグルトだ。
明治はこうした機能性ヨーグルトをいち早く採り入れ、生きたまま胃や腸で働くヨーグルトや乳酸菌を抗生物質と対比させた「プロバイオティクス」として広く浸透させてきた。その先駆けになったのが「LG21」というヨーグルトで、これを食べ続けることで胃がんの原因になるピロリ菌の数を減らす効果が実証され、今も根強い人気がある。
これら明治の機能性ヨーグルトのもう1つの強みは、スーパーなどでも正価で売られている点にある。明治のヨーグルトの売り上げは年々着実に伸び、2010年度の341億円から、14年度には812億円(目標)にもなっている。
また、明治はヨーグルトだけでなく、ここ最近はチョコレートでも売り上げを伸ばしている。そのきっかけが「チョコレートは高血圧を予防する効果がある」としたテレビ放送だった。
とくにちょっと苦みのあるダークチョコほど効果が高いとされたため、「大人のきのこの山」「大人のたけのこの里」「アーモンドブラック」などが登場した。しかし、いつの間にやらそうした効果よりも「大人の~」のフレーズが先行。他社からは「大人のあずき入り大福」アイスクリームや「おとなのイチゴケーキ」「おとなのミルク」など、あらぬ方向に進んだ商品も出た。
再編統合で飛躍
こうした商品開発の一方で明治が飛躍する原動力になったのには、事業の再編もある。10年にホールディング制を導入し、明治乳業と明治製菓を傘下においた、そして、その翌11年は両社を合わせ、菓子・乳製品・健康栄養ユニットの「明治」と、医療用医薬品部門などの「Meiji Seikaファルマ」に再編した。
それぞれの売上構成比は食品部門が89%、医療部門が11%だが、営業利益ベースでは食品部門が77%、医療部門が23%と、医療部門の利益率が高いのが特徴。金額ベースでは直近の15年3月期の連結利益は前期比14%増の415億円と、予想の375億円を上回る予定だ。
また、2014年6月にはトップが交代。新社長に就任したのはMeiji Seikaファルマ社長だった松尾正彦氏。松尾氏は菓子部門からほぼすべてをこなしてきたオールラウンダーで、なかでも国際部門が長い。そのため今回のトップ交代では海外部門をにらんだと見る向きも多い。
そうはいっても、明治への国内での追い風は今後も続く気配である。とくに、今年の春には食品やサプリメントなどで「機能表示」が認められるため、機能性食品の表示が明確化される。そうなれば、明治がもつプロバイオティクスの技術がさらに発揮される可能性は極めて高いのである。