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特集記事

2014年4月号より

中小企業経営者必見! 消費税を価格転嫁する方法

昨年後半から今年にかけて、メディアに「転嫁Gメン」という言葉が躍った。

転嫁Gメンとは、転嫁対策調査官のこと。昨年10月に施行された「消費税転嫁対策特別措置法」に基づき、消費税分の価格転嫁拒否をした企業などを取り締まるために経済産業省等が結成した。転嫁拒否の疑いがある企業には順次、立ち入り検査を行い、悪質な場合は企業名も公表していくという。

「すでにイエローカードを出している企業はある」(野田毅・自民党税調会長)と言うように、転嫁Gメンは立入検査を始めており、4月1日の消費税率引き上げを前に監視の目を強めている形だ。

1989年の消費税法施行から25年、消費税率を取り巻く環境は大きく変わろうとしている。3%から始まった消費税は、97年の5%への引き上げを経て、今年4月に8%に引き上げられる。しかも今回は15年に10%まで引き上げられることが前提。国民の経済活動に大きな影響を与えるのは必至だ。

89年と97年の時には、日本の景気を悪化させる元凶になったとも言われる。しかし今回は、同じ轍は踏まないと、さまざまな対策を講じている。その代表的な策のひとつが、前述の消費税転嫁対策特別措置法の制定だ。これは中小企業等が、大規模小売事業者等から価格転嫁拒否や値下げ強要を受けることなく、円滑かつ適正に消費税を価格転嫁できることを盛り込んだ法律。いわゆる下請けいじめを回避させる狙いがある。

この法律を中心に、行政側が消費税引き上げにあたって、どのように動いているのかをみてみよう。

4つの禁止行為

中小企業庁が配布している「消費税転嫁万全対策マニュアル」。ホームページからもダウンロードできる。

今回の消費税率引き上げにともなって制定された消費税転嫁対策特別措置法には、大きく4つの禁止行為が掲げられている。

(1)減額(2)買いたたき(3)商品購入・役務利用または利益提供の要請(4)本体価格での交渉の拒否。加えて、これらの情報提供を行った者に対する報復行為も禁止されている。

(1)減額とは、消費税相当分を払わないこと。実際にビジネスの上で起こり得る例を挙げれば、すでに契約された対価から、消費税引き上げに際して減じて支払う、つまり消費税引き上げ分を上乗せした結果、計算上生ずる端数を対価から一方的に切り捨てて支払うこと。あるいは内税で取引されている場合、3%分を上乗せせず、そのまま内税で処理してしまうこと、などがあるだろう。

(2)買いたたきとは、読んで字のごとく、合理的な理由がないのに値引きを要求し、増税分を上乗せした額より低い額を求めること。ただし、大量発注等、客観的コスト削減効果が生じている場合は、当事者間の自由な価格交渉の結果として対価に反映させるものとして、買いたたきにはあたらないとする。

(3)商品購入・役務利用または利益提供の要請は、増税分の全部または一部の転嫁を受け入れる代わりに、自社商品を購入させたり自社サービスを利用させるなど、経済上の利益を提供させること。

(4)本体価格での交渉の拒否とは、本体価格に消費税を加えた総額表示のみの見積書を提出させるなど、消費税を切り分けない価格交渉をすること。(2)の買いたたきに抵触する可能性もある。

そしてこれらの事実を公正取引委員会、主務大臣、中小企業庁長官に対して知らせたことを理由として、取引数量を削減したり、取引を停止したり、不利益な取り扱いをした場合は報復行為とみなされ、勧告・公表の対象になる。

これらの違反に対する是正措置は当然行われ、勧告に従わない場合は独占禁止法に基づいて処分されることになる。

「89年、97年の時には、独占禁止法と下請代金支払遅延等防止法という法律で取り締まっていましたが、民間企業にとっては転嫁が難しい状況だった。消費税率の引き上げによって利益が目減りすることは避けたいというのは、産業界全体の総意としてあるものです」(中小企業庁事業環境部財務課)

そこで活躍するのが冒頭に登場した転嫁Gメンだ。経済産業省は昨年10月に転嫁Gメン474人を採用。公正取引委員会も94人を採用し、総勢568人体制を組んでいる。

「被害を受けている事業者さんからお話があった場合には、消費税転嫁対策措置を執行するために、事業者の方にヒアリングをしたり、立ち入り検査をしたり、指導助言を行っていく。東京だけでなく全国の経済産業局に配置しています」(同)

相談窓口は別表のとおりだが、実は消費税転嫁対策特別措置法は、経済産業省だけが取り締まる法律ではなく、主務大臣は多岐にわたる。具体的に自分の相談内容が公正取引委員会の管轄なのか、消費者庁なのか、財務省なのか、判断するのは難しい。そのため、相談事があればまず「消費税価格転嫁等総合相談センター」に連絡を入れるのが賢明だ。

「消費税転嫁対策特別措置法の特徴として、各省庁が事業所管大臣として、所管団体への指導ができるようになっていることがあります。従来の独占禁止法と下請代金支払遅延等防止法では、基本的に中小企業庁と公正取引委員会の範疇にとどまっていたわけですが、今回は全省庁に監督権限・立ち入り検閲権限を付与していますので、各省庁が自分の権限として、所管の事業者を指導監督する体制になっています。

ただ、役割が分かれていますから、それを改善するために消費税価格転嫁対策総合相談センターを設置して、専用ダイヤルをつくっています。ここに電話をすれば、各省庁の担当に繋ぐようになっていますので、事業者がたらいまわしにあうようなことがないようにしています」(同)

