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特集記事

2014年9月号より

“来年に再上場、第2USJ建設へ USJ再上場時の株価は20万円?

前回は2年で上場廃止

ハリー・ポッターの新アトラクションにより、昨年度1000万人だった入場者が今年度は1200万人にも達しようかというユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)。

USJの売上高は2012年度で約1000億円。入場者が200万人増えるということは、入場料が1人7000円で140億円の増収が見込める。実際には年間パスポート利用者や学生、子供料金もあるためそんなに単純ではないが、飲食費やおみやげ代も加わるため、200億円近い増収となってもおかしくない。つまり、入場者数、売上高ともに2割増しとなるということだ。

しかも一足早くハリポタを導入した米フロリダ州のユニバーサル・オーランド・リゾートでは、入場者数が3割増えたというから、USJもさらなる上積みがあってもおかしくない。

新アトラクションへの投資額は売り上げの半分近い450億円にも達している。

USJでマーケティング部門を統括する森岡毅氏はその著書『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?』(KADOKAWA刊)で、このアトラクション導入を提案した時、グレン・ガンペル社長から「私の死体を乗り越えて行け」と猛反対されたことを明かしている。当時(2010年)のUSJの売り上げは800億円程度だったから、反対されて当たり前だった。

しかし森岡氏は社内を説得して了解を取り付けた。この決断はUSJにとっては博打にも等しいほどのものだったが、その賭けは見事に当たったことになる。

こうした状況を受けて、最近浮上してきたのが、USJ再上場計画だ。

既出のレポートでも触れているが、もともとUSJ(運営会社はユー・エス・ジェイ)は大阪市と米ユニバーサル・ピクチャーズ、そして大阪財界が出資して設立された。しばらくは赤字が続いたが、07年3月に黒字化を果たし、同年3月東証マザーズに上場を果たす。株価は一時9万900円(07年5月)の高値をつけるが、08年後半に大きく値を下げ、年末には2万8430円にまで落ち込んだ。この当時は入場者数が下げ止まらず、1人当たり単価も伸び悩んでいたため、その前途には暗雲が立ち込めていた。

しかし09年にゴールドマン・サックス系のファンドがTOB(経営陣も買収側に回ったためMBOとなる)、全株を取得し上場廃止となってから、USJは息を吹き返す。家族連れをターゲットとした「ユニバーサル・ワンダーランド」やスパイダーマンのアトラクション、後ろ向きに走るジェットコースターなど、新たに導入する施設がことごとくヒットするようになっていった。

そうやって勢いがついたところでのハリー・ポッター導入だから、その勢いはさらに加速した。

USJを所有するゴールドマン・サックスにしてみれば、いちばん高値で売却することが最高の出口戦略となる。そうであるならば、勢いのある時に上場したいと考えるのは当然だ。

USJ関係者も「上場は選択肢のひとつ」と、上場するとの見方を否定しない。恐らくは1年後をメドに再上場ということになるだろう。

気になるのはその株価だ。わかりやすくするために、発行済株式数は以前の上場時と同じと仮定する。

TOB価格は5万円だった。当時の入場者数は800万人で、今年の推計入場者数はその5割増しだ。単純にその分を上乗せしても株価は7万5000円ということになる。株価は将来の業績が反映されることを勘案すると、上り調子のUSJの場合、株価が10万円程度となってもおかしくない。

東京ディズニーランドを運営するオリエンタルランドと比較したらどうか。

シーを含むディズニーランドの入場者数は3100万人。オリエンタルランドの売上高は4735万人(ともに前3月期)。おおざっぱに言うと、USJの4倍近い規模がある。そのオリエンタルランドの時価総額は1兆6700億円。その4分の1となると、USJの時価総額は4000億円ということなる。上場廃止前のUSJの時価総額は1000億円程度だったから、時価総額が4倍になるということは、株価20万円ということになる。

ゴールドマン・サックスにしても、TOBから6年でその価値が2~4倍になるのだから、大成功の投資ということになるだろう。

第2USJ建設も

またUSJも再上場によって、新たな資金を手にすることができる。ここ数年は資金的制約もあってハリポタに集中投資を余儀なくされていたが、再上場後は新たなる投資が可能になる。

まず最初に考えられるのが、ハリポタの拡張だ。この6月、米オーランドのユニバーサルスタジオには、ハリポタファンにはおなじみの「ダイアゴン横丁」が出現、人気を集めている。恐らく近い将来、USJにも導入されるものと思われる。

そしてさらには、第2のパーク建設構想も浮かんでいる。

オリエンタルランドのように、ディズニーランドの隣にディズニーシーを建設するといった敷地的な余裕はいまのUSJにはない。ハリポタをつくるにしても、駐車場の一部を立体化せざるを得ないほどだった。

当然、第2パークをつくるとなれば、現在のUSJとはまったく違う場所になる。

有力視されているのが、九州か沖縄だ。大阪からも比較的近く、アジアからの観光客も呼び込めるだけに、可能性は高い。さらには、東京オリンピックに合わせて解禁される予定のカジノと一体化した施設の可能性もある。

実際には既出のレポートにもあるように、健康な夢を提供するテーマパークが、「賭博場」と一体化するのはリスクが大きい。橋下徹大阪市長はカジノ解禁に熱心に取り組んできたが、仮に大阪にカジノが誕生するとしても「USJ以外の会社にやってほしい」と釘をさしている。子供が入ることのできないカジノと、大人から子供までが楽しめるテーマパークが並ぶのは、教育上もよくないという判断があるのだろう。この考えに賛同する日本人は多いに違いない。

ただし、最近、産経新聞のインタビューに応じたガンペル・USJ社長は、「われわれはIRではリーダー的な役割が果たせる。カジノの運営能力はないが、企業連合にそういった会社を呼び込むことはできる」と答え、橋下市長の発言に対しては「なぜあのようなことをおっしゃったのか理解できない」と語っている。ガンペル社長自身は、カジノに対して強い興味を持っているようだ。

シンガポールのセントーサ島では、カジノとユニバーサルスタジオが隣接している。というより、この2つが一体になって大型リゾートを形成している。日本人のメンタリティにどこまで受け入れられるかはわからないが、世界的には、カジノとテーマパークの組み合わせはタブーではないし、ラスベガスなどは、街そのものがテーマパークのようなものだ。

第2USJが、どこにどのような形で誕生するか、現時点ではまだ見えてこない。しかし再上場を果たすことができれば、選択肢は格段に広がる。株価とともに、次なる可能性に期待が膨らむ。

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