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2015年3月号より

拡大すれども多角化にあらず セコムが挑む新領域 セコム|月刊BOSSxWizBiz

日本で初めて警備会社にスポットが当たったのは、1964年の東京オリンピック。当時、日本警備保障という社名だったセコムが会場警備を請け負ったことで、その知名度が飛躍的に上昇し、警備業が産業として認知されるきっかけになった。

以来、半世紀、セコムは警備会社の範疇に収まらない広範囲な事業領域をもつ企業に成長している。売り上げこそセキュリティ事業が50%を超える中心事業だが、防災、メディカル、保険、地理情報、情報通信、不動産、海外事業の8つのセグメントが存在し、これらの事業が「セキュリティ」「超高齢社会」「災害・BCP(事業継続計画)・環境」という3つの分野へのサービスを形作っている。それぞれの事業領域を結び付け、グループシナジーを強固なものにしているのが「ALL SECOM戦略」という考え方だ。

通常のグループ構成とは異なり、セコムは親会社として中心に配置されているわけではない。グループ会社同士が親会社であるセコムを飛び越えて、自由に議論し、新しいサービスの構築を図るという、いままでにないスタイルになっている。

2020年の東京五輪開催が決まってから、セコムはALL SECOM体制で、明確に国際イベントを目指した取り組みに舵を切った。

伊藤博社長は次のように語る。

「5年、10年、15年と、先を見据えて強化していくことは重要です。セコムは創業2年目である64年の東京五輪で選手村を警備して、ここで足場を固めて次のステップに行けるようになった。その意味では、20年の東京五輪は恩返しをするタイミングでもあります。セコムは何をするのか、それ以降はどうするのかを考える大きなタイミング。『安全・安心』が大きいわけですが、オリンピックで言う『おもてなし』は、セコムで言えば『快適・便利』です。セコムにしかできないおもてなしをしたい」

20年までに多数建設されるであろう五輪関連の新しい施設または都市計画による建物等については、単純に警備だけでなく、グループの能美防災による防災システムや、セキュリティのネットワークや機械警備を構築するセコムトラストシステムズによるデータセンター事業の需要が期待される。

特に近年多発する数十年に1度の規模の自然災害に対して、BCPの観点からもデータセンターに対する注目度は高まり、金融機関や自治体もセコムにデータを預けるケースが増えている。個人契約のホームセキュリティにも、各種証明書や処方箋のデータを預けるサービスを利用する人が多いという。

また、20年以降も継続して進化が期待される分野にメディカル事業全般と、パスコを中心とする位置情報サービスがある。セコムが子供の見守りサービスとして01年に始めた「ココセコム」はセキュリティと位置情報の融合だったが、13年に始まった「マイドクタープラス」はメディカルと位置情報の融合でもある。従来の救急通報に加え、電話機能やGPSによる位置情報も取得できるようになり、仮に外出先で倒れた際も、セコムの対処員が駆けつけることができる。超高齢社会を迎え、それがさらに加速する日本にとって、メディカル分野の「安心・安全」のニーズは拡大する余地が大きい分野だと言えるだろう。

「あることが満たされると、もっとこうしてほしいというニーズが出てくる。お客様が困ったことを、何とかしてくれないかと言われれば、それにお応えしよう、解決しようというのがセコムなんです」(伊藤社長)

いまのセコム経営陣には、多角化を進めているイメージはないという。「安全・安心」「快適・便利」を追求する姿勢が、日本企業がいままでにもたなかったグループ生態系を作り出している。

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WizBiz代表・新谷哲の著書「社長の孤独力」(日本経済新聞出版社)

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