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2014年4月号より

75%の商品は価格据え置き値下げ 25%は値上げの「併せ技」で勝負

昨年11月下旬、「無印良品」を展開する良品計画の金井政明社長に取材した際、同氏はこう語っていた。

「消費税の表示方法などについては、年明け1月の第3四半期決算で併せて発表しますが、いま言えるのは、やはりわかりやすい総額表示ですよね。(内税か外税かを巡って)小売業界自体がバタバタしているし、政府も暫定の経過措置で、2017年3月までは表示法は何でもいいとしたでしょう。そこがすごく曖昧だし、正直、何でこんなに混乱させるんだろうと思います」
そして年明け。「無印良品はいま、24の国・地域で展開していますが、どこも価格の表示法は総額です。お客さんの視点からいっても、混乱を招くような表示でバタバタすべきではないと判断しました」と、総額表示を正式に表明した。

その上で良品計画では、消費税増税後も取り扱い商品の75%は価格を据え置き、実質値下げに踏み切る。消費者のメリハリ消費は、増税後にさらに進むと見ているためだ。金井氏も「同じ消費者でも、少しお金がかさんでもこだわりたいものと、少しでも安く買いたいものを使い分ける傾向は、もっと鮮明になる」としていた。

同社ではこれまで、「ずっと良い値。」といったキャンペーンをしてきたこともあり、日用品に関しては価格訴求を継続するというわけだ。実質値下げ分は、生産委託先を中国からさらに工賃の安い東南アジアに移管したり、物流コストを圧縮することで吸収するという。

こうした実質値下げは、低価格にこだわる巨大流通企業のイオン、あるいは日本のアパレル関連企業として初めて売上高1兆円を超えた、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングなど、スケールメリットを生かせる企業か、高い自己資本比率など企業体力に自信のあるところでなければなかなか難しい。良品計画の場合は後者の例だが、両方の要因を満たせているファーストリテイリングは今回、税抜きの本体価格は維持し、意外にも増税分の3%は消費者に転嫁することとした。

無印良品は“メリハリ消費”にキメ細かく対応していく。

もちろん、良品計画の考え方はメリハリ消費を見据えているだけに、価格据え置きをしない商品については、さらにクオリティや付加価値を上げ、価格もその分上げる政策を取る。「ファニチャー(家具)などは、その1つの事例になると思います」(同社幹部)

良品計画の商品領域は、鉛筆1本、消しゴム1個から家電製品や住宅までと実に幅広く、それが一方では値下げ、一方では価値を上げて価格も上げることができるゆえんともいえる。その点、カジュアル衣料に集中するファーストリテイリング、あるいはシューズチェーンのABCマートといった商品ジャンルが少ない企業では価格のメリハリはつけづらい。

ならば、食品がメインとはいえ、家電製品のプライベートブランドまで手がけるイオンはどうかといえば、非食品ジャンルでも価格訴求を強めざるを得ない。

最近は、イオンにも“イオニスト”と呼ばれて、食生活から身の回り品までほとんどをイオン製品で賄ってしまう人たちもいるらしいが、それは積極的にそうしているというより、郊外や地方住まいの人が、近隣にイオンの大型店舗があるから事足りてしまう、というほうが近いだろう。

その点、良品計画の場合は端から万人に受け入れてもらおうというスタンスではなく、それが日用品と付加価値商品とで価格政策を変えられる要員になっているといえる。

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