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2013年6月号より

ディズニーランド30年で攻勢当面は好循環で死角なし

年初比で株価1.5倍

最高益企業の代表格であるオリエンタルランド(以下OLC)は当分、死角が少ないといえそうだ。前期(2013年3月期)決算の正式発表は4月26日と間もなくだが、前々期に比べて大幅な業績アップは確実。4月15日には東京ディズニーランド開園30周年の節目を迎え、アニバーサリーイヤーとなる今期は、過去最高の入園者数を更新するのもほぼ確実と見られている。同社の上西京一郎社長(COO)もこの4月から、経営戦略本部長・テーマパーク統括本部長委嘱、テーマパーク統括部担当と、最重要部門の担当を兼務となった。

オリエンタルランド社長の上西京一郎氏。

現在、年間配当は120円だが今期、記念配当でもあれば、さらに株価上昇余地が出てくるだろう。株価水準も、今年1月4日に1万450円でスタートした後、3月21日には1.5倍となる1万5820円の年初来高値をつけた。3月末に一度、かなり下落したが、これは配当権利を得た上で一旦、利益確定に動いた投資家が多かったからと見られる。特にOLCの場合は、単位株の100株で園内の1デーパスポートが1枚もらえるという、優待狙いの個人株主も多い(浮動株比率は25.1%)。

こう見てくるとOLC株は基本的には買いなのだが、このまま株価がさらに伸びていくと、これから同社の株購入を検討する個人株主にとっては、投資額がかさむ点が難点か。あとは、30周年のお祭りが終了する来春以降が課題になる。16年になると、今度は東京ディズニーシーが開園15周年の節目がやってくるが、その間の14年、15年をどう盛り上げるかが焦点だからだ。

一番の即効薬は、園内のハード、ソフトのさらなる進化・充実に尽きるのだが、プラスアルファの布石は打っている。去る3月末、ホテル運営子会社のミリアルリゾートホテルズが、ブライトンコーポレーション(親会社は長谷工コーポレーション。4ホテルを所有)を買収したのがそれ。負債を含めた買収総額は百数十億円と目されるが、OLCは売上高が約3900億円で営業利益は約800億円と利益率が20%を超え、自己資本比率も65.1%あって財務基盤は強い。「舞浜一極集中」から脱する上でも好意的に見られる買収だった。

ここからは、30周年で沸くOLC、上西社長のインタビューをお読みいただこう。

過去最高の入園者数

株価データは2012年11月5日から13年4月12日までの週足。株式分割した会社は調整値。

―― 2012年度の入園者数は、30周年を待たずして過去最高になりました(2750万2000人。これまでの最高は25周年だった08年度の2722万1000人。東京ディズニーランドとディズニーシーの累計入園者数は5億6769万人)。
上西 ゲスト(来場者)の入園数全体もそうですが、1人当たりの売上高で言っても、商品の物販、飲食などが順調に推移しています。なので、1人当たりの支出額ではここ2年ぐらい、1万円を超えてきてますね。キャラクターグッズなどの商品も売る努力を重ねる中で、少しずつ上がってきているという感じです。

―― 米国のディズニー本社へ支払うロイヤリティは、年間200億円ぐらいだったかと。
上西 ええ。ロイヤリティは売り上げに対して何パーセントと決まっていますから、売り上げが伸びれば支払い額も上がっていくことになります。もう少し、まけてもらいたいなとは思いますけどね(笑)。

「ゲストの期待を超え続けたい」と語る上西氏。

―― 30周年の4月15日以降、新たな仕掛けも続々かと思いますが、さらなる集客力向上のポイントは何でしょうか。
上西 売り上げが伸びているぶん、正直、ハードルも上がってくるんですが、30周年の大きな節目ですので、もちろん最高の数値を目指します。その施策という意味では、ハード、ソフト両方あると思いますが、ハードではパレードを「ハピネス・イズ・ヒア」に刷新し、5月7日には「スターツアーズ」というアトラクションも完全に新しいもの(「ザ・アドベンチャーズ・コンティニュー」)に変えて、3Dタイプのライド・アトラクションとしてオープンします。ハード面でゲストの満足度を上げるという意味では、この2つが柱ですね。年によって多少の増減はありますが、設備投資は年間で300億円ぐらいかけていますから。

