PickUp(2017年1月号より)
バックナンバー
友だち追加数

© 2016 WizBiz inc.

 

特集記事

Home
 
押し寄せるテクノロジー もう目前に迫った「フィンテック2.0」の波|月刊BOSSxWizBiz

どんなビジネスを生むか

── 今回の特集は「かんたんフィンテック」がテーマだったわけですが、フィンテックとは何かという議論から抜け出せない人が多いようです。
フィンテックを難しく定義する人もいますが、一般には「ファイナンス」と「テクノロジー」が一緒になってフィンテックと言う、ということで良いと思います。ファイナンスとテクノロジーが、どんな形で融合して、どんなビジネスを生むか。そこがポイントです。

── 実際、金融の様々な分野で新しい技術が活用され始めていますね。
16年10月に、SBIが米リップル社のプラットフォーム「リップルコネクト」を使ったコンソーシアムを立ち上げ、“送金革命”を始めますという宣言をしました。フィンテックがもたらす象徴的な世界的変革です。従来の送金は、国際送金ではSWIFTというシステムがあり、これがあるかぎり、大規模な革命は起きません。

米リップル社は、グローバルにはここに革命を起こそうとしています。日本では内国為替にも広げます。従来システムに依存する限り、高い送金手数料がずっと維持されるわけです。たとえば3万円未満の振り込みを他行宛てにする時に、法人による振込手数料は、大手都銀3行の平均で576円もかかります。ネット専業銀行である住信SBIネット銀行は165円。いまでも違いはあるけれども、これをさらに、ブロックチェーンの技術を使うことで、全銀ネットを使わずに手数料を大幅に下げようというわけです。

北尾 吉孝 SBIホールディングス代表
きたお・よしたか/1951年生まれ、兵庫県出身。74年慶応大学経済学部を卒業し野村証券入社。78年英ケンブリッジ大学経済学部卒業。95年ソフトバンクに転じ、同社の財務戦略を一手に引き受ける。99年ソフトバンク・ファイナンス社長に就任。その後SBIホールディングスを設立し、社長に就任。

手数料で576円も取られるけれども、576円を金利で収入を得ようとしたら、0.02%とか0.01%という金利のなかで、いったいいくら預けなければいけないのか。大幅な費用の削減をし、しかも安全性が担保される形はないかと考えた時に、ブロックチェーンという新しいテクノロジーを使いましょうとなります。最近では、ブロックチェーンと同じ革新性で、よりスピーディに承認できる方法をリップル社が開発し、彼らは「ビヨンド・ブロックチェーン」とさえ呼んでいます。

10月につくった「国内外為替一元化検討に関するコンソーシアム」には、住信SBIネット銀行のほか、地域金融機関やネット銀行など、発足時から42の銀行が集まりました。これは画期的なことで、なぜなら保守的と考えられている銀行が自ら変わろうとしているのです。これまでそういうことは、ほとんどなかったのです。

長期的に見ると、人口が減少し、高齢化が進むという状況のなかで、地域金融機関が生き残っていくことは次第に難しくなってきます。それに対し、生き残りのための様々なソリューションを我々SBIグループが提供させていただこうと考えています。送金革命でもわかるように、既存の金融システムにものすごい大きな変化をもたらしうる、そういうフィンテック技術が開発されているということです。

── フィンテックベンチャーという言葉ができたように、なかなか既存の大手企業から革新技術が生まれてこないように思います。
インターネットの新しいテクノロジーというのは、どこの国を見ても大企業が開発するケースは非常に少ないのです。ほとんどのテクノロジーは中小のベンチャー企業から生まれています。一方で、単一の技術だけで生き残れるベンチャーは多くないのです。ですから、我々はベンチャー企業から生まれてくるテクノロジーを自分たちのビジネスに活用するためにも、フィンテックベンチャーを育てていかないといけないと思っています。

そこでフィンテックファンドをつくり、投資し、資金面でバックアップする。それだけでなく、その技術をSBIグループの様々な金融企業で使えるようにする。単体では無理でも、幾つかのベンチャー企業が持つ要素技術を組み合わせることで使っていこうとしています。

もちろん新しい技術の導入コストも結構かかりますから、それをSBIが組み合わせてパッケージ化し、地域金融機関に拡販することで導入コストを下げ、みんなに安くその技術を導入してもらう。地域金融機関にとっても良いし、技術を持つベンチャー企業にも良い、我々にとっても良いと、三方みな良しの状況を作り出そうとしています。

── ブロックチェーンのほかに注目している技術はありますか。
資金の運用面ではAIやビッグデータ分析はすでに利用されていますし、クラウドによって会計システムを様々なところから利用したり、ソーシャルメディアもできることが広がってきています。

IoTも非常に大切な技術です。これは現在すべてのものがインターネットに繋がるということになりつつあることから非常に注目を集めている分野です。例えば自動運転技術が注目されていますが、自動車もコンピューターの固まりのようになっています。自動車保険だって、よりパーソナルなものにしていかなくてはいけません。走った場所や走行時間や走行距離がIoTでわかるわけですから、乗り方に合ったパーソナルな保険料を設定することができます。ウェアラブルで血糖値や血圧、脈拍も測れますから、生命保険も保険加入者の健康状況に応じてパーソナルな保険料を設定することもできるようになります。

また私たちはウェルスナビ社と提携し個人投資家の資産形成サービスに力を入れようとしていますが、例えば銀行のサービスとしては800円の買い物をした時に1000円払ったらお釣りの200円を自動的に投資に回していくというもの。少額でも自動的に投資に回していくことで積もれば大きな金額になり、それを運用して成果を出していくのです。その運用も、アルゴリズムを利用して、ロボットにさせます。コストも大幅に安くなるわけです。

マネタイズの課題

── 新しい技術が、一斉に出てきて、実用化され始めていると。
コンセプトの段階は終わり。実際に使うという状況は、もうそこに来ています。我々は、1999年に創業し、いちはやくインターネットを使った金融生態系を完成しました。スマホを使いどこでも金融取引ができる状況になりました。これをフィンテック1.0と私は呼んでいます。そこに新しい技術をどんどん取り入れ、そのあとの姿がフィンテック2.0になります。

つまりフィンテック2.0の世界というのは、我々の側にとってコストが大幅に下がり、コストが下がるから手数料や預金金利がすべてお客様に、より有利に出来ます。そういったことが具現化していくだろうと思います。しかも安全性も非常に高い。現行の銀行のディレクトバンキングもハッカーが侵入したりしているわけで、新たなフィンテック技術を活用することで安全性を高められるのです。

ただ、既存の金融機関はパブリックなシステムになってしまうと、金融機関自体がいらなくなってしまうので、基本的に話に乗って来ないんですよ。であれば、コンソーシアムという形で、各金融機関がメンバーに入った中でブロックチェーン等の最新技術を限定して使う。こちらのほうが金融機関側は受け入れやすく、利便性も高くなります。

── フィンテックについては、世界と比較して日本が遅れているということをよく耳にします。
日本でフィンテックと言われるようになったのは、この2年くらいです。すでに4~5年前からアメリカのベンチャーの間ではフィンテックという言葉はずいぶん出てきていました。SBIのフィンテック1.0が完成したのが2016年中ですから、すぐに2.0に取り掛からなければ間に合わないということで、フィンテックベンチャーが、どんな要素技術を持っているかを調べ上げました。

