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2015年3月号より

郵便局数を超えるメガインフラへ セブン-イレブン・ジャパン|月刊BOSSxWizBiz

2020年、セブン-イレブン・ジャパン(以下SEJ)の店舗数が、ついに全国の郵便局数を抜く――。

目下、コンビニ業界は言うに及ばず、小売業全体で見てもSEJの独走ぶりは際立っているが、まず足元の業績見込みを見てみよう。15年2月期、セブン&アイ・ホールディングス全体の予想は、売り上げに相当する営業収益が6兆1300億円(米国のセブン-イレブンインク、および同社が展開する海外店舗も含めると10兆2000億円)、営業利益は3560億円だが、そのうちSEJのチェーン全店の売り上げは4兆円、営業利益では2700億円。

そして、店舗数は純増ベースで1200店増の1万7519店、15年度は過去最高となる1700店の出店を計画しているのだが、向こう5年を仮に平均1500店出店として7500店。単純合算で2万5000店余となり、退店を差し引いた純増数を想定しても、いまの郵便局数が約2万4000だから、20年中に抜き去る可能性は高い。

しかも、いまよりも郵便局数は減っていくだろう。新旧交代で、SEJがいわば日本一のメガインフラ拠点になるというわけだ。場合によっては、郵便局がクローズした跡地にセブン-イレブンが出たり、併設店といったケースも考えられる。

かつて、コンビニといえば主力顧客は若年層だったが、特に東日本大震災以降、ライフラインの役割もあって、女性やシニア、高齢者層の顧客が目に見えて増えてきた。考えてみれば、コピーやファクス、ネットプリントからエンタメやレジャーチケットの発行、公共料金の支払いや住民票の取得に始まり、銀行に並ばずともいつでもセブン-イレブン内のATMで現金の引き出しや預け入れができる。さらにネット通販で購入した商品の留め置き、受け渡し場所としても定着してきており、一部店舗ではクリーニングもある。

SEJではさらに、「ご用聞きの時代」として、自ら出向いて商機をつかんでいる。その事例が宅配サービスや移動販売サービスで、郵便局の数を凌ぐ店舗数に達した時、超高齢社会における“見守り”的なサービスという観点からも、大きな役割を担うだろう。さらに、岩谷産業との協業による水素ステーションの併設店舗、あるいは免税サービスなども、5年後にはかなり普及しているかもしれない。

焦点は、今秋までに本格スタートさせるというオムニチャネル戦略だ。グループ各社の商品をネットで注文し、セブン-イレブンで受け取れるようにするものだが、確かに留め置き、受け渡しという点では前述の郵便局数超えが大きく利いてくる。ただし、消費者に頻度高くサービスを使ってもらうためには、グループ内の商品だけでは限界がある。

2014年は、慎重なセブン&アイHDにしてはM&Aラッシュだった。通販のニッセン、雑貨店のフランフランを運営するバルス、さらに米国の高級衣料チェーンのバーニーズニューヨークの日本法人と、立て続けに買収を手がけた。これは10年前に、そごうや西武百貨店を買収すると発表して世間を驚かせて以来だ。

されど、オムニチャネルの充実を考えればまだまだ足りない。向こう5年の間に、シナジーが見込める企業があれば、これからも買収という打ち手は繰り出していくはず。もっといえば、オムニチャネルの総本山たるグループのセブンネットショッピング自体を拡大するため、ネット通販企業の買収ということも考えられる。中長期スパンで見れば、世代交代が進むほどネットでの買い物に慣れた層が増えてくるわけで、その層がボリュームゾーンに達してくる前に、オムニチャネルをある程度、完成させておかなければいけない。5年後は、その分岐点になっている可能性もある。

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