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特集記事

2013年8月号より

ディズニーランド30年で攻勢当面は好循環で死角なし
三木谷浩史・楽天社長

三木谷浩史・楽天社長
政界に影響力を持つベンチャー経営者

起業家のなかでも勝ち組と言われる三木谷浩史氏。その影響力は楽天の企業の枠を超えるまでになった。
2010年2月、三木谷氏は「eビジネス推進連合会」を立ち上げた。IT業界を巻き込み、ネット選挙活動の解禁や医薬品の通信販売規制に反対する目的で作られたものだ。当初は参加企業の担当者レベルの活動だったが、11年に楽天が経団連を脱退してから風向きが変わる。震災後、一貫して電力会社を擁護した経団連に愛想をつかした三木谷氏は、12年6月に団体名を「新経済連盟」に改称。政治への働きかけを強めていく。

昨年12月、三木谷氏は経団連に先んじて政権を奪回したばかりの安倍晋三首相と会談。その後産業競争力会議のメンバーにも選ばれている。4月には世界中のIT起業家を集めて新経済サミットを開催し、前夜祭に安倍首相を登場させるなど、政権との距離は非常に近い。

ネット選挙運動の解禁も実現し、医薬品のインターネット販売も一般薬品の99%が解禁される見通し。三木谷氏の政治への影響力は日増しに強まっている。

新浪剛史・ローソン社長

新浪剛史・ローソン社長
自ら動くことで活路は開ける

三木谷浩史・楽天社長とともに、産業競争力会議で積極的に発言したのがローソンの新浪剛史社長だ。

安倍首相の賃上げ要請に対しては真っ先に実行を約束し、最近では経済成長のためには女性の戦力化が必要と、女性が働きやすい環境づくりの必要性を提唱している。

そこからは、働く現場から日本を変えていこうという決意がうかがえる。

世の中を変えたいのであれば、人が変えてくれるのを待つのではなく、自ら動き始める。それがやがては大きな動きにつながるとの信念があ
る。

経営者としても同様で、他社との同質化を徹底的に排除する。同質化にはリスクは少ない。しかし新浪氏はそれをよしとはしなかった。安全かもしれないが発展はない。リスクはあっても独自路線を行く。それによって他社との差別化を図るというのが新浪流だ。

新浪氏が三菱商事から派遣されてローソン社長になったのは2002年。それから11年で、完全にローソンを新浪色に染め上げた。

豊田章男・トヨタ自動車社長

豊田章男・トヨタ自動車社長
苦しい時こそ攻める経営

2009年に社長に就任した豊田章男氏だが、就任後の経営環境は逆風続きだった。景気後退に加え、ブレーキやアクセルなど品質問題、東日本大震災など、毎年のように苦難に襲われた。11年には米GM、独VWに抜かれ、トヨタは世界販売3位に転落してしまう。

豊田氏は震災間もない11年7月、東北復興支援として宮城県にエンジン工場の設立を発表する。これは景気低迷によって凍結されていた計画だったが、販売台数が回復していないにもかかわらず、雇用を含めた設備投資にふみきったのである。東北工場は12年末からエンジン生産を開始。国内販売トップのHV車「アクア」に搭載されている。トヨタは国内生産300万台体制を維持しつつ、北米、新興国を中心に販売を拡大。12年は転落からわずか1年で世界販売台数トップに返り咲いた。

今年3月には震災前に発表した「グローバルビジョン」実現に向けて自動車事業を4つのユニットに分ける新体制を発表。トップに立ってなお競争力を磨く体制づくりに着手している。

鳥井信宏・サントリー食品インターナショナル社長

鳥井信宏・サントリー食品インターナショナル社長
飲料メーカーの巨人が7月3日ついに上場へ

今年最大の株式公開となる、サントリー食品インターナショナルが東証1部に上場する。竹中工務店と並んで、かつては“非上場の双璧”と言われたサントリーHDが、傘下の最大企業を証券市場に送り出すのだ。発行価格が3800円なら時価総額は1兆1742億円。食品大手の時価総額としてはキリンホールディングス、アサヒグループホールディングスに次ぐが、サントリー食品は飲料事業だけだから、キリンやアサヒに比べて、飲料マーケットでのシェアやプレゼンスの高さが窺える。

