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2014年2月号より

楽天ナンバー2が語る 三木谷浩史と楽天経済圏
國重惇史 楽天副社長

國重惇史 楽天副社長

くにしげ・あつし 1945年12月23日生まれ。68年東京大学経済学部卒。同年住友銀行(現・三井住友銀行)入行。87年渋谷東口支店長、88年業務渉外部部付部長、90年審議役融資第三部出仕。91年本店営業第一部長、93年丸の内支店長、94年取締役入りし、95年日本橋支店長、97 年本店支配人東京駐在。同年6月住友キャピタル証券副社長、99年DLJディレクトSFG証券(現・楽天証券)社長。2003年に楽天が買収し、05年から楽天副社長、06年楽天証券会長、08年イーバンク銀行(現・楽天銀行)社長。12年同行会長。住友銀行時代は大蔵省(現・財務省)担当いわゆるMOF担を10年務めたエリート。親子2代の住友マン。

楽天会員8700万人

―― 12月3日に東証1部に昇格しました。なぜこのタイミングでの上場になったんでしょうか。
國重 東証1部と米ナスダックは、いつかは行こうという話はあったんですよ。ただ、楽天はもともとヤンチャな企業だから、箔がついたという議論とは違う。上場した当時は、ベンチャー企業=ジャスダック、ナスダックをイメージしていたんでしょうけど、アメリカでもナスダックの存在感が下がり、ニューヨーク取引所というふうになっています。これまではジャスダックの引きとめもありましたが、ジャスダックは東証の子会社になり、日本のマーケットの変化もあります。グローバルに競争するには、まとまって日本取引所としてひとつのグループで立ち向かっていかなければならない流れになっている。インターネットが社会基盤になり、機が熟してきたということです。

―― 楽天は市場だけでなく、金融や旅行、12月5日からサービスが始まった「楽天でんわ」での通信と、さらに広がっています。「楽天経済圏」の目指すものとはどういったものなんでしょう。
國重 通信は、ビジネスという側面もありますが、インフラです。ネット社会を実現していく上で楽天もインフラに参画していく必要があると思うんですよ。楽天でんわは、20円と高止まりしている携帯電話料金をいかに下げるか。3社寡占状態になっているなかで、楽天が入ることによって競争原理を働かすことができるんじゃないかと。

クレジットカード事業は、顧客獲得キャンペーンを積極的に展開する。

「ゆりかごから墓場まで」という言葉があるように、個人の人生に関すること、少なくともインターネットに関係のあることは楽天経済圏のなかに取り込んでいく。

楽天会員は8700万人、よく利用してくださる方も2000万人います。シナジーの典型的な例が楽天カード。クレジットカードの会員を募るのに、何もメリットがなければ入会してくれないでしょう。ヤフーさんに広告を出すにしても、膨大な広告費がかかる。8700万人の会員がいて、楽天市場で頻繁に買い物をする人がいるわけですから、その方に「楽天カードを使いませんか、ポイントが付きますよ」とアプローチする。顧客獲得コストが安くすむために、入会すれば何千ポイントとお客様に還元できるわけです。同じように、他のサービスについても、ポイントで還元できますし、あらゆるサービスで使えますから、ポイントが現金と同じ意味を持つ。

―― インフラという意味では、12年に「楽天スーパーロジスティクスサービス」が開始されるなど、物流にも参入していますね。
國重 アマゾンさんは物流をフックに伸ばしていこうとしているでしょう。「アマゾンプライム」のように年間3900円払うと配送料が無料になるみたいな。対抗上、やらざるを得ないところもある。

アマゾンさんは物流もあるけれども、自分で在庫を持つBtoCですよね。楽天は、売るのは我々でなく店舗さんです。BtoBtoCのサービス。その意味では物流のネットワークをつくるのは大変難しい。店舗さんから商品をお預かりして、それを届けるわけですから。でも、今後アマゾンさんと競争していくという意味では、国内だけでなく、グローバルな視点でも物流は必要だと思います。