もう1つは、ホスピタリティ(おもてなし)の部分を進化させていきます。30年の感謝の思いも込めて、いままで以上にゲストに“幸せ感”を味わってもらうということで、「ハピネス」をキーワードに1年間、取り組みます。質の高いホスピタリティを体現していき、30周年で来ていただいた方にそれ以降もお越しいただけるような、連続性ある仕掛けをしっかりやっていきたいと思います。

―― 5年前の25周年時に比べると、その後の東日本大震災を挟んで「絆」がキーワードになり、物よりも事、つまり家族や友人との時間を大事にする人が増えました。そこもOLCにとっては追い風でしたね。
上西 ゲストの入園後の平均滞在時間はいま、だいたい9時間弱ぐらいなんですが、非日常の時間を過ごせるという点を、もっともっと磨いて進化させねばと考えています。周年ですと、マーケットとして若干違うのは、宿泊のゲストが増えるということです。過去の統計上もそうなっていますから、来た方々に素晴らしい体験をしていただき、また何年か先に行こうと思っていただけるような仕組みを作ることが大切です。

―― 周年で集客力が例年以上に上がる時こそ、ホスピタリティが、より問われると。
上西 そうです、周年時こそしっかりやらないと次につながりませんので、そういう視点はキャスト全員がしっかり持っていると思います。彼ら彼女らの思いとして、30周年で1つでも多くの笑顔を作ろうと、心から仕事に打ち込んでくれていますので、そこはマネジメント層がもっと松明を上げられるように、さらに成長していかないと。

シニア層へも拡大着々

―― OLCのホスピタリティは、震災時の適格で機敏な対応でも再評価されました。人材教育においては、どこに一番腐心、留意していますか。
上西 たとえば、昨日来ていただいたゲストは次回、昨日を超えるものを期待しているわけですから、キャストがゲストと日々、向かい合っている中で、ゲストが求めているものを常に敏感に感じ取り、その期待をどうしたら超えられるかを、試行錯誤しながら考えるということに尽きます。日々、その積み重ねです。

当社の1つの強みだと思いますが、キャストがディズニーの世界を通じてゲストに喜んでもらい、同時に自分たちも喜びが感じられるというベースがありますので、そこを徹底的に大事にしないと。接客業で給料がもらえるからやるのでなく、ゲストに喜んでもらうことが自分たちの存在意義につながるんだと。そこが重要なポイントだと思っています。

―― 入園者の属性としては、海外から来る人たちの比率も含めて男女比、年齢層別での変化はどうですか。シニアも増えてきているようですが。
上西 この5~10年で、たとえば10%もシニア層が増えたということはないんですが、30年前は、テーマパークというものが日本に初めてできて、何だかよくわからないというのが実情でした。遊園地よりも少し大きくて、もう少しお金をかけたものぐらいのイメージや認識が強かったと思うんですね。当時のシニアは、ディズニーランドにどこまで関心が持てたか疑問でした。

連日、ディズニーを訪れる人で溢れている。

それから30年。いまのシニアの方々は、この30年の間にディズニーのパークを体験されており、思い入れや楽しかった思い出があるので、昔のシニアに比べて来やすさがあります。そこで、入園者の構成年齢の1つ1つのボリュームを上げていく。逆に言えば、さらにきめ細かいマーケティングをやっていかなくてはいけない時代に入ったことは、間違いないと思います。以前のように、新しいアトラクションを作りましたという、話題性だけでは難しい時代になりました。


―― マーケティング上で、何かエピソード的なものはありますか。
上西 商品でよく言われるのは、熊のぬいぐるみの「ダッフィー」というキャラクター商品は、最初に売り出した頃は全然駄目だったんです。でも、当時の商品本部のスタッフが「絶対にキャラクター性がある」ということで、もっと質の高いぬいぐるみにしよう、たとえばもっと肌触りのいいものにしようといった努力を重ねました。