その結果、リップルが進んでいると思ったから、何が何でもリップルと組もうとか、グローバルスタンダードを追求するために米R3 CEV社のブロックチェーンコンソーシアム「R3」に加入したりということを16年に矢継ぎ早にやってきたわけです。2年前というのは、まだコンセプトの段階で、海外でも実証実験を始めようという段階でした。我々は現在すでに事業に使っていく段階ですから、決して後れをとっているということはありません。

いま日本のほとんどの金融機関がフィンテックで大騒ぎをしていますが、おそらく図体が大きいところはなかなか難しいだろうと思います。SBIはインターネットのなかで育ってきた事業体ですから、フィンテックの技術を採用するということは難しくありません。初期コストこそかかりますが、実証実験をやりながら前にどんどん進み、スピードアップしていけます。大企業は、フィンテックの勉強会に入りましたとか、事業室を作りましたという段階。実は欧米でも、従来の大企業は遅れているところが多いんです。結局はその技術をどう使うかですから、SBIは速いけれども、大企業はそうはいかないだろうなと思います。

── 小回りの利くベンチャーのほうが有利だと?
フィンテックベンチャーがもっている技術は非常に限定されたものです。AとBとCの技術を使って、ウチのシステムのなかにどうつぎ込んで1つの商品を作るか、こういう選択の仕方をしなくてはいけません。フィンテックベンチャーが簡単に儲かるかというとなかなか利益は出ません。現在の難しいところは、次々とフィンテック企業が誕生してもマネタイズできないことです。ベンチャーキャピタル(VC)にカネを出してもらっても、なかなか上場までたどり着けません。どうマネタイズしていくかは、大手の金融機関がそれを使って、自分にも良いし、相手にも良いという状況を作ってあげなければダメだと思います。

単体の技術として見れば、誰も使わなければ終わりです。よく他のVCから、なぜそんなにいろんな会社に投資ができるのかと聞かれますが、問題は投資以外のところで何をするのかという点です。ベンチャー企業にとってVCからの投資が一過性のケースもありますが、SBIはグループ内の銀行で使う、証券で使う、保険で使うことができる。ベンチャー企業もSBIからの投資を受けることで自分たちの技術をマネタイズできる可能性を感じるわけです。

しかし、SBIだけで使っても先々に限界があります。だからこれを地域金融機関に広めようと。これが私の次の発想である地域銀行価値創造ファンド(仮称)、そういうものになる。いかに使うかを考えなければ、技術を持っていてもなんにもならないでしょう。

初めての世界的な変化

── 大手金融機関ももっとベンチャーを活用しなくてはいけない。
投資するだけでなく、大手金融機関自らが使っていかなきゃ意味がないですね。でも、使おうとすると、既存のシステムと新しいものが対立してしまう。仮にメガバンクが新しいことをどんどん始めたら、ATMなんていらなくなるでしょう。送金手数料が安くなったらメシが食えなくなる。あれだけの支店を抱え、あれだけの人を雇っているわけです。送金もスマホでできるようになって、我々はいったい何を銀行に期待するのでしょうか。現在でも多くの人が実際、ATMに行くことはあっても、支店に行くことはほとんどなくなっています。

住宅ローンや保険もそうです。大きな店舗を構えて多くの人を雇ってという固定費のかかるところは、常に問題が発生します。せっかく技術革新を起こしてコストが下がっても、人を減らさなくてはいけない。でも減らすことはできない。これから大変だと思いますよ。

── 次から次に新しい技術が出てくるわけですが、フィンテック2.0の完成形はどのようなものですか。
ブロックチェーンやAI、ロボット、ソーシャルメディア等々、新しい技術革新の波はコンドラチェフの波と呼ばれ、50~60年くらいのサイクルで来るわけですが、2010年頃からやってきている。これらの技術は、ぜんぶ金融機関に使える技術ばかり。いろんな技術が集合的に金融機関に広まってきたからこそ、フィンテックが脚光を浴びたのだと思います。

おそらく、私がフィンテック1.0を作ってきた十数年の変化と、これから5年の変化は、この5年のほうが急速かつ大きなものになります。しかも世界はよりひとつになっていくわけですから、それぞれの国でドメスティックに成長してきた金融に、世界的な変化が初めて起きていく。仮に、世界で話し合って作られたSWIFTがなくなることになれば、世の中がガラッと変わりますよ。

(聞き手=本誌編集長・児玉智浩)

© 2016 WizBiz inc.

 

特集記事

Home
   
将来、家族、いきなりわく不安  ままにならない心と体|月刊BOSSxWizBiz

セカンドキャリア研修が引き金に

田中さんの第一印象は、少し疲れた俳優の堤真一さん。けれど、180センチを超える身長と体格の良さはいかにも男らしく、若かりしころはモテただろうなという感じです。大学時代にはアメリカンフットボール部に所属して、仲間とともに練習に励んでいたそうです。高学歴に加えて、体育会系の心身の強さは、就職時の採用ポイントのひとつにもなったでしょう。

そんな田中さんが相談にやってきた最初の理由は、「もの忘れがひどくなってきた」というものでした。

そのころ、職場では管理職への昇格が叶わず、部下だった女性が上司になったといいます。さらに、セカンドキャリア研修を受け、「もう自分の役目は終わってしまった感じがする。居場所がない感じがする」ということでした。

一生懸命働いて手に入れた自宅にすら居心地の悪さを感じていました。というのも、自宅を購入するときに妻の両親の援助を受けていたからです。なんとなく、妻に対して頭が上がらないような気持ちがあったのかもしれません。そして、一人息子は中学受験の真っ最中。妻は息子の勉強にかかりきり。寝転がってテレビを見ることにさえ、気が引けていたようです。

この年代の男性は、年下の女性社員をまだまだ「女の子」と呼んでしまうような世代。田中さんの口からも何度も「女の子」という言葉が発せられており、女性を上司として認めることに、なかなか気持ちがついていかなかったと考えられます。

HAM-Dを実施してみると、うつの症状が強かったため、産業医の先生を通して心療クリニックにも通ってもらいました。同時に、おカネのかからない、でも体を動かせる趣味を見つけるようにすすめました。

9カ月くらいカウンセリングに来ていた田中さんの様子が明らかに変わってきたのは、彼がマウンテンバイクを買ってからでした。休みの日に、男友だち数人と多摩川の上流までツーリングするようになったというのです。みんなでツーリングすることで、体育会時代の状態に近いことを体感できた。これが落ち込み気味だった更年期を明るい気持ちにさせる大きな要因になったと思います。

COUNSELOR'S EYE

田中さんのように、かつては男らしく遊び、男らしく仕事をしてきたタイプの人こそ、更年期に陥りやすいといえます。少し上の世代は、経済逃げ切り組で、うまく資産運用して夫婦仲良く老後を過ごしている。しかし、この年代は、バブル期には社会や女性からちやほやされていたにもかかわらず、その後は男としての居場所がなくなる一方……、そんなふうに感じる人が多いようです。

更年期をうまく乗り越えるためには、田中さんのように学生時代と同じような経験ができる趣味を見つけることは有効だと思います。ちなみに、自転車はおカネがかからないだけでなく、一人乗りの乗り物。奥さんから浮気の心配をされることもなく、更年期にはもってこいの趣味といえそうです。

特集 働き盛りの男たちが陥る「更年期」というエアポケット

このページのTOPへ

© 2016 WizBiz inc.