そのサントリー食品で、昨年1月から社長を務めるのが鳥井信宏氏。サントリーHD社長の佐治信忠氏の甥にあたり、40代後半の若さ。かつてはプレミアム戦略部長として、いまやサントリーの看板ビールとなった「ザ・プレミアム・モルツ」の販促に奔走、モンドセレクションでの3年連続最高金賞受賞を武器に売り上げを伸ばした。近年は、仏の飲料メーカー、オランジーナ社を約3000億円で買収した案件を、M&A担当としてまとめた。その鳥井氏がいよいよ“パブリック・デビュー”だ。

小林喜光・三菱ケミカルホールディングス社長

小林喜光・三菱ケミカルホールディングス社長
正論で誰とでも戦う指折りの「異能社長」

いま、産業界でも有数の“お忙氏”なのが小林喜光・三菱ケミカルHD社長だ。総合化学首位の同社で現職社長のまま、昨年は東京電力の社外取締役に就き、今年は安倍政権の経済財政諮問会議の民間メンバーに選ばれた。それだけ小林氏の見識や剛腕が評価されてのことだ。実際、歯に衣着せぬ同氏の発言や大胆な経営への注目度は高い。「世界と戦うためには規模が要る」として、再編の進まぬ化学業界では異例の大型グループ再編(傘下に三菱化学、三菱レイヨン、三菱樹脂、田辺三菱製薬)を実行した男として知られる。

また、発言も小気味いい。「三菱自動車なんて、他の自動車メーカーとの取引と比べて一番疎遠。金曜会(三菱グループの社長会)も単なる食事会の域を出ない」とバッサリ。さらに、トヨタ自動車の社長らも参加した部品、部材メーカーとの会合でも「これからは隷属的な関係の返上をお願いしたい」と宣言し、関係者の度肝を抜いた。会社を変える意味と社員の“ゆでガエル”化防止の思いから、自宅と社長室で大きなカエルを飼う、異能社長の代表だ。

大野直竹・大和ハウス工業社長

大野直竹・大和ハウス工業社長
2兆円の次は3兆円、鳴り止まない進軍ラッパ

大和ハウス工業の前3月期の売上高は、2兆79億円と、ついに2兆円の大台を超えた。建設・住宅・不動産業界では、前人未踏の領域に踏み出した。

それでいながら、「2兆円は3兆円へのスタートにすぎない」と、すでに次の目標に向かって檄を飛ばしているのが、同社社長の大野直竹氏だ。

M&Aにも積極的で、昨年には東京電力から老人ホーム事業を買収し、その後、中堅ゼネコンのフジタを傘下に収めた。そして今年になってマンション大手のコスモスイニシアを子会社化した。これによって大和ハウスはマンション業界5位の座を手に入れている。

常識的に考えれば、少子高齢化によって日本の住宅・不動産業界は成長の余地があまりないように思えるのだが、「全体のパイは増えなくてもシェアを伸ばすことで成長できる」との信念はいささかも揺るがない。これは、あらゆる業種・業界にも当てはまる。成熟産業でもいくらでもチャンスをつくることは可能なのだ。

古森重隆・富士フイルムホールディングス会長

古森重隆・富士フイルムホールディングス会長
トップの決断力で企業は進化する

富士フイルムの変身は、企業進化論のケーススタディだ。

国内写真フィルムでは圧倒的シェアを誇り、世界でもコダックと拮抗するほどのポジションにありながら、デジカメの普及を予見するや時代は変わったと判断、脱フィルムへと経営の舵を切った。

これを主導したのが富士フイルムホールディングスの古森重隆会長で、「激変期には思い切って果断にやらなければダメ」を実践した結果が、電子機器から医薬品、化粧品まで手掛ける現在の富士フイルムの姿で幅広くある。

古森氏が嫌うのは「安定志向」。変わることを嫌い、恐れる姿勢である。それは無責任と同義語だと古森氏は言う。ビジネスモデルは砂上の楼閣と同じで、油断するとすぐに崩れてしまう。だからこそ古森氏は、新しい成長戦略に死にもの狂いで取り組んできた。

