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特集記事

2014年8月号より

“宿利正史・国際高速鉄道協会理事長

独自の高速鉄道システムを

―― 宿利さんが理事長を務める一般社団法人国際高速鉄道協会(IHRA)は、この4月に誕生したばかりですが、発足までの経緯とその狙いについて聞かせてください。
宿利 今年は日本に新幹線が誕生して50年という大きな節目の年に当たります。その一方で世界に目を転じると、新興国はもちろん、先進国でも多くの国で高速鉄道の計画が浮上しています。この計画において、日本の新幹線システムが検討され、さらに採用されることは、日本にとって非常に意義のあることと考えています。

宿利正史・国際高速鉄道協会理事長
しゅくり・まさふみ 1951年生まれ。74年東京大学法学部を卒業し運輸省(現国土交通省)入省。在インドネシア大使館一等書記官、運輸大臣秘書官、国交省総合政策局長、大臣官房長、国土交通審議官等を歴任後、2011年に事務次官に就任。12年退官。この4月、IHRA初代理事長に就任した。東海道新幹線開通時は中学1年生、初乗車は高校2年生。

日本の新幹線が開業以来50年間、一度も列車起因の死傷事故を起こしていないことは、日本で暮らしていると当たり前のことのように考えてしまいますが、実は画期的なことなのです。しかも全国の主要都市間を、高速、高頻度に大量かつ安全につないでいます。日本は世界に対し、多くのメリットを持つ新幹線システムをもっとアピールしていく必要があります。

なぜ、日本の新幹線が安全かというと、ヨーロッパの高速鉄道などと違って、在来線や貨物線から独立し、道路や在来線と平面交差しない、純粋な高速旅客専用鉄道であることと、速度を制御し絶対に衝突を防ぐATC(自動列車制御装置)の2つの仕組みが、日本の高速鉄道の根幹にあるからです。

この「Crash Avoidance(衝突回避)」の原則により、新幹線は50年間、安全に運行されてきた。このシステムを世界各国に訴え、国際標準化し、日本の新幹線の素晴らしさをより多くの人たちに知ってもらいたい。IHRAはそのために設立されました。

―― 新幹線のシステムを発信するわけですね。
宿利 そうです。同時に、日本の新幹線が誕生してから50年で、どれだけの実績をあげたのか。それによって日本がどのように変わったのかも伝えていく必要があると考えています。経済、社会、ライフスタイルなど、新幹線によって大きな変革がもたらされました。つまり、どのような高速鉄道を採用するかで、その国の未来が変わります。こういうことを伝えることで、新幹線に対する本質的な理解が得られると思います。

―― フランスなどのヨーロッパ諸国や中国も、高速鉄道には力を入れています。その中で日本の新幹線が選ばれるには何が必要でしょうか。
宿利 先ほど、日本の新幹線システムについて説明しましたが、このような考え方に基づいてつくられた高速鉄道は、現時点では、日本と台湾以外にありません。

ヨーロッパの場合、19世紀に鉄道が大きく発達したものの、20世紀に入ってから、自動車と航空にシフトした歴史があります。ところが20世紀後半に再び鉄道が見直され、高速化しようとなった時に、既存のネットワークを活用することになったのです。国境をまたいで鉄道網が整備されていたため、国際高速鉄道としても利用できましたし、既存鉄道の活用ですから、投資額も抑えることができる。

ただし、そこには在来線も走っていれば貨物列車も走っている。既存のシステムに高速鉄道のシステムを加えるわけですから、新幹線のように、システムを一元的に管理することもできません。より複雑なシステムを管理することになり、事故の可能性も高まります。現にヨーロッパ方式の高速鉄道では、何度か事故が起きています。

だからといって、ヨーロッパのシステムが劣っているというつもりはありません。歴史的経緯があっていまのような形になっているのです。

日本でも、かつて新幹線を建設する際、在来線を活用すべきとの議論もありました。しかし日本の場合、ほとんどの鉄道が狭軌のため、高速化がむずかしい。そこで将来の発展を考えたら、専用線を敷くべきだということになったのです。

ですから、高速鉄道を新たに採用しようという国は、その国情や地域特性に合わせて、最適なシステムを選べばいいと思います。そのためにもIHRAが、国際的標準としての新幹線システムを、世界に発信していこうというわけです。

整う政府の支援体制

―― インフラ輸出の際に問題になるのが、日本は政府があまりに関与してこなかったというものです。他国の場合なら、政府ぐるみで輸出を後押ししています。日本はよくも悪くも企業任せというところがあります。
宿利 確かに以前は、政府はODA案件は別として、個別の案件には関わってこなかった。民のことは民にとの姿勢を貫いてきました。でもここ数年で大きく変わりました。官民が連携し、オールジャパンで取り組むようになっていますし、首相以下閣僚も、日本の技術や経験をアピールするようになってきました。

たとえば日立製作所がイギリスで大規模な鉄道案件の受注に成功しましたが、私も国土交通省の立場で関わってきました。この時は、公的なファイナンスのスキームまで変えて、日立をバックアップしています。それまで国際協力銀行(JBIC)は先進国向けの投資金融をやっていなかったのですが、鉄道に関しては先進国向けもJBICの業務に追加したのです。このような支援体制が、以前とは比べものにならないほど整ってきました。

ですから、もちろん企業は企業として最大限努力する。そして政府は様々なツールを用意して支援する。我々IHRAは新幹線のシステムをよく知ってもらう。このような連携した取り組みによって、日本の新幹線システムが世界に広がっていけばいいと考えています。

―― IHRAは、東海、東日本、西日本、九州のJR4社によって結成されました。国鉄の分割・民営化後、ある意味ライバル関係にあった4社がタッグを組む意味は大きいのではないですか。
宿利 4社が同じ目標、同じ意識を持って活動することは非常に意義があることだと思います。

それと同時に、国鉄改革後、4社がそれぞれ切磋琢磨してきたことが、日本の新幹線をさらに進化させたことも忘れてはなりません。

東海道新幹線と九州新幹線では置かれた状況が大きく違います。輸送量はもちろん、新幹線の果たす役割にも違いがある。その中で、どうすれば自らの役割を果たせるか考えた結果、九州新幹線ならではのサービスなどが生まれたのです。つまり4社それぞれが、新幹線システムという根幹を共有しながら、独自性を発揮している。もし一つの組織体で、同じコンセプトで全国の新幹線をつくったとしたら、こうはうまくいかなかったと思います。

そしてこの多様性は、新幹線を世界にアピールする場合にも有利に働きます。システムは同じでも、国や地域の特性に合わせた高速鉄道を提案するノウハウが日本にはあるわけですから。

―― 今後の活動を教えてください。
宿利 様々な機会を通じて、新幹線システムを発信していきます。10月22日には東京で、「高速鉄道国際会議~飛躍する高速鉄道~」を開きます。

 これには世界各国の運輸関係者を含む300名が参加する予定で、日本の新幹線システムの発展の軌跡を振り返るとともに、高速鉄道を導入しようとしている国・地域の計画や課題について情報を共有します。

また、IHRAのホームページなどを通じても、わかりやすく、日本の高速鉄道システムについて発信していく予定です。

最初に、日本のシステムを海外に広めたいと言いましたが、日本国内でも、50年前に採用された、新幹線という極めて優れた先進的鉄道システムについて、よく知らない人が多いと思います。ぜひとも理解を深めていただきたいですね。

(聞き手=本誌編集長・関 慎夫)

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