転嫁拒否をする業界

問題は、弱い立場である下請け業者が相談をするかどうか。訴えがなければ取り締まれないのでは意味がない。

「中小企業庁と公正取引委員会で、昨年11月に書面による消費税転嫁拒否に関する調査をしました。15万事業者を対象に行った結果、取引先に対して既に買いたたき等を行っているか、今後行う可能性があるとみられる事業者が、建設業、製造業、卸売業・小売業を中心に存在することがわかっています。

第三者からの通報が入る場合もあるでしょうし、こうした調査から、下請代金支払遅延等防止法に基づく親事業者の調査も行いまして、いわゆる買い手側に消費税をきちんと引き上げて支払うとしているか、という話も聞いている。必ずしも申告がなくても、行為として間違っていることがあれば、指導に繋げていきます」(同)

15万社のうち、回答があったのは1万209社。このうち、転嫁拒否を受けている、懸念しているとしたのは750社になる。また、転嫁拒否を行っている、行う懸念がある買い手側事業者も268社(別表参照)。日本の中小企業は約400万社と言われているが、少なからず転嫁拒否が行われる実態があるということだ。

調査結果を受けて経済産業省は、国土交通省や公正取引委員会と連名で、転嫁を要請する文書を建設業、製造業、卸売業・小売業に属する業界団体(計575団体)に送っている。どの程度の効果があるのかはともかく、転嫁Gメンは今年になって件の268社への立ち入り調査をスタート。4月1日以降、発覚すれば、より厳しく取り締まるものと思われる。転嫁Gメンの活躍が大きく報道されればされるほど、抑止効果に繋がるはずだ。

「消費税の転嫁拒否等に対する処理スキーム」は次図の通りだが、まずは売り手側(転嫁拒否等をされた事業者)へのヒアリングから始まり、買い手側(転嫁拒否をしている事業者)へのヒアリング、立ち入り検査が行われる。ここで悪質な場合は公正取引委員会による勧告・公表へと繋がっていく。

実際に中小企業を経営している経営者が、この一連の消費税転嫁対策を活用しなければ意味がない。中小企業庁を中心に、広報活動の強化が求められる。

「昨年、中小企業関係4団体(日本商工会議所、全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会、全国商店街振興組合連合会)の協力を得て、消費税に関する講習会を7500回実施し、17万人の方にご参加いただきました。

『消費税転嫁万全対策マニュアル』も、より簡略な『消費税の手引き』と合わせて90万部以上、事業者さんにお届けしています。企業経営者だけでなく、経理担当、営業担当の方にも広く認識いただけるよう取り組んでいます。

すでに政府広報の協力を得て、主要紙や地方紙に広告の形で周知を図っています。そして中小企業4団体に相談窓口を設置していただき、全国で2336カ所運営しています。窓口では税理士の方などに相談できるようにしていますので、商工会などに来たついでに寄っていただけるよう、環境整備を進めているところです」(同)

しかし、売り手側が、買い手側の要請を受けずに身銭を切るという形自体は、禁止の対象にはなっていない。「買い手側に消費税を負担してほしいのに、負担してくれない」というのが転嫁拒否であり、売り手側が自分のほうから値下げを申し出てしまっては、この法律の取り締まりの対象にはならないので注意が必要だ。

新しいルール

また、この消費税転嫁対策特別措置法においては、消費税を円滑に転嫁するための新しいルールも決められている。

その一つが消費税転嫁を阻害する表示の是正だ。「消費税は転嫁しません」「消費税は当店が負担します」といった宣伝文句や広告を行うことが禁止されている。前回の税率アップ時に謳われた「消費税還元セール」といった宣伝も禁止された。あくまでも消費者が消費税を負担しているのであって、負担が軽減されているような誤認をさせないようにしなければいけない。

ただ、事業者の企業努力による価格設定は制限されないため、値引きをするにしても、宣伝文句には気をつけなければならない。ちなみに「消費税8%還元セール」は禁止だが、単に「3%値下げ」は禁止されない。境界線は「消費税」を意味することが客観的に明らかであるかどうか、にある。

ちなみに消費税の転嫁を阻害する表示に対する指導・勧告を行うのは消費者庁だ。

もう一つは、総額表示の特例。これまでは、商品やサービスの価格表示をする際は、消費税分を含めた総額表示が原則とされてきた。今回は「表示価格が税込み価格であると誤認されないための措置」として、「○○○円+税」「○○○円(税抜)」「○○○円(本体価格)」といった表記が可能になる。逆に、税抜価格を税込価格であると一般消費者が誤認する場合には、景品表示法で警告の対象になる。

そして「転嫁カルテル」「表示カルテル」に関して、独占禁止法の適用除外制度が設けられた。

転嫁カルテルは、参加事業者の3分の2以上が中小事業者である場合に、「消費税の価格転嫁の方法の決定にかかる共同行為」が認められる。たとえば本体価格98円の場合、消費税額は7.84円になるが、これを8円として処理すると取り決める場合などがある。もちろん本体価格の統一は、競争を損うため適用除外の対象にはならない。

表示カルテルは「消費税の表示方法の決定にかかる共同行為」のことで、税込価格と消費税額を並べて表示するなど、統一的な表示方法を用いる決定などがある。

今回の消費税率引き上げには、消費税にまつわる様々な新しい取り決めも含まれている。しっかり認識したうえで納税していきたい。

(本誌・児玉智浩)

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