 
         

経営者インタビュー

世界の飲料業界で「第3極」目指す そのために売上げ2兆円は必要

小郷三朗 サントリー食品インターナショナル社長
こごう・さぶろう 1954年大阪府生まれ。77年京都大学法学部卒。同年サントリー入社。洋酒事業部長や宣伝事業部長、SCM本部長などを経て、2011年サントリーホールディングス常務、同年サントリー食品インターナショナル専務、13年副社長、16年3月より現職。

飲料業界の動きが活発化する中、コカ・コーラグループと2強を形成する、サントリー食品インターナショナルは今後、どう戦線を拡大し、勝ち戦をつかもうとしているのか。同社の小郷三朗社長に聞いた。

利益では海外が6割

―― まず、国内外の事業における重点課題ですが。
新興国としてのアジア、欧州における新興国としてのアフリカ、これらの新興国群で積極的な展開をしていくと。日本では、利益率の改善というところを基軸にして伸ばしていきます。

―― 海外比率は現状どのくらいで、今後どう持っていこうと考えていますか。
売上げで言いますと6対4で国内、利益で言うと逆に4対6で海外のほうが多いんです。海外は今後もアジア、アフリカ等々の国での伸びが期待できますので、さらに海外比率は上がってくると思います。

―― 数字が逆転してしまうというのは、それだけ国内市場が過当競争だということの裏返しですか。
海外展開は、主にM&Aなどでボリュームを増やしてきていますから、結果としてそういう構成になっているだけで、国内も売上げ、利益ともに順調に伸ばしています。ただ、相対的に国内依存度がどんどん低くなっているのは事実ですね。それだけグローバル化が進んでいるわけです。

―― 緑茶、ミネラルウォーター、コーヒーなど、ジャンル別のいまの足元の課題は何でしょうか。
飲料業界はずっとデフレで価格競争が激しく、値段の勝負になることをできるだけ回避する方針で取り組んできました。その政策がいま、だいぶ効いてきましたので、その分、(2リットルサイズなどの安価な)大容量のペットボトルサイズの伸びは足踏みです。でも、当社が戦略商品として見ている500ミリリットルのペットボトル、あるいは「伊右衛門 特茶」を中心とした高付加価値商品を順調に伸ばしていますので結果、非常に大きな利益率の改善ができました。そういう意味では、国内市場ではここ2、3年、目指してきた成果が出ていると思います。

―― 商品ジャンルの守備範囲が広い中で、さらにのびしろが高そうな商品、あるいはラインナップにはまだなくて、これから強化したい分野というのはありますか。
当社の特徴でもありますが、「ナチュラル&ヘルシー」というところのポートフォリオが非常に強いと。そういう意味では「南アルプスの天然水」、さらに炭酸入りの天然水や、「ヨーグリーナ」のような微糖のニアウォーター系の市場が、当社の商品を中心に伸びています。このウォーター系のところを伸ばしていくのがまず1つ。

歌手、宇多田ヒカルさんを起用した「南アルプスの天然水」のテレビCMは話題になった。

さらに緑茶のところでは、従来のコモディティなお茶ではなくて、付加価値の高い商品を増やしていきます。16年8月には「伊右衛門 特茶」のカフェインレス商品も出しましたし、15年は「黒烏龍茶」のリニューアルも行いました。無糖茶の分野で、より健康志向の高いセグメントを伸ばしていく考えです。

ほかの分野におきましても、「オランジーナ」のような新しいカテゴリー、あるいはスポーツドリンクで透明タイプの新しいカテゴリーなど、従来とは異なる、少し新しいカテゴリーの挑戦との併せ技で伸ばしていこうというのが我々の戦略です。

「オランジーナ」育成の鍵

―― 微炭酸でヒット商品に育った「オランジーナ」(2012年発売)は、「ブラッドオランジーナ」や「ハニーレモンジーナ」など、かなり派生商品を出しましたが、直近の販売ボリュームはどのくらいですか。
15年の販売実績数字で言いますと、1320万ケースで前年比139%でした。ただ、これも新製品のところでの当たりはずれで波があるんですが、ある程度、日本の消費者に「オランジーナ」という商品が定着したのかなとは思います。商品投入から5年目ですけど、なかなか炭酸系飲料で市場に残るということは難しいですからね。ここからさらに伸ばすのが非常に難しいカテゴリーなので、17年以降、いろいろな手を打っていくつもりです。

それと「オランジーナ」の場合、どちらかといえば大人向けのドリンクということを目指していますので、業務用とかお酒と一緒に飲んでいただくとか、そういう需要開発の仕事をしていかなければいけません。いままでのように、新商品を出して既存の流通チェーンに商品を流すというだけの商売ではダメです。同時に市場開発型の仕事もしていくことが大事で、「オランジーナ」はじっくり育成していくのがポイントですね。

―― もう1つ、グラクソ・スミスクラインの清涼飲料事業買収で手に入れた「ルコゼード」(機能性飲料)や「ライビーナ」(果汁飲料)は、日本での展開やシナジーはどうですか。
いまのところ日本に導入することはないです。カテゴリー的に言うと、「ルコゼード」はエナジードリンク。この市場はいま、いろいろ方策を考えていますが、「ライビーナ」ともども、知名度が日本ではほとんどありません。

ただ、この2商品は英国の商品ですので、かつて英国の植民地であった国々には、これらの商品ブランドが残っているんですね。つまりフットプリントがある。ですから、ナイジェリアでこれら2商品の事業を買収したのもそういう文脈ですし、もともと商品基盤のある国については積極的にやっていくつもりです。ですから、シナジーは海外のほうでしょう。

―― サントリー食品インターナショナルは、商品ラインナップのほとんどがトップブランドかナンバー2の商品ですが、まだ、てこ入れが必要な商品群はありますか。
少し弱いと思っているのはエナジー系ですね。このジャンルは「デカビタC」という商品を持っていますが、いずれにせよ、ほとんどのカテゴリーに何らかの形で商品を持っています。商品力の強い弱いは若干ありますけど、フルライン。敢えて言えば、ほとんどフットプリントがないのは野菜ジュース系ですかね。このジャンルは過去、何度かチャレンジしているんですが、得意分野ではないのでなかなか難しいです。

―― 野菜ジュース系だけでなく、アサヒ飲料における「カルピス」のような、乳酸菌系飲料といったジャンルはどうでしょうか。
すでにある、既存の市場に真横からぶつかっていくのは非常に体力も要ります。そうではなく、新たなカテゴリー、サブカテゴリーと言っておりますが、そういう商品ジャンルを作ることにいま、注力しています。たとえば「ヨーグリーナ」は「カルピス」の真横に置く商品じゃないですけど、満足度としては非常に近しいもの、なおかつ健康的でナチュラル、糖分も少ないものですから。