―― 競争という意味では、ヤフーショッピングが法人も個人も出店料無料という、いわば楽天、アマゾンに宣戦布告をしてきたわけですが。
國重 あれは宣戦布告ではなく、孫さん(正義氏・ソフトバンク社長)の撤退宣言だと受け止めています。ヤフーはもともと広告を集めて稼ぐモデルなんです。ECでは儲からなかった。出店料は無料にするから、代わりに広告料をどんどん使ってねという考え方です。募集したら1日に5万件の申し込みがあったそうですが、なぜあんなことをしたのか。なぜなら1日に5万件なんて出店の審査ができないですよ。

出店料無料を発表する前に、ヤフーショッピングに出店していた店舗が使用期限切れの薬品を売っていたことが東京都に指摘された。ヤフーさんではなく店舗がやったことですが、それをチェックするのがマーケットプレイスの仕事なんです。ニセモノや期限切れを売っていないか、きちんと巡回して見ていなければならない。そのためにもきちんとお金をもらってやらなければならない。中国にタオバオというECモールがありますが、そこも出店料は無料で、一定の売り上げが立てば手数料を取るモデル。やはりニセモノがたくさん売られている。中国人はたいして気にしないのかもしれませんが、日本人はそうではない。我々が心配しているのは、ヤフーショッピングがそれをやることによって、ECはいいかげんなものだと消費者が思ってしまうことです。

―― 実際、影響はなかったんですか?
國重 無料が発表された日は、ずいぶん株価が下がりましたが、売り上げ等の影響はないですね。お客様には出店料がいくらかなんて関係ないですし。心配することはないとわかりましたから、現在、株価はむしろ上がっています。

日本一で40%増

―― 楽天ゴールデンイーグルスが日本一になったことも大きかったのではないですか。
國重 9月の楽天市場の流通総額が、前年同月比でプラス40%を超えました。11月はもっとすごかったかもしれない。やはり我々も、野球ってすごいんだと思いましたよ(笑)。

―― 日頃、野球を観ない女性たちまで、楽天市場のセールを期待して楽天球団を応援したとか。
國重 負けても「応援ありがとうセール」みたいなのをやるつもりだったんですけどね(笑)。昨年までも応援感謝セールはやっていたんですけど、これは通常の楽天会員の方が買われる。今回の優勝セールは、ふだん楽天で買い物をされていない新規のユーザーがどっと入ってきた。

そして「あの弱小球団の楽天が優勝だ」と、巨人ファンまで楽天を応援してくれたそうですから。東北のエンパワーメント。球団の立花陽三社長は東北の全部の県に優勝報告をしに行っています。特に今回の日本シリーズは第7戦までもつれて、仙台地区では瞬間最高視聴率も60.4%で、盛り上がりましたね。

ネット販売の攻防

―― 三木谷社長が代表理事を務める新経済連盟ですが、楽天にとってどのような存在ですか。
國重 建前的には、新経連は、政府の政策なり、海外の政策に対して、我々の考えを伝えていくポリシーメイキング。しかし実際は、常に変革していく。経団連さんはエスタブリッシュメントですよ。

新経連は既得権益に対して変革をしていき、楽天の利害ではなく、ベンチャー企業や新しい企業のチャレンジを進めていく。コンセプトは、アントレプレナーシップ、イノベーション、グローバルの3つ。グローバルに活動していくために、グローバルスタンダードを導入していこう、ということです。

よくガラパゴス現象と言われますが、日本特有のもの、日本だけをプロテクトするものです。これからはマーケットも世界ですし、労働力も含めて世界に通用するものをつくっていかなくてはいけない。

―― 薬のネット販売に関する議論のなかで、薬事法改正で99.8%解禁されるにもかかわらず、残りの0.2%に強く反発しました。
國重 私も新経連顧問という肩書で出席しましたが、あれはひとつの象徴的なテーマでした。

薬剤師会やチェーンドラッグ協会などの既得権益の組織は、ネットが入ってくることによる価格競争で、甘い汁を吸えなくなることを恐れたわけです。そこで持ち出してきたのは、対面原則。買いに来た人の顔色を見たり、匂いを嗅いだりしなくてはダメだと。我々はそれに対して、ネットのコミュニケーションのほうが勝っていることはあっても、少なくとも劣っていることはないという主張をした。この意味で、重要なテーマなんです。

