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2015年3月号より

時価総額世界一を目指し まずは携帯で世界一に ソフトバンク|月刊BOSSxWizBiz

ソフトバンクの進軍ラッパが止まらない。

米携帯3位のスプリング社を買収したのは2013年のこと。2014年はさらに4位のTモバイル買収を画策するも、米規制当局の承認が得られずに計画は頓挫した。Tモバイル買収により、スプリントと合わせて契約数トップ2のベライゾン・ワイヤレスとAT&Tに一気に迫ろうという目論見は潰えたが、その程度のことでめげる孫正義社長ではない。

2014年秋には孫社長がインドを訪問。モディ首相などと会談し、今後インドに対し1兆円を超える投資を行うと表明している。

それだけではない。米アニメ会社や映画製作会社、インドネシアのEC企業などへ出資することも明らかになった。

1990年代、ソフトバンクはインターネット関連企業に毎週のように出資し、その「ダボハゼぶり」が話題になったが、それを彷彿させる攻勢をかけている。しかも90年代の相手は米国か日本企業が大半だったが、今回の買収・出資劇は舞台が世界に広がっている。

それを可能にしたのが、ソフトバンクが約3割を出資する中国のアリババの上場だった。2014年秋、ニューヨーク市場に上場したアリババは、いきなり時価総額25兆円という世界有数の企業となった。これによってソフトバンクは8兆円もの含み益を持つことになり、これがその後の買収攻勢の原資となっている。スプリント社の買収で、ソフトバンクの有利子負債は9兆円にまで膨れ上がったが、アリババの含み益でその大半をまかなえる計算だ。

ソフトバンクは現在、年間5000億円を超えるEBITDA(税引前利益に支払利息と減価償却費を加えたもの)を生んでおり、スプリントの買収の財務的不安要素がなくなれば、年間数千億円の投資が可能となる。

90年代のソフトバンクの攻勢を支えたのは、米ヤフーの含み益だった。それが今日のソフトバンクの礎となっているのだが、今度はアリババの含み益を担保として、さらなる投資に意欲を燃やす。

その事業領域はインターネット関連だけにとどまらず、間もなく市販を開始する人型ロボットの「ペッパー」や、東日本大震災を契機に取り組み始めたエネルギー関連産業など多岐にわたる。

そしてその先には、孫社長の壮大な野望がある。

孫社長は2010年、創業30周年を迎えるにあたり、次の30年に向けたビジョンを発表している。その中で「ソフトバンクを時価総額世界一にする」と宣言した。

この新30年ビジョンは、孫社長曰く「人生最後で最大の大ホラ」だという。しかし孫氏は、創業間もない頃にアルバイト社員を前に「売り上げを兆(丁)で数えるようになりたい」といういわゆる「豆腐の心意気」を語り、社員から呆れられたというが、いまでは7兆円近い売り上げを誇る企業となった。

また、06年にボーダフォンを買収して携帯事業に参入した時は「ドコモを超える」と宣言したものの、当時は誰も信じなかった。しかし現在、ソフトバンクの携帯事業は売り上げでも利益でもドコモをしのいでいる。誰もが眉に唾つけて聞いていた話を現実のものとした。孫社長にしてみれば、けっしてホラ話ではなかったのだ。

当然のことながら、「時価総額世界一」にしても孫氏は本気である。その第一歩は、携帯事業で世界一になることだ。Tモバイルの買収失敗は痛手だったが、おそらく孫社長のことである。次の標的を定めているはずだ。

2020年は、その世界一が現実のものとなるか、夢で終わるのか、はっきりと見えているだろう。

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