自販機はインロケで勝負

―― 15年には、自販機事業をJT(日本たばこ産業)から1500億円で買収(=ジャパンビバレッジHD。以下JB)しました。当初、その買収金額が高いか安いか、ずいぶん話題になりましたが、統計データ的に見ると、飲料販売のチャネル別シェアでは、自販機は右肩下がりでコンビニが横ばい、スーパーやネット通販などが伸びています。
全体で言えば、約3分の1の流通ルートが自販機です。数が多いコンビニといっても全国でおよそ5万店、飲料の自販機は全国で250万台あります。なので、これが一朝一夕でなくなるわけではありません。とはいえ、コンビニでも割安な価格で売られるケースも増えた。トレンドで言いますと、自販機の250万台というのはすでに飽和状態にあって、とりわけ、屋外に設置している自販機は淘汰されていくでしょう。

印象的な「オランジーナ」のテレビCMも新バージョンを投入。

―― のびしろとしてはビル内、あるいは法人向けが大きいと。
JB社のビジネスモデルは、我々がやってきたベンダービジネスとは少し、違うんです。当社はメーカーとして、自分たちの商品をいかに消費者にお届けするか。その手段として自販機を設置してきました。

一方、JB社はメーカーではないので、設置先のロケーションのニーズに応じて、単一のメーカーではなく、いろいろなメーカーの商品をミックスした自販機を持っています。ほかにもペットボトルや缶ではなく、紙コップの自販機とか、品揃えが多いんです。いわば、設置先のニーズに応じて提供しましょうという、まさにリテール型のビジネスモデル。

サントリーグループ最大の企業を牽引する小郷氏。

そこで当社とJB社が一緒になることで、商品やサービスの幅がさらに広がり、付加価値を高められ、法人との開拓や結びつきの点でも需要拡大が狙えると。法人対法人は総合的なお付き合いということになってきます。その点、サントリーグループにはお酒もある、あるいはアイスクリームの「ハーゲンダッツ」などさまざまな商材がありますので、法人と総合的なお付き合いができます。そこが競合他社に比べて競争優位ですね。サントリーコーポレートビジネス社という法人営業専門の会社も持っていますから、そのネットワーク活用で、まさにシナジーが期待できるのです。インロケをほぼ法人向けと考えますと、これまでは自販機のインロケ比率は4割弱でしたが、JB社が加わったことでほぼ半分がインロケになりました。ここからさらに増やしていく考えです。

―― 最後に将来的な目標を。
売上げで2兆円の規模にはなりたいという思いはずっとあります。世界的に糖分を控えるというニーズがありますから、そこを強みにして、世界の第3極になる。それには2兆円はないといけないということです。

(聞き手=本誌編集委員・河野圭祐)



経営者インタビュー

このページのTOPへ

© 2016 WizBiz inc.

 
 

経営者インタビュー

日本のホテル産業底上げを目指し「森トラスト・ホテルリート」上場へ

伊達美和子 森トラスト社長
だて・みわこ 1971年生まれ。94年聖心女子大学文学部卒。96年慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。同年長銀総合研究所入社、98年に森トラストへ入社。2000年取締役入りし、03年常務、08年専務、11年森観光トラスト(13年から森トラスト・ホテルズ&リゾーツ)社長に就任。16年6月より森トラスト社長。

強まるコト消費は追い風

―― ひと頃に比べて円高に振れたこともあって、最近はインバウンド需要が少し弱含みと言われ、その影響で百貨店は総じて苦しくなっています。ホテルは、また百貨店とは事情が違うと思いますが、インバウンドについてはどう見られますか。
インバウンドの市場を見ますと、2015年実績で言えばざっくり、20%ぐらいがホテルへの宿泊、40%ぐらいがいわゆるショッピングでした。ですが、それは本来の姿からすると、買い物比率が高過ぎていびつだったと思います。

本来、宿泊と買い物比率は逆であってしかるべきでしょう。ホテルの客室単価が総じて上がっても、ホテルのシェアが20%ぐらいだったことを考えると、やはりちょっと異常な事態ではありました。

もう1つ、一度日本で買い物をされたらその後、定期便的に送ってあげるという仕組みがウケていることもよく聞きます。それはそれでビジネスとしてはいいわけですが、一方でリアルのお店には買い物に来なくなる仕組みもどんどん作っていることになります。

それに対して、ホテルや観光の立場というのは買い物と違い、その場に来ないと体験できないから来られるわけで、ホテルなり観光地なりに魅力がある限り、インバウンドは減りませんし、むしろさらに増やせる可能性があります。

―― そこを捉えても、時代はモノ消費からコト消費に確実にシフトしていると。
モノ消費は、インターネットを介せばある程度は済みますからね。ですから、消費そのものが減っているわけではありません。対してコト消費は、そこでしか体験できないから意味があるのであって、どこへ行っても同じ体験しかできないのであれば、わざわざ来る必要もありません。

ただし、リピーターも2度3度となればそのうち飽きてきます。そこで、新たな魅力をどうクリエイトし、ブランディングしていくかが重要です。これから産業界を挙げて、インバウンド需要に向けた本格的な産業育成に入っていくということじゃないでしょうか。20年の東京五輪までに、日本のそれぞれの地域でコト消費に向けた整備を、より高めて完成させないといけません。

当社グループで言えば、ホテルの需要に関しては当然、円高に振れた分、16年5月ぐらいから為替の影響が少しありましたし、熊本地震の影響も若干ありました。さらに中国の景気足踏みの影響もあって、伸び率では鈍化していると思います。ただ、それでも業績自体は15年より伸びている状態にありますので、そこそこ順調かなと。いずれにしても、インバウンドが今後、まだまだ伸びるようにするためにどうするか、そこは常に意識しています。

赤坂や品川・三田エリアも

―― 森トラストグループの中長期ビジョンでは、2019年度の目標値として、売上高で1800億円、うち賃貸関係事業で650億円、ホテル関係事業で400億円、不動産販売事業その他で750億円、その先の23年度は売上高2100億円、賃貸が850億円、ホテルで550億円、不動産販売などで700億円としています。この計画に向けた考え方を改めて聞かせてください。
単純にいまの環境のまま伸びていけば、確かにホテル事業はほかの部門に拮抗してくることになると思います。ただ、不動産事業としての収益力は、やはりオフィス賃貸のほうが効率がいいということも考えなければいけないので、売上げだけを単純に見ても、本当は比較はできません。ホテルであれオフィス賃貸であれ、あくまでもその投資の結果としての利益が、投資対効果でどうなのかを見ていかなくてはいけないですからね。

―― 今後の主なオフィスビル計画にある、赤坂ツインタワー建て替え計画(仮称・赤坂2丁目プロジェクト)や、品川・三田エリアに保有するビル3棟の一体再開発計画はどう展望しますか。
赤坂のプロジェクトは、いまオンプロセスでやっているところですので、細かいところはお話しできないのですが、だいたい方向性は決まっていて、基本的には虎ノ門、赤坂、それに丸の内の3つの特区で連携し合いながら、東京をどうPRしていくかが鍵になります。

赤坂プロジェクトのオフィスビルは、もちろんホテルも誘致していきたいと思っています。虎ノ門や赤坂エリアでも今後、かなりホテルが集積してきますが、それを競合と見るのか、ポジティブに捉えて面的な集積と見るのか。私は後者の立場を取ります。丸の内もそれなりにホテルが集積し始めて、日本橋にもあるという状況と比較して、インターナショナルないいホテルがあるところはどのエリアかをイメージしていただいた際、虎ノ門、赤坂エリアがそこにきちんと入ることが重要ですから。