一般医薬品のネット販売の一部規制に抗議する会見を開いた。(撮影・堀田喬)

市販薬は8000億円くらいのマーケットで、ネットが10%入っても800億円の市場にしかすぎません。その裏にあるのは、9兆円とも言われている処方薬の販売です。年々増えていっている。そのマーケットを薬剤師や調剤薬局が守ろうとしている。市販薬は8000億円しかないマーケットですが、ここが崩れるとアリの一穴で処方薬もやられる。0.1%でもいいから、ネットで売ってはいけない薬を用意しなくてはならなかった。それが、禁止された28品目というわけです。

よく言うのは、かつて金融機関で口座を開こうとすると、対面原則で身分証明書を見せてというものだった。それが写真を撮って送ればいいというふうに、金融機関もネットでいいという感じになっている。実際薬局で薬を買う時でも、この薬をくださいと言えば、レジ袋に入れて、手渡すだけでしょう。処方箋薬でも、安倍総理が薬局で順番待ちして薬をもらいに行っているのか。決してフェイストゥフェイスでなければダメだというものではない。

―― 三木谷さんは、この1%が認められないのであれば、産業競争力会議の議員を辞めるとまで言っていましたが、結局辞めなかった。
國重 ITを推進する新しい会議体をつくるからと安倍総理から慰留されて、留まったんです。辞めるべきだという人もいれば、辞めるべきではないという人もいた。三木谷自身も相当悩んだと思います。安倍総理から、ただ慰留されただけなら辞めたでしょう。ネットでのコミュニケーションを広げるためにITの振興に関するセクションをつくると言われたので、自分も関与して発言していかなくてはいけないと判断したのでしょう。

私自身の気持ちを言うと、辞めてもいいと思った。三木谷は従来、5割くらい海外に行って、5割が日本でした。政策関連とか新経連が入ってきて、3割の時間をとられるようになり、残りの7割の半分が海外で半分が日本。35%ずつになってしまった。

だから社長室には長蛇の列ができてしまっています。政策関連の仕事がなくなれば、はるかに仕事はしやすくなる。規定上の決済や、判断を仰ぐことはどんな組織でもあるから、彼の時間が空けば空くほどいいんです。

最も成長したのが三木谷氏

―― 國重さんから見た三木谷さんはどういう人物ですか。
國重 私が楽天グループに入って10年経ちますが、ずっと見ていると、一番成長しているのが三木谷浩史なんです。その次に会社。ちょっと遅れたところから、役職員が足をもつれさせながら追っかけて成長しようとしている。夏休み、彼は1カ月間サンフランシスコに行くんです。9月の初めに、執行役員に集まってもらって合宿をやる。その時に彼は、向こうのシリコンバレーとかのトップと意見交換したり、昼飯食ったり、たっぷりと情報を仕入れてくる。こっちはずっと日本ですから、情報格差が開いていく一方なんです。

―― 以前は経団連に入り、体制に近いイメージでしたが、いまはむしろ反発するイメージがあります。
國重 確かに経団連に入った(11年退会)わけですが、当時の会長が奥田碩さん(トヨタ自動車元会長)だった。奥田さんは必ずしも体制の人ではなく、いろんな変革もやってきた方です。奥田さんには三木谷もずいぶんかわいがってもらいましたし、奥田さんを慕って経団連に入った部分もかなりあったのではないか。

彼自身、若い頃は“じじ殺し”と言われていましたが、彼が発言しても、若造が何か言っている程度で終わっていた。ところが彼自身が成長し、彼が意見を言えば聞く人が出てきたということ。その意味では思ったことを言うようになり、メディアの人も聞きにいくのでしょう。

―― 多忙なゆえに、実力あるナンバー2、または後継者が必要になると思いますが、いかがですか。
國重 後継者については、まだ三木谷は48歳ですからね。少なくとも10~15年は問題ないでしょう。ただ役員も若く、常務陣も40代半ばから50代前半。いまのままだと、役員は10年以上働けますから、下から上がってこられなくなってしまう。若い人に同じ仕事をやらせ続けるわけにもいかないし、どう登用していくか。彼がいま一番考えていることだと思いますよ。

(聞き手=本誌・児玉智浩)

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