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2015年3月号より

三井不動産 「働・住・商」のバランスで圧倒的 課題は五輪後の街の「経年優化」|月刊BOSSxWizBiz

32年ぶりの大型公募増資

52.4%、46.3%、36.8%。これは順に、三井不動産、三菱地所、住友不動産の、財閥系ディベロッパー3社の外国人持ち株比率(昨年末時点)を指す。特に過半を超えている三井不動産は、外国人投資家が三井不動産株を通じて、いわば日本の不動産を買い集めていると言い換えても過言ではないだろう。それだけ、業界内で三井不動産のプレゼンスが大きいという証でもある。2020年時点では、その存在感はますます際立っているのではないか。

確かに、ライバルの三菱地所は金城湯池といえる丸の内から大手町にかけての“三菱村”を擁してはいるが、オフィスビル賃貸にやや事業の偏りがある。一方、住友不動産にはこれといった“住友村”はなく、ライバルたちのホームグラウンドエリアを含めて、大型開発をゲリラ戦のように仕掛けていくイメージが強い。

その点、三井不動産は展開エリアも事業領域も幅広い。たとえば商業施設関連では三菱地所や住友不動産を圧倒しており、ららぽーとをはじめとした大型ショッピングセンターは、イオンの巨大モールと比較されることが多くなっている。

特に今年2015年は、その商業施設で新規開業ラッシュとなる。主立ったものを見てもまず春に、ららぽーと富士見(埼玉県)、夏に三井アウトレットパーク北陸小矢部(富山県)、秋に入るとエキスポランド跡地複合施設開発事業(大阪府)、ららぽーと海老名(神奈川県)、ららぽーと立川立飛(東京都)といった具合だ(すべて仮称)。

売れ筋の商業テナントを誘致するパワーやノウハウでは、もはや不動産業界に限れば無敵だろう。また、ほかのオフィス賃貸や住宅事業を含めて見ても、三井不動産は最もバランスが取れている。

2013年9月に東京五輪の開催が決まって以降、同社は一段とアクセルを踏み込んだ。昨年夏、32年ぶりとなる公募増資で3300億円を調達したからだ。これだけの規模となると、株式の希薄化から株価が軟調になるものだが、三井不動産株の下落幅が増資後、一時的かつ限定的だったことも、同社への期待値の高さが窺えた。

首都高速道路を取り払った場合の日本橋川付近のイメージパース。

守備範囲の広い同社の起点となるのは“三井村”の東京・日本橋だ。99年に東急百貨店日本橋店が閉店した頃は、日本橋エリアはさびれたイメージが漂ったが、ここから三井不動産は盛り返す。04年にまず、東急百貨店跡地にCOREDO日本橋をオープンし、翌05年には自社の本社も入る日本橋三井タワーを竣工。

ただし日本橋界隈は老舗商店が多いため、地権者の数もそれだけ多く、権利関係が複雑な場合が少なくない。COREDO日本橋、日本橋三井タワーと、「点」での展開は終えた三井不動産だったが、05年以降はミニ不動産バブルと言われた時期に入ったこともあり、07年の東京ミッドタウン、08年の赤坂サカス竣工と、違うエリアでの大型再開発のほうが目立っていた。

再び日本橋がクローズアップされたのは、リーマンショックから立ち直った10年で、COREDO室町がそれだ。そして昨年、COREDO室町2&3が竣工し、日本橋の開発はようやく「線」の領域に入る。

三井物産と手がける大手町の大型再開発の完成イメージ。

前述したように、今年は商業施設ラッシュなため、一息入れることになるが、再来年以降、東京五輪を挟んで怒涛の再開発が続いていく。17年から19年にかけてはまず、日本橋三井タワー近隣エリアと髙島屋日本橋店隣接地の開発が竣工予定。