―― 品川・三田エリアは、JR品川駅と田町駅間にできる新駅、および周辺エリアの開発度合にもよりますし、27年開業予定のリニア新幹線などを考えると、かなり長期スパンで考えていくプロジェクトになりそうですね。
はい、丸の内や虎ノ門エリア周辺の動きが活発化し、その次に大きく動くのが品川・田町エリアです。その時代を迎える頃には当社の大きな2つの開発(虎ノ門と赤坂)が終わって、その上で品川・田町というエリアのポジショニングが、JRさんも含めてどうなっていくのかを見ながら考えていくべきことだと思っています。

品川・田町エリアは、都心の中で羽田空港にも比較的近いですし、新線や新駅もできてくることを含めて考えますと、(虎ノ門や赤坂とは)また違うコンセプトがあってしかるべきですね。東京を意識しながらも、常に地方も意識している、あるいは世界を意識しているものと、全部がつながっていくような位置づけのプロジェクトになるでしょう。具体的な再開発の用途に関しては、もう少し時代を見ていくべきかなと。単純にオフィスビルを造ればいいわけでもないですし、オフィスの在り方も変わってくるかもしれませんから。

―― 東京五輪が20年に終わった後、仮に予定通り27年にリニア新幹線が開業するとしても、五輪後の景気後退は前回の東京五輪で経験しています。その点は、森章さん(森トラスト会長で伊達氏の実父)も以前、「五輪後の財政の崖」に懸念を示されていました。不動産業界に限ってみれば、そこのリスクヘッジは、いかに他社よりもいい立地を抑えるかがやはり基本ですか。
ロケーション重視で、次に投資のボリューム、というか投資バランスを崩さないということだと思うんですね。いまの金利状況では資金調達もしやすいですし、容積率も緩和されている等々の条件の中で、建築費が高いという懸念はありますが、簡単に新規の投資価値が見いだせてしまうのです。だからといって、いままでの3倍も4倍も投資しようと思ってはいけません。

次世代の森トラストを担う伊達美和子社長。

一方で、景気不景気の波がある中でも、コンスタントに投資をしていかなければ事業は持続、成長していかないのも事実です。さらに、財務体質を良くし、自己資本比率も厚めにしていく。あらゆる点で逆風になった時には貸し渋りも起きてきますので、そういう事態にもきちんと備えておく必要があります。そこは会長自身もやってきたことですが、その部分を今後も崩さないというのが1つのセオリーでしょう。

ホテルに関しては、かつてよりも投資を加速しています。景気の波はどんな業界でもあるわけですけど、世界の旅行者は増え続けていますし、どの国から来られるかという点が変わってくるだけですので。ありがたいことに日本の観光資源は磨けば魅力がありますから、紆余曲折はあっても伸びていく分野なので、投資は続けていきます。都心で大型のオフィスビル1棟を建てるのと、ホテルを10棟ぐらい建てるのとが同じくらいの投資というケースもあります。そういう意味では、ホテルのほうが投資を少し早めたり、逆に少し遅くしたりと、供給の調整がしやすいかなと思います。

―― ホテルの立地等々を見極めながら、運営方法もフランチャイズ方式のほか、所有は森トラストでマネジメントや管理・運営は提携先のホテルチェーンに任せるMC方式、さらに直営やリース案件など多彩ですね。
MCになればなるほど、いままでにないようなホテルブランド、あるいは高単価なホテルを誘致できます。一方でFCはFCで、我々がハンドリングできるので、オペレーションのコントロールがしやすいというメリットがある。ですのでそうした比較の中で決めますし、要は選択肢の中でのバランスだと思います。

「常に先を先を見ている」

―― 近年は、マリオットを軸に外資系ホテルと組んだリブランドが活発ですが、森トラスト・ホテルリート投資法人の株式上場(16年度中)も予定されています。
資金調達をし、自分たちのノウハウや技術で開発もして、新しいホテルを保有していること自体は、そんなに重荷ではありません。いま、ホテルは簿価に対して時価では相当な利益率のある状態ですから、無理にリートに組み込まなくても問題はないわけです。

我々がホテルリートの上場を目指すのは、ホテル産業をもっと拡大していきたいからにほかなりません。ホテル産業を確たる地位に引き上げることによって市場が活性化し、次に自分たちが投資をする環境も整う循環になります。ホテルビジネスも安定的、かつ成長力もある事業であることを、世間にさらに理解していただくと。上場リートという市場のポジショニングにすることによって、ホテルに対する投資の見方などを変えたいという思いがあります。

ホテルに関するたくさんのプレイヤーが来て、その街が更新されて力をつけ、PRできていく。そのエリアが日本で目立つ存在になり、海外からも人が来るという循環も生まれます。そのためには、自社でホテル事業を完結するだけでは限界があるのではと思います。

会長(森章氏)も早くから「リートを作るべきだ」という提唱をしてきて、森トラスト総合リート投資法人(大型オフィスビル主体で商業施設、ホテルにも投資)も15年ほど前に設立していますが、それも同じです。不動産と金融をつなげることによって、銀行借り入れではない市場を作ることで不動産市場が活性化すると考えました。

収益還元法(該当物件を賃貸に出して利用された場合の資産価値を算出)という客観的な価値と、キャップレート(期待利回り)という、ある種公平な尺度ができて、不動産業が正しい産業に成長したのがリート。ホテルもそういう循環になったらいいなという思いから、ホテルリートの上場を考えているのです。

―― ほかの大手ディベロッパーも最近はホテル事業に積極的ですが、たとえば財閥系ディベロッパーとの差別化ポイント、あるいは森トラスト独自の立ち位置やDNAといった点はどうですか。
私は世界中のホテルを見ながら、どういうところとビジネスパートナーとして組んだらいいか、どういうブランドがいいかなとか、先を先を見るようにはしています。あとは、選択する中でパートナー先の将来性も見ていますね。地方で、なるほどと思えるエリアを先に押さえていくことによって、新たなビジネスチャンスを作っていきます。

(聞き手=本誌編集委員・河野圭祐)



経営者インタビュー

このページのTOPへ

© 2016 WizBiz inc.

 
 

経営戦記

加留部 淳 豊田通商社長
かるべ・じゅん 1953年7月1日生まれ。神奈川県出身。76年横浜国立大学工学部電気工学科卒。同年豊田通商に入社。99年物流部長、2004年取締役入り。06年執行役員、08年常務執行役員、11年6月末より現職。学生時代はバスケットボール部に所属。座右の銘は着眼大局、着手小局。

近大とマグロ養殖でタッグ

〔昨年、豊田通商が近畿大学と提携して卵から育てるマグロの“完全養殖”事業に参入(養殖事業そのものは2010年に業務提携)するというニュースが大きな話題になった。11年に同社の社長に就いた加留部淳氏は、就任後初めての出張が近大水産研究所で、同研究所の宮下盛所長と意気投合。今後は豊通と近大のタッグで完全養殖マグロの生産を順次拡大し、海外へも輸出していく計画だ〕

もともと当社は人材育成には力を入れ、いろいろな研修プログラムを用意していますが、その中に若い社員の事業創造チャレンジのプログラムがあるんです。自分たちでまず研究し、社内外の先輩や識者の意見も聞いて新事業案を作らせるものですが、その過程で「ぜひ、近大さんの販売や養殖のお手伝いをしたい」と提案してきた社員がいましてね。

