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2014年12月号より

スプリント買収から1年 始まった「反転攻勢」|月刊BOSSxWizBiz

価格勝負に挑む

iPhone6が発売される前日の2014年9月18日10時、ソフトバンクは東京・汐留の本社で記者会見を開いた。

会見に臨んだ宮内謙副社長兼COOがこの場で発表したのが、iPhone6を対象にした「アメリカ放題」というサービスだ。

ソフトバンクは今年春から「スマ放題」というサービスを開始している。これは毎月定額でスマートフォンの電話がかけ放題、パケットし放題(上限あり)になるというもの。このサービスを、アメリカ(ハワイを含み、アラスカを除く)でも使えるようにしようというもの。現在ソフトバンクユーザーがアメリカから日本に電話すると1分140円、アメリカ国内にかけると同125円、また着信を受けても同175円の料金がかかる。またウェブを利用する場合、「海外パケットし放題」のサービスを使っても、1日2980円が必要だ。

「アメリカ放題」を利用すると、これらがすべて無料になる。アメリカに駐在している人はもちろん、日本からアメリカへ渡航する年間200万人超の旅行者にとっても非常にありがたいサービスだ。

「スマ放題」と同じようなサービスは、ドコモもauも行っている。料金もほとんど変わらない。しかし「アメリカ放題」に限っては、他の2社は追随のしようがない。

ソフトバンクだけが「アメリカ放題」を展開できるのは、昨年、米携帯会社のスプリント・ネクステル(現スプリント)を買収したためだ。

スプリントは、米国市場においてベライゾン、AT&Tに次いで第3位に位置している。しかし上位2社とは大きく離れているだけでなく、加入者減と赤字決算が続くという惨憺たる状況だった。

しかし孫正義・ソフトバンク社長にしてみれば、臆するところは何もなかった。というのも、「ソフトバンクが買収した時のボーダフォンと同じ状況だ。ソフトバンクはこれまで、日本テレコム(長距離固定電話、現ソフトバンクテレコム)、ボーダフォン、ウィルコム(PHS、現Yモバイル)の3社をいずれも再建してきた。その経験を活かすことができる」(孫社長)ためだ。

買収の意向を表明したのが一昨年10月のこと。その後、米連邦通信委員会の承認を得て昨年7月に買収手続きを終えた。以来、孫氏はスプリント再建に多大なエネルギーと時間をかけてきた。

日米間を往復しながら、まずはスプリントの通信ネットワークの整備に力を入れた。前稿にもあるように、ボーダフォンを買収した時もまずやったのがネットワークの整備だった。スプリントでも同様のやり方で、この1年間で音声接続率、LTE接続率、パケット接続率ともに大幅に改善、上位2社と遜色のないレベルにまでなったという。

またソフトバンク傘下となったことでコスト低減効果も出てきており、「コンスタントに利益が出るようになった」(孫社長)。しかし、加入者数は今年8月の時点ではまだ減り続けていた。

ただ当時、孫氏は次のように語り、今後の戦略に自信をのぞかせていた。

「これまではネットワークが改善するまで、自信を持って勧めることができなかった。ネットワークが改善したこれから、本格的に営業攻勢をかける」

営業攻勢の内容が明らかになったのは、孫氏の発言から10日ほどたってからのことだった。

スプリントが打ち出したのは、月額60ドルで制限なしにデータ通信および通話ができるプランで、これはライバル通信会社より20ドル安いという。つまり、日本でいう「スマ放題」の料金を、他社の4分の3で提供するというものだ。さらに、20ギガまでのデータ通信を、最大10回線まで100ドルで利用できる家族向けプランも発表した。

また、9月に入ると、「生涯iPhone」というiPhone6向けプランも公表した。これはiPhone6を、購入するのではなく2年間リース契約を結び、2年後には新しい携帯電話を無料で手に入れることができるというものだ。このプランを利用すると、電話機代と通信費を合わせ、上位2社より2年間で1000ドル以上も安くなるというアナリストの指摘もある。

ネットワークの次は価格で勝負をかけてきた。

ブライトスターの存在感

この攻勢の陰には、昨年買収した、スプリントとは別の米国企業の存在がある。

ソフトバンクは昨年10月、携帯電話端末卸売の大手ブライトスター(外部リンク)を12億6000万ドルで買収した。ソフトバンクは一定の携帯電話端末やアクセサリーなどについて、独占供給を受けるという契約も同時に結んでいる。

ブライトスターを買収したことによって、ソフトバンクは携帯端末メーカーとの価格交渉を優位に進められるようになる。さらにはブライトスターは新興国にも販路を持っている。新興国では、先進国で使用した中古端末が人気となっており、ソフトバンクおよびスプリントの顧客から買い取った中古端末は、ブライトスターを通じて新興国に流れていく。

そこに目をつけたのがスプリントの「生涯iPhone」だ。2年後に現在使用されているiPhoneを引き取らなければならないが、中古端末の販路が確立しているため、安心して引き取れる。ブライトスターあってのプランである。

ブライトスター買収によって、もうひとつ手に入れたのが、同社創業者でCEOのマルセロ・クラウレ氏(外部リンク)だ。

クラウレ氏は携帯市場を知り尽くしているうえに販売力がある。孫社長が「ストリートファイターそのもの。顔も山賊のようだ。喧嘩をしたら強そうだし、ソフトバンクと文化が似ている」と評価する人材だ。

孫氏はスプリントが反転攻勢に移るタイミングで、同社のCEOにクラウレ氏を据えている。“ソフトバンクの文化と似ている”クラウレ氏を通じて、ソフトバンク流を一気に根付かせたいという狙いもそこにはある。

ソフトバンクのある幹部が、「孫さんが神様に愛されていると思うのは、何かやろうとした時、その時代を体現する仲間や部下が呼び寄せられてくること」と語っていたが、クラウレ氏もそのひとりなのかもしれない。

もちろん、スプリントの再建は緒についたばかりであり、“ボーダフォンの再現”とするにはいくつもの難関があるはずだ。しかしスプリントはソフトバンク本体にも大きな刺激となっている。

別稿にもあるが、孫社長は2000年に「新30年ビジョン」を発表したが、その中で「時価総額世界一企業」になることもうたっている。世界一になるには米国市場攻略は避けて通れない。スプリントを買収したことによって、その道筋が見えてきた。

実際、あらゆる事業が、米国展開に向け動き始めたという。次に登場する、法人営業統括の今井康之氏も、「日本でやってきた法人営業を米国でも展開していく」と意欲を前面に押し出している。スプリントによってソフトバンクのグローバル化は一気に進んだと言っていい。

日本のソフトバンクユーザーにとっても、冒頭で紹介した「アメリカ放題」のようなスプリント効果が出てきている。ソフトバンクのスプリント買収額は最終的に216億ドルとなった。ユーザーの中には、「それだけの資金を投じるのなら携帯電話料金を安くしてほしい」という声もあった。「アメリカ放題」は、そうしたユーザーの声に対するソフトバンクの回答のひとつである。

しかもアリババの上場によって、ソフトバンクは多額の含み益を持つことになった。その資本力を背景に、次なる買収劇も起きるだろう。未来から振り返ると、スプリント買収は “初めの一歩”だった、ということになるかもしれない。

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