ライバルのコダックは、昨年、倒産した。片や富士フィルムは見事に事業構造の転換に成功した。ひとえにトップの決断力が両社の明暗を分けたのだ。

柳井 正・ファーストリテイリング社長

柳井 正・ファーストリテイリング社長
本気で「世界1」を狙う “日の丸アパレル”の賭け

ユニクロを展開する、ファーストリテイリング(FR)の柳井正会長兼社長が「2020年に売上高5兆円、経常利益1兆円」という目標を掲げたのは、4年近く前の09年9月のこと。今期(13年8月期)の業績で初めて売上高1兆円を突破する見通しだが、流通小売業でこの5兆円の数字をクリアしているのは、多様な業態を擁するセブン&アイHDとイオンの2社のみ。その水準に、アパレル製造小売り1本のFRが挑むというのだから、達成するには大型のM&Aか、国内外で怒涛の出店を続ける以外なくいまも大量出店中だ。

自動車業界や電機業界と違い、もともと国際競争とは縁遠かったアパレル業界で、本気で「世界1になる」と宣言した柳井氏には、“日の丸アパレル”が世界に伍せるかどうかの期待が集まるが、その実現のため、同氏はあらゆるものをグローバルで統一しようともする。一例が、今年物議を醸した「世界同一賃金」と「成果が出ない社員は年収100万円でも仕方がない」という発言だ。内容の可否は別にして、世界と戦う気概は産業界でも指折りといえる。

澤田秀雄・エイチ・アイ・エス会長

澤田秀雄・エイチ・アイ・エス会長
観光地図を塗り変える不世出のパイオニア魂

エイチ・アイ・エス会長でハウステンボス社長の澤田秀雄氏を一言で形容すれば、チャレンジ対象のハードルが高いほど燃える男だといえる。祖業のH.I.S.で格安旅行を実現し、1990年代後半にはスカイマークを立ち上げて、寡占状態の航空界に風穴を開けた。規制の強い業界で正面突破してきた澤田氏の手腕は、誰もが認めるところだ。3年前の2010年3月、今度は再建の担い手が見つからず、それまで18年間も赤字続きだったハウステンボスの社長に就任し、1年で黒字化させた。

最近では、タイを拠点とする国際チャーター専門航空会社の設立が話題に。7月19日には、その第1便が飛び立つ。世は日本発の格安航空流行りだが、澤田氏はタイをASEANのハブと考え、航空ボーダーレス時代も先取りした。「必ず大航海時代が来る」と公言、クルーズ船事業にも積極的だ。澤田ホールディングス社長としての顔もある。同社ではモンゴルの銀行買収に続き昨年末、ロシアのソリッド銀行に40%出資。東京での観光大学立ち上げ構想もあり、澤田氏の「夢」はいまだ途上だ。

孫 正義・ソフトバンク社長

孫 正義・ソフトバンク社長
欲しいものは何が何でも手に入れる

日本を代表する攻撃的経営者といえばソフトバンクの孫正義社長をおいてほかにいない。

数年前に、「新たなる借金はもうしない」と語っておきながら、舌の根も乾かぬうちに米携帯大手のスプリント・ネクステルの買収に手を挙げる。買収が決まれば、ソフトバンクは再び2兆円の借金を背負うことになる。ここまでくると「性」というよりほかはない。

1990年代、店頭公開間もないソフトバンクが米企業を次々と買収するのを恐れた興銀を筆頭とする銀行団は、「大規模買収する時は銀行の同意を得る」との条件を飲ませたことがあった。そうでなければ融資しないと強い姿勢を示したのだ。ところが孫氏は、市場から買収資金を集め、買収に明け暮れる。ヤフーもそうやって手に入れた。

欲しいものはどんな手段をつかっても手に入れる。どんなに状況が厳しくても、全身全霊を傾けて考えれば解決策は見つかる。孫氏のこの信念が、ソフトバンクの成長を支えてきた。そしてその事業欲に終わりはない。

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