面白い事業プログラムだったので、当時の経営陣が「やってみろよ」と。で、動き始めて実際に予算もつけ、近大さんにもお話をしに行ってというのがスタートでした。こういう社内提案制度は、起業家精神の醸成にすごく必要だと思います。もう1つ、マグロの漁獲量が減る一方で、需要は日本や東南アジアを中心に増えているわけですから、商社のビジネスとして意義がある。会社としてもやる意味があるし、若い社員を育てる点でも有効、その2つの観点から全面的にバックアップしています。

もちろん、ほかの商社でも水産系ビジネスには力を入れています。その中で、我々は違う土俵で戦うケースもありますし、どうしても同じ土俵の時は、真っ向勝負だと当社の企業体力では勝てないわけですから、戦い方を考えないといけない。そこは全社員と共有しています。そういう意味でも、他社が手がけていないマグロの完全養殖事業は非常に面白いビジネスですね。

近大とマグロの完全養殖事業で提携。左端が宮下盛・近大水産研究所長、右から2人目が加留部社長(2014年7月の会見)。

〔近大とのタッグは話題性が大きかったが、豊通という会社全体として見れば1事業の域は出ていない。これに対し、加留部氏が12年末に決断した買収案件は全社横断的な規模だ。当時の為替レートで同社では過去最大となる、2340億円を投じて買収したフランスの商社、CFAO(セーファーオー)がそれ。CFAOは、30年には中国を上回る巨大市場になると目されるアフリカ市場で強固な事業基盤を持ち、とりわけフランス語圏の多いアフリカ西側地域で圧倒的な商権を持っている〕

過去最大の投資ですから、我々もものすごく慎重に考えましたし、私も実際に現場を見に行きましたが、先方も傘下の自動車販売会社の修理工場とか、結構オープンに見せてくれましてね。当社とはDNAが合いそうだなと。

もう1つ、彼らは自動車関連事業以外もたとえば医薬関係、あるいはオランダのハイネケンと一緒に合弁工場を手がけるほか、BICブランドのボールペンなど、プラスチック成型品の生産なども手がけていて当社と親和性が高かったのです。

海外に商社という業態はあまりないですが、彼らは自分たちのことをはっきり「商社だ」と言いますから。ですから豊通がやっている事業はすぐに理解してもらえましたし、右から左のトレーディングだけでなく、彼らは工場を持ってモノづくりまで踏み込んでいるので、(トヨタグループの豊通と)お互いの理解はすごく早かったですね。

唯一、気になったのは若手社員の意識でした。若い社員が果たしてアフリカの地でビジネスをやってくれるのかどうか。そこで数人の若手に聞いてみたところ「この買収案件はいいし、アフリカは将来、伸びる市場だからやりましょうよ」と。そういう声に最後、後押しをしてもらえたようなところもあるんです。“一人称”という言葉を当社ではよく使うんですが、一人称、つまり当事者意識をもってやっていく気持ちがあるかどうかが大事ですから。

独自戦略を掲げる加留部氏。

フランス商社買収で攻勢

〔前述したように、CFAOは歴史的にアフリカ西海岸エリアの市場を得意とし、豊通は東海岸に強みを持っていたため、エリア補完も綺麗に成立した〕

地域的、事業的な割り振りで言えば、自動車関係はお互いの強みなのでしっかりやっていこうと。アフリカ西海岸で当社が細々とやっていたテリトリーは全部、CFAOに渡しています。物流の共通化なども進めて、お互いの事業効率を高めてきていますし、トヨタ車の販売や物流もCFAOと一緒にやっています。

当社としてはマルチブランドを扱うつもりはあまりなくて、トヨタと日野自動車、スバル(=富士重工)の商品を扱うわけですが、CFAOはマルチブランドなので、たとえば今年、アフリカでフォルクスワーゲンとのビジネスも決めました。

当社はケニアでトヨタ車を扱っていますが、CFAOはケニアにVW車を持ってくるわけです。CFAOは豊通の子会社なのにと一瞬、矛盾するような印象を持たれるかもしれません。我々はトヨタ車で現地シェアナンバー1を取りたいけれども、彼らもVW車でナンバー2を取ればいい。そういう組み合わせみたいなものができてくると思うんです。

いずれにしても、自動車関係のビジネスはお互いに共通しているので、この分野はオーガニックな成長で伸ばしていけるでしょう。一方、医薬品関係はいま、彼らもどんどん伸ばしていて、我々も日本の製薬メーカーを紹介したりといったサポートをしています。

〔豊通がCFAOを買収したことで、新たな効果も表れてきている。たとえば、前述したCFAOが合弁で手がけるハイネケンの工場運営会社。豊通の傘下に入る前は、CFAOの株主が収益はすべて配当で還元してほしいと要請していたため、新しい投資ができなかったのだが、豊通が入ったことでロングタームで事業を見るようになってくれたのだ〕

私もハイネケンの合弁会社社長に会って話をしました。先方も理解してくれて、生産国もコンゴだけだったのを別の国でも展開しようという話に発展しましたしね。さらに、フランス大手スーパーのカルフール。CFAOがカルフールとの合弁でコートジボアールで店舗を出しますけど、これも私がカルフールの社長とお会いし、アフリカ8カ国で展開することを決めました。

日系メーカーとではこんな事例もあります。ヤマハ発動機のオートバイを生産する合弁会社をCFAOがナイジェリアで作るのですが、彼らもヤマハとのお付き合いは従前からあったものの、それほど深かったわけではありません。

一方で、我々は日本でも(ヤマハと)いろいろなビジネスをやらせていただいているので、この合弁話を提案したら了承してくださり、出資比率も50%ずつでOKしてくれたんです。CFAOは豊通の資本が入っている会社だからと、全幅の信頼を置いていただけた。普通は、日本のメーカーが現地へ出るのに50%ずつというのはあまりなく、イニシアチブは日本のメーカー側が取るものだからです。

そういうCFAOとの協業ロードマップは10年スパンで立てていまして、私もCFAOの首脳もお互いに行き来しています。フェース・トゥー・フェースで、年に4回ぐらいは顔を合わせているでしょうか。それ以外にも毎月、テレビ電話での会議も1時間半ぐらいかけて実施し、いまの経営課題や将来の絵図などをお互い共有化するようにしています。

〔豊通には、TRY1という経営ビジョンがある。これは収益比率として自動車と非自動車の割合を均等にしていき、さらに20年にはライフ&コミュニティ、アース&リソース、モビリティの3分野の収益比率を1対1対1にするというものだ。CFAOをテコにしたアフリカビジネスの拡大も、TRY1計画達成に寄与する部分は大きいだろう〕

いまでもCFAOは1億ユーロぐらいの純利益を上げていますから、それだけでも我々は彼らのプロフィットを(連結決算で)取り込むことができますし、プラス、将来的な絵図という意味でも、お互いにステップ・バイ・ステップで各事業を伸ばしていくことで、TRY1の実現にすごく貢献するはずです。