さらに、ディズニーの世界でなぜ、このキャラクターが要るのかというストーリー性ですね。これらを明確に作り上げて地道に広げていった結果、いまではダッフィーの売り上げは非常に高いレベルまできています。最初に出した時、ぬいぐるみとして売れないからとやめていたら、いまはありません。ですから、ゲストに提供するものに関しては、しっかりと考え抜いて価値あるものとして売り出していく。そういった強い意志で取り組むことが大切です。

―― 昨今の円安ですと、海外から来る入園者も増えていますか。
上西 いや、もともと海外の方はそんなに多くはありませんから。

―― 少し先ですが、16年にはディズニーシーが15周年を迎えます。
上西 シーの15周年も、どう盛り上げていくべきかはいまも考えているところですが、もう少し長期の視点で、10年、20年先をどう見ていくかを、向こう何年かでしっかりと検証していかなくてはいけないんだろうなと。パーク用地は(舞浜エリアに)まだあって、それはそれでしっかりと開発していきますが、どこかで土地というのは限界がきますし、クオリティの高いもので、かつ効率性もいいものでゲストの支持も得られるもの。ハードルは高いんですが、もっともっと精査してやっていくつもりです。

もう1つは、パークに来ていただくゲスト層が30年前とは変わってきていますから、子育てを終わった親御さんに引き続き来ていただく、あるいはシニアにも来ていただく要素を、どう取り込んでいくか。

「脱舞浜」へホテル買収

―― 脱舞浜という点では、ブライトンホテル買収が話題です。
上西 狙いの1つは、浦安ブライトンという人気の高いホテルと、ディズニーのパークとの連携をより強化することで、ホテルの価値を上げて宿泊客が増え、ひいてはパークへの来園者数も増やしていく、いい循環を作りたいということ。

もう1つは京都ブライトンホテルです。これは、確かに舞浜(千葉県・浦安市)の「外」に出た1つの大きなチャレンジになると思います。当社のホテルのノウハウ蓄積はまだ10年ですが、ディズニーのパークと共存したホテルで学んできたことで、外で生かせることも当然、あります。そのノウハウを、京都という大きなマーケットがある地域で試し、さらにより良いホテルにしていく。簡単ではないですが、自信はあります。

ベースとしてはホテル事業の経験を生かして、OLCグループとしてのフィールドを広げていくわけです。ディズニーの2つのパークの利益があって初めて外にもチャレンジできるので、パーク運営で得たキャッシュを、ディズニーリゾートの価値を上げるものに投資しながら、外への投資にも資源配分していくと。

―― 舞浜の敷地内でも拡張余力はあると思いますが、周辺の土地も買い足していく用意はありますか。
上西 物件がどう出るかにもよります。この周辺にもいくつか土地は持っていて、いまはバックヤード的な使い方をしていますが、ディズニーの事業と連動性を持っていませんとね。あまり飛び地では難しいので、考え方としてゼロではありませんが、周辺の土地も意外と住宅地だったり浦安市の再開発エリアであったりしますから、何とも言えません。

―― 最後に、上西社長自身、この30年を振り返ると、どうですか。
上西 東京ディズニーランドオープンの3年前に入社して、オープンした時は、このパークが持続してやっていけるのかという世間の見方に対し、入社した人間としても不安があったのは事実です。株主、行政、金融各界の方に感謝したいですし、ここを訪れた人に「幸せを感じられる」と聞かせていただくと、次の30年後もやり続けられる企業グループにしたいなと、改めて強く感じます。

テーマパークというのは平和産業ですし、ディズニーリゾートに来られることで、日常のいろんな不安を払拭したいといった方も多いでしょう。パークの基本、原点は、非日常の体験をしていただくということにありますから。

(聞き手=本誌編集長・河野圭祐)

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