さらに五輪イヤー以降は、日本橋川を挟んで野村證券ビルのあるエリア、あるいは八重洲エリアも、東京駅前のまとまった好立地を再開発していく予定だ。東京駅を挟んで、大手町から丸の内エリアの大地主である三菱地所に対し、反対側の日本橋から八重洲にかけて「面」の展開で攻めていく三井不動産。このライバル対決は、五輪後にさらにヒートアップしていくことになる。

しかも、五輪で「新東京駅」誕生の期待を持つ三菱地所に対し、三井不動産にも日本橋川の上を通る首都高速道路の地下化という、長期的な悲願がある。五輪までに実現するのは難しいかもしれないが、三井不動産会長の岩沙弘道氏は昨年6月、日本経団連のナンバー2である審議員会議長に就いたほか、東日本高速道路の会長も務めており、首都高移設問題の進展に期待がかかるところだ。

真価が問われる「五輪後」

また、三菱地所が強い大手町エリアでも、ピンポイントながら楔を打ち込む。老朽化してきた、三井物産本社ビルエリアの一体再開発がそれだ。開発の敷地面積が2万平方メートルを超える大型複合開発で2棟からなり、多目的ホールやラグジュアリーホテルも誘致する計画になっている(竣工予定は19年度)。

すでに外国人観光客で賑わいを見せ、大型再開発が目白押しの銀座エリアでは三井不動産の名前は特にないが、銀座への導線となるエリアでは開発が進んでいる。新日比谷プロジェクト(仮称。三信ビルディングと日比谷三井ビルディングの一体的な再開発で17年度竣工予定。地上35階地下4階、高さ192メートルの高層ビル等)がそれだ。

しかも隣接地には、五輪開催決定後に海外から気の早い宿泊予約の問い合わせが殺到した、日の丸ホテルの筆頭、帝国ホテルがあり、三井不動産が33.1%を出資している。五輪を控えて本館の建て替えを発表したホテルオークラに対し、帝国ホテルでは何もアナウンスはないが、三井不動産とは幹部クラスが定期的に情報交換や勉強会を開いており、五輪後に帝国ホテルエリアも一大再開発に着手する可能性はある。

前述したように、昨夏(2014)に3300億円の大型公募増資をしたが、その主たる使途はまだ未定。帝国ホテルエリアを含めて、都心のどこかで世間を瞠目させる開発構想を温めているに違いない。

このほか郊外へ目を転じると、旧柏ゴルフ倶楽部跡地を開発した、柏の葉キャンパスシティ(千葉県)も壮大なチャレンジだ。三井不動産では当地を初の本格的なスマートシティと位置づけ、地域でエネルギーを管理し、食の自産自消や地域ぐるみの疾病・介護予防、創薬やバイオを中心とした新産業支援などもある。

三井不動産は新事業のパイオニア的存在だ。

柏の葉キャンパスシティには、これまですでに1000億円の投資をしており、さらに30年までに、約2000億円を投じる計画だ。昨年7月、柏の葉キャンパスシティで会見した菰田正信社長はこう胸を張る。

「海外にはまだ、こうした次世代型街作りの事例はありません。これだけ環境コンシャスで健康長寿を考えている街はないでしょう。ベンチマークする街は特にないので、自分たちで開拓していかねば」

もともと、高層ビルの先駆けである霞が関ビルなど、パイオニアとなるビジネスを手がけてきた三井不動産だけに、単に開発エリアや事業領域が幅広く、ソロバンを弾くだけではないはずだ。そこには、日本の不動産開発のグランドデザインを描くという自負もあるだろう。

五輪後は少子高齢化や人口減少などがさらに加速し、不動産業界もフローからストックへ大きくシフトしようとしている。その中で、都心にしろ郊外にしろ、三井不動産が仕掛けていく街作りは、同社が標榜する「経年優化」なくしては、ゴーストタウン化するリスクもはらむ。

幸い、円安基調で日本経済の内需立国待望論も再び高まってきた。東京五輪をいわばフックにして、10年後や20年後にも活きる街作りが求められる。それができるのは、不動産最大手で再開発ノウハウも豊富な三井不動産以外にはない。

(河)

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