〔総合商社といえば近年、資源ビジネスで荒稼ぎしてきたイメージが強かったが、資源価格の市況に大きく左右されるリスクがあることは、住友商事や丸紅が資源価格の大幅な下落などで多額の減損を強いられたことでも明らか。とはいえ、こうしたリスクテイクは、総合商社にとってはいわばレーゾンデートルでもあり、投資するしないの判断は難しい〕

資源といってもいろいろあると思います。いまさら石炭や鉄鉱石の採掘ビジネスにお金をガンガンつぎこんでもダメ。また、シェールガスやシェールオイルも私が社長になった頃に他社がみんなやり出して、社内でも「やりたい」という声が多かったのは事実です。でも、よく調べてみたら、当社はすでに周回遅れ、しかも1周でなく2周も3周も遅れている。「これでは高値掴みしてしまう可能性があるし、投資金額も大きいのでやめておきなさい」と、社内でかなり明確に言いました。

ですから、我々はもっとニッチで別な土俵で勝負していこうと。たとえば、チリで開発しているヨード。これはイソジンのうがい薬、レントゲンを撮る時の造影剤でも使うんですが、ヨード産地は日本、米国、チリと世界で3カ国しかありません。当社はその全部の産地で開発拠点を持っているので、将来的には取り扱いシェアを15%まで高めたいと考えています。

ほかにも、アルゼンチンではこれからの自動車ビジネスに直結する、リチウム関連の鉱山事業を昨年から始めましたし、豊通らしさというんでしょうか、ニッチキラーでもいいからウチらしさが出て、かつ上位の商社とも十分に戦えるビジネス分野でやっていこう、というのが当社の基本ポリシーです。

〔目下、前述したTRY1達成に向けて歩を進める豊通だが、現在の非自動車ビジネス拡大の基盤を整えたともいえるのが、06年に旧トーメンと合併したこと。トーメンが持っていた化学品や食料といった主力事業分野を得たことで、総合商社としての幅が各段に広がったのだ〕

実際、事業ポートフォリオが広がって、合併は結果として大正解でした。エネルギーや電力関係のビジネスはいま、一部を除いてすごくうまくいっているんですが、こうしたジャンルは豊通のままだったら絶対に出てきていないビジネスですね。

豊通はもともとが自動車関連ビジネスメインでしたから、農耕民族なんです。畑を耕して種をまいて、雑草をとって肥料や水をやってと。それが狩猟民族(=トーメン)と見事に化学反応したという感じ。狩猟民族の人も農耕民族から学んでもらえたし、お互いの良さを認め合ってすごくいい合併だったと思います。

業界ランクには興味なし

〔加留部氏は横浜国立大学工学部出身だが、就職活動では「とにかく商売がやりたくてしかたがなかった」と述懐するように、入社試験は商社しか受けなかったという〕

私は1976年の入社ですが、当時は就職が全般的に厳しくなり始めた頃で、「商社冬の時代」になりかけていた難しい時期。各商社とも採用人数を絞り、狭き門になっていました。それでも私はとにかく商社に行きたくて、最初に内定をくれたのが豊通だったんです。商社としては規模は小さいけれど、その分、若手にも仕事を任せてくれるんじゃないかと。トヨタグループだから財務基盤もしっかりしていましたしね。

〔豊通入社後は3年目に米国駐在となり、米国でのビジネスで5年間揉まれて逞しくなった後に帰国。国内で6年過ごして結婚後、再び渡米して9年間駐在した。こうした国際経験豊富な加留部氏だけに、昨年からは入社7年目までの社員を対象に、駐在でも長期の研修でも語学留学でもいいから、とにかく一度、海外へ出ることを奨励している。

ただし、加留部氏はほかの商社との戦いにおいては、純利益で何位といった相対的な物差しでなく、あくまで豊通としてどうなのかという基準で考えると強調する〕

2年か3年前、社員みんなにメールを打った時に触れましたが、何大商社とか何位であるとかは、私はまったく関心がないんです。自分たちが目指す方向に向かえているかが大事ですから。たとえば敵失があって他社の順位が下がったとします。仮に順位を純利益で測ったとして、「他社が失敗してウチが5位になったところで君たちは嬉しいか? 私は嬉しくないよ」と。

社員向けのメッセージメールは年に8回か9回出していますが、ある時、新入社員から「何位を目指しますか?」という質問を受けた時も同じことを言いました。各社ごと、事業ポートフォリオがかなり違いますし、順位は関係ない。自分たちのビジネスがどうなのか、常にそこを自問自答し検証することが正しい道だと考えます。

(構成=本誌編集委員・河野圭祐)

このページのTOPへ

© 2016 WizBiz inc.

 

この企業の匠

Home
新型インプレッサに込めた「次世代スバルの幕開け」の思い

「スバルのフルモデルチェンジ」と語った吉永社長。新型インプレッサは次世代スバル成功の試金石として位置付けられる。開発陣は“走りと愉しさ”をとことん追求した──。

プラットフォームの開発

10月25日に発売された富士重工業の新型「スバル・インプレッサG4/スポーツ」は、10月末までに8817台を受注。好調な滑り出しを見せている。すでに納車は3カ月待ちで、不振の国内自動車販売のなかでスバル人気は根強い。

さてそのインプレッサ、気合の入り方が従来のスバルの新型車とは大きく異なる。新車発表会で吉永泰之社長が「単なる1モデルのフルモデルチェンジではなく、スバルのフルモデルチェンジ」と語ったことからも、次世代のスバル車の方向性を示したものになっていることがわかる。開発責任者のスバル商品企画本部プロジェクトゼネラルマネージャーの阿部一博氏は、インプレッサの開発について次のように語る。

「インプレッサのフルモデルチェンジだけでなく、次世代スバルの基盤となる商品をつくっていくということ。次のスバルに繋げることを考えた時に、結果的にプラットフォームを一から作らないと商品力向上はできないだろうと提案しました」

インプレッサの開発を担当した阿部一博氏。

今回のインプレッサは、先代と比較して95%以上、部品が入れ替わっているという。新型プラットフォームの開発もあって、従来のフルモデルチェンジの数倍の予算を投入して開発されたクルマだ。

「スバルが提供するお客様価値『安心と愉しさ』を、明らかに差別化できるレベルにしようと考えました。先代のインプレッサは、バランスの取れたいい商品で、事業的にも大成功でした。新型インプレッサも全体的に商品力を高めましたが、特に3つのことについて大きく伸ばしています」

新型でこだわったのは、(1)世界トップレベルの総合安全性能(2)感動レベルの動的質感(3)スポーティ&先進デザイン+クラスを超えた質感、の3つ。企画段階から大幅な向上を目指して取り組んできたという。

総合安全については、全車標準装備の予防安全技術のアイサイトに加え、リヤ・ビークル・ディテクションという車線変更の際に後ろからクルマが近づくのがわかる装置や、衝突時に従来の約1.4倍の衝撃吸収量を持つ新型プラットフォームで安全性の向上を図っている。ここで注目したいのは、新型インプレッサから標準装備されることになった「歩行者保護エアバッグ」だ。

「どんなに車内のお客様を守っても、ぶつけてしまった時に歩行者を守れないのは、死亡事故ゼロを目指しているスバルにとって十分とは言えません。日本車では初になりますが、歩行者保護エアバッグを搭載しました。これを192万円の一番お求めやすいグレードから全車標準装備にしています。

