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2015年1月号より

ウイスキー離れに歯止めをかけた「古くて新しい」角ハイボール|月刊BOSSxWizBiz

減り続けたウイスキー

最近のサントリーのヒットといえば、何といってもウイスキー「角瓶」をソーダ水で割った「角ハイボール」だろう。

単にハイボールをリバイバルさせたというだけでなく、ウイスキーそのものに再び脚光を浴びさせたという意味でも、その功績は大きい。何しろ、サントリーがこのキャンペーンを始めるまでは、ウイスキーとは「年寄りの飲む酒」に成り下がっていた。ところが、角ハイプロジェクトによってその味を知った若者たちが、再びウイスキーを手に取ることが増えた。今後のウイスキーのマーケットを考えるうえでも、このプロジェクトの成功は非常に大きなものがある。

日本にウイスキーブームが起きたのは1950年代と言われている。水割りという飲み方が広まるにつれ、和食店でもウイスキーが飲まれるようになった。各家庭では輸入スコッチや、サントリーの「ロイヤル」などの高級ウイスキーが飾られていた。盆暮れの贈答品にも、ウイスキーはよく使われた。

日本国内のウイスキーの市場は83年に38万1000キロリットルを記録している。それに伴い、サントリーの業績も大きく伸びた。しかしこの後、酎ハイブームが起きたこともあり、特に若者を中心にウイスキーの市場は縮少していく。2008年の販売量は7万4100キロリットルだから、約5分の1にまで落ち込んだ。

それが、09年からは上昇に転じ、13年には10万5500キロリットルにまで回復する。角ハイが、その牽引役となった。

角ハイプロジェクトを担当した奈良匠氏。

この角ハイプロジェクトを担当したのが、サントリーウイスキー部の奈良匠氏だ。

奈良氏は2001年にサントリーに入社。まだ30代半ばである。「大学時代からウイスキーを好んで飲んでいましたが、ウイスキー好きの友人はほとんどいなかった」という。

入社から6年間は北海道支社で営業を担当していたが、07年に洋酒事業部に異動となる。学生時代からウイスキーに親しんでいた奈良氏にとって念願の部署だった。

ただし、前述のようにウイスキー市場は右肩下がり。若者のウイスキー離れは深刻だった。それをどうやって伸ばしていくか。大きな課題だった。

まず全国から情報を集めると、一部の地方都市で角ハイが人気を集めていることがわかった。「ウイスキーは食後酒のイメージがあるけれど、ハイボールにすることで食事にも合う。しかも角ハイならリーズナブルでビールよりも安い」ことが理由だった。そこでサントリーでは角ハイを仕掛けていくことを決めた。そしてその担当に、08年5月、奈良氏が選ばれた。プロジェクトの始動は3カ月後の8月だ。

奈良氏たちプロジェクトチームが目指したのは、若い人に飲んでもらうこと、そしてビールのように1杯目から飲んでもらうことだった。

「そこで考えたのが、グラスではなくジョッキで飲んでもらうスタイルでした」

いまでは居酒屋などで角ハイを頼むと、角瓶をデザインしたジョッキで出てくることが多い。ところが、当初、ジョッキで飲むことに対して社内から異論が出たという。というのもサントリーはウイスキーの会社であり、年齢が上に行けば行くほどウイスキーへのこだわりは強い。その人たちにしてみれば、「ウイスキーとはグラスで飲むもの。ジョッキとはおかしい」ということだったらしい。ウイスキーを愛すればこその思いだろう。しかし経営陣は「若い人の発想に任せてみよう」とジョッキ案を採用した。まさに「やってみなはれ」である。

テレビCMが起爆剤

同時に、角ハイのおいしい飲み方の提案も行った。最初の一口でファンになり、その後もリピーターになってもらうために必要なことだった。それが「こだわり3条+1」というもので、(1)温度にこだわり、ジョッキいっぱいに氷を入れる(2)炭酸圧を維持するため炭酸水は静かに注ぎ、あまりかきまぜない(3)角:炭酸水は1:4――が3カ条で、最後の「+1」は氷より先にレモンを軽く絞って入れておくというものだ。このレモンを絞るという飲み方も、サントリーの歴史にはないものだった。ブレンダーも最初驚いたというが、「未来につながるなら」と認めてくれた。この「こだわり3条+1」を、サントリーは角ハイを提供する飲食店に対して広めていった。

多くの店で設置されている「角ハイタワー」。

さらにはおいしい角ハイをつくれる専用サーバー「角ハイタワー」を開発し、飲食店への導入を促した。当初は70店ほどでスタートしたが、現在では4万近い店に設置されている。

こうして、若い人にとってはまったく新しく、年配には懐かしいウイスキーのハイボールという飲み方が徐々に広がっていった。奈良氏は「プロジェクトを開始した年の10月頃から手応えを感じ始めた」という。

そして09年2月、女優の小雪さんがバーのママになった角ハイのテレビコマーシャルが放送されるや、一気に火がつく。テレビや新聞、雑誌でハイボールブームが報じられ、さらに愛飲者が増えていった。

さらには、外で角ハイを知った人に家庭でも楽しんでもらおうと「角ハイボール缶」が09年10月に発売され、これもヒットする。「外で味を知ってもらい、家庭でも味わってもらう」というサントリーの戦略は見事に当たった。またウイスキーのボトルを買って、自分流の濃さで味わう人も増えてきた。

その結果、下がり続けてきたウイスキーの販売量は、09年、ついに前年比を突破する。26年ぶりのことだった。

「大学時代の友人も、ハイボールを飲むようになりました。サントリーに入社する新人に『ウイスキーを飲んだことがない人』と聞くと、少し前までは必ず手が挙がっていたのに、最近ではさすがにいなくなりました」(奈良氏)

しかしそれでも奈良氏は「まだまだ」と戒める。

「13年が少し踊り場で伸び悩んだ。でも14年にCMも変え、テコ入れしたら2ケタも販売が増えた。ということは、自分が思っているほどには定着していないということです」

つまり、潜在的なウイスキーファンはまだいるということだ。この層を掘り起こすことができれば、サントリーのウイスキーの第2期黄金時代が来るかもしれない。

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