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特集記事

2012年12月号より

ローソンとエンタメで提携 ドラッグストアとも協業

怒涛のセブン-イレブン

小売業の中で唯一、好調を続けてきたコンビニでも息切れ感が漂う中、最大手のセブン-イレブン・ジャパンが、まさに怒涛の攻めに出ている。もはや、セブン&アイ・ホールディングスという持ち株会社の実態は“セブン-イレブン・ホールディングス”に近い。中間決算発表の場で、セブン&アイHDの村田紀敏社長兼COOはこう語っていた。

「業績におけるセブン-イレブンの貢献度は、さらに高くなる。今年度、セブン-イレブンの出店は1350店を計画しているが、上期ですでに半数を超える728店を出せている」
結果、上半期の実績でセブン-イレブン・ジャパンは、営業利益で1000億円超えという驚異的な数字を残した。来年2月の通期決算見通しでも、チェーン全店売り上げは3兆5220億円、国内店舗数も1万4850店と、1万5000という数字が射程に入る。

さらに、空白エリアの一つだった四国での出店も決めた。同社は一度出たら、ドミナント出店で効率を追うため、かなりの勢いで店舗数が増えるだろう。また、これだけの店舗数を持ちながら、「御用聞き」の時代だとして宅配ビジネスにも注力し、まさに隙がない。

一方、元親会社でいまは子会社化している、米国のセブン-イレブンインクのテコ入れもあり、新たにSEJアセットマネジメント&インベストメントを、米国デラウェア州に設立した。資本関係だけでなく、日本のセブン-イレブンが「本家」の商品開発や運営でもイニシアティブを取っていくことになる。セブン&アイHDでは「売り上げ9兆円グループ」と表現することがあるが、これはセブン-イレブンインクに加え、同社が日本以外で展開してきた店舗網などを含めた数字。今回の新会社設立で、名実ともに9兆円の企業集団ということになるのか。

中間決算では総じて最高益だったコンビニ業界だが、それはセブン-イレブン、ローソン、ファミリーマートの三強の話。4位のサークルKサンクス(ユニー系)は減収減益となり「上位3社以外が脱落しかけてきた」(業界関係者)といった見方も広がっている。さらに、5番手でイオン系のミニストップも売り上げは横ばいで減益という決算だった。

ただ、ミニストップは、売り上げ面だけ見れば4位のサークルKサンクスにさえ大きく離されているが、両社には決定的な違いがある。海外店舗の比率だ。ミニストップの今期店舗数の計画では、日本が2218店なのに対し、海外店は2343店と逆転するほど海外比率が高い。

とりわけ多いのが韓国で、1921店を計画している。中間決算発表の場でミニストップの阿部信行社長も、「韓国は出店し始めてすでに22年の歴史があり、現地では日本というより韓国のコンビニだと思われている」と語っていた。一方、国内については「関東、東海、東北の3エリアに比較的強いのが当社」と言う。


最強のセブン―イレブンに対し、ミニストップはローソンにどこまで接近するかが焦点だ。


調剤薬局大手との共通点

以前から囁かれているのが、ミニストップのローソンへの合流話。イオンの筆頭株主が三菱商事、ローソンは三菱商事傘下という接点からきているのだが、そうした資本関係以外でも親和性はありそうだ。というのは、ローソンはコンビニ三強の中で海外展開では出遅れている。その点、ミニストップは海外店舗が多い。またローソンは、東京エリアに強かった旧am/pmをファミリーマートにさらわれたことで、首都圏強化の目算が狂った。その点もミニストップなら補完できる。

実際、ローソンとミニストップの“接近”は始まっている。ローソンがエンタメ分野に強いことから、ローソンの店舗にある情報端末の「ロッピー」を、ミニストップ全店に順次導入していくというのがそれ。あるアナリストもこう指摘する。

「ミニストップとローソンの関係について言えば、ロッピー導入がまず実験ですよね。ミニストップもココストアグループと資本提携するなど、独自の動きをしていますが、いずれ機が熟してくればローソンと統合していくようになるのではと見ています。

ほかにも接点は出てくるでしょう。たとえば、ローソンはドラッグストアのマツモトキヨシと業務提携しています。マツキヨは売り上げが4500億円あって最高益を更新している。ドラッグストア全般にいえることですが、食品や生鮮品を置くようになり、スーパーやコンビニの客も奪い始めているのです」

ただし、コンビニはフランチャイズビジネスで定価販売が基本であり、価格破壊リテーラーの色彩が濃いイオンのカルチャーからすると、やや距離感がある。むしろイオンとしては、ここ数年、コンビニに準じた店舗面積で、小商圏を狙ったミニスーパー、まいばすけっとを積極展開(約300店)してきた。イオンの幹部も以前、「我々は、あれば便利というコンビニより、もっと消費者の生活をサポートするところに入っていきたいのです」と語っていたことがある。横浜市、川崎市、東京23区で集中出店していて、このエリアの主婦層の間では、「まいば、行く?」で通じるまでになっているらしい。

また、イオンの電子マネー「ワオン」は、ファミリーマートでは使えるものの、ローソンでは使えないとう“ねじれ”があるほか、ローソンはローソンで「ポンタ」という独自のポイントカードを広範に展開しており、決済面で見ると、イオンとローソンの間の距離は近いとはいいにくい面もある。

イオンとローソンは、ドラッグストアと調剤薬局というキーワードでの接近はあるかもしれない。その鍵になるのが調剤薬局大手のクオール(東証二部上場)だ。同社の第2位株主は三菱商事(19.1%)で、現在、ローソンやビックカメラとの共同店舗を積極的に進めている。一方、イオンはCFSコーポレーション、クスリのアオキ、ツルハホールディングスなど、ドラッグストア関連企業に幅広く資本参加している。もっとも、資本参加といっても強いグリップ力が発揮できるほどでなく、いわばゆるやかな連帯。

クオールは、これらイオン関連のドラッグストアとも共同プロジェクトがあるだけに、ローソンとの連携の可能性が注目される。

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