その際にお客様負担にならないようにしようとコストを下げる工夫もしています。他社もエアバッグを装備していますが、フロントガラスとボンネットの隙間を拡げるために、ボンネットを上げてからエアバッグを開くという2段階爆発にしています。スバルはそれをやらずに1回の爆発でエアバッグがボンネットの隙間から出てくるようにしました。これは大変苦労しましたが、このシンプルな構造により原価が下がり、お客様の負担が抑えられるわけです。

アイサイトVer.2でクルマ対クルマの事故は84%減っていることがわかりました。ところが対人間では49%しか減っていない。クルマよりも人間のほうが横から飛び出したりと、様々なケースが多いからと考えています。その時にエアバッグがあれば救えるケースも出てきます」

走りと質感を実現

動的質感についてもスバルならではのこだわりがある。

「人間が感じる“感性”を数値化する研究をしてきました。だいたい10分の1秒の変化を人間は敏感に感じるんです。例えばステアリングを切った時に、ギクシャクする0.1秒を感じる。その変化を数値化して図面に落としていくには1000分の1秒単位の変化を測定する必要があります。その測定機器を作るところから始めてお客様が感じる気持ちよさを、プラットフォームを一新するこのタイミングで設計に反映し、ロールが小さく、リアの挙動が乱れないスムーズな走りを実現しました。ふつうはサスペンションにつけるスタビライザーをプラットフォームに直接つけることで、走りを追求した商品に仕上がっています」

インテリアの質感は、上級モデルの「レヴォーグ」や「フォレスター」を上回ったのではないかと言われるレベルまで仕上げた。エクステリアには「ダイナミック×ソリッド」を掲げて、“安全と愉しさ”をデザインで表現したという。

「総合安全性能と動的質感については、プラットフォームを一新することで商品力向上ができますが、見た目のところと触感はプラットフォームとは関係ありません。他の2つと同様にレベルを上げていかないとバランスが崩れてしまいます。特にデザインと質感は気を遣って欧州の競合車に負けないものにしました」

新型インプレッサは部品の95%が新しいものに。右は日本車初搭載の歩行者用エアバッグ。

このインプレッサを皮切りに、今後開発されるクルマも新型プラットフォームでの商品力向上が図られるという。

「次のフォレスターやレガシィも先代車との共用部品はほぼありません。ですから新型プラットフォームの開発は、スバルのフルモデルチェンジだったのです。変わらないものは、“安全と愉しさの追求”というスバルの方向性だけですね」

(本誌・児玉智浩)

月刊BOSS×WizBizトップインタビュー

Home

【BOSS×WizBiz】日本の名医たちの治療が受けられる会員制ヘルスケアサロン

南部靖之 パソナグループ代表
なんぶ・やすゆき 1952年生まれ。兵庫県神戸市出身。76年関西大学工学部卒業。卒業直前の76年2月に起業し、人材派遣会社テンポラリーセンター(現パソナ)を設立、社長に就任。93年社名をパソナに変更。2007年に持株会社パソナグループを設立、代表に就任。

名医にピンポイント

── 「ギンザドクターズヘルスケアサロン」とは、どういったものですか。
生涯現役を目指す経営者を中心とした会員制のヘルスサロンです。
私自身、3つの会社の経営をやっていてその1つが1970年に創業した病院をはじめとした医療機関を中心とした「メドックス」という設計建築事務所です。病院建設をやっていくなかで、すぐに増築・改築が必要になったり、逆に経営に行き詰まる病院を目の当たりにしました。そこから病院経営の問題点が見えるようになってきた。それは経営力不足なんですね。

そこで私も経営者の一人ですから、その経験をもとに病院の設計建築だけでなく、病院経営のアドバイスを行うようになり、87年に病院コンサルタント会社「メドックスコンサルタント(現・日本医療経営研究所)」を立ち上げ病院経営のノウハウを教える「医療経営塾」をはじめました。そして、これまでに550人以上の卒業生を出し、その卒業生たちは日本医師会や地方医師会で活躍するにいたっています。

そうした医師などの医療関係者とのつながりを生かし、なんといっても体が資本の企業経営者の健康の手助けをしたいと、この会員制のサロンを17年4月に設立、6月から会員を募集しています。

── 具体的にサロンの活動はどういったものなのでしょうか。
なんといっても最大の特徴は、私自身が医療経営塾で培ってきた医療関係者との人脈を生かし、ドクター本人をピンポイントで指名し、紹介していくことです。

ご相談を受けてどんなドクターが適任かを考え、直接そのドクターにアポイントメントを入れる──言ってみれば患者のコンサルティングを行うようなものです。

このほか365日24時間で相談できる野口医学研究所ドクターホットラインの利用、提携病院の人間ドックや精密検査の割引価格での受診、サロン厳選のサプリメントを3割引で販売するなどしています。

── どのようなドクターがいらっしゃるのですか。
現在メーンになっている方は30人で、さまざまな病気に対応する総合診療からがん、脳外科、婦人科、整形外科、歯科、眼科などのドクター、栄養学、代替医療、整体、サプリなどの専門家などがいます。

各分野のドクターは複数いるので、会ってみたけれど、どうも相性が合わないといった場合などは、違ったドクターをご紹介します。またドクターの紹介はご本人だけでなく、ご家族の病気でも紹介いたします。

── 入会方法と会費、現在の会員数についてお聞かせください。
入会金は1万円、月々の会費は1万円です。入会時に血液検査のキットをお渡ししますので、ご自分で検査をしてどこか気になることがあれば、ご相談ください。すぐにドクターをご紹介します。

入会方法はホームページからのメール、お電話にてお問い合わせください。こういうサロンなので、どなたでもご入会いただけるというわけでなく、私と面談させていただき、そのうえでご入会になります。現在の会員数は10名です。ホームページはありますが、会員の口コミで広がっています。当面は50人を目標にしています。

というのも、私自身が直接ドクター個人をご紹介するので、物理的に対応できるのはそのぐらいの人数だと思っています。

まずは教育の見直しから

── その人数ではビジネスには結びつかないのではないですか。
ビジネスというより、社会貢献だと思っています。
私は生まれてから3歳になるまで3回死ぬ目に遭いました。1回目はジフテリア、2回目は体中に原因不明の湿疹ができ、3回目は2階から落ちて意識不明になりました。いずれもドクターの献身的な治療で救われました。ですから、そうしたドクターとの出会いのお手伝いをしたいと思ったのです。とくに経営者にもしものことがあれば会社そのものが危機に陥ります。日頃の予防、未病の早期発見、そして病気になってしまったときにしっかりとした治療を受けていただきたいと思っています。

── よい医師、よい病院を見分ける方法はありますか。
良き医療は良き経営からというのが、私のコンサルタント会社のモットーなのですが、これに尽きると思います。そして、良いドクターというのは、ドクターになる動機づけがしっかりしています。それにはやはり教育が重要だと思っています。

私は「国家ビジョン研究会」という超党派の政策シンクタンクの「医療・看護・介護問題分科会」委員を務めているのですが、そこで医師になるための教育制度の改革を提案しています。

具体的には今の高校卒業後、大学の医学部に進むのではなく、一般大学教育を受けたうえで医学部の教育を行う。生物学、心理学、哲学を必須にし、偏差値だけでない教育をすることが重要だと思っています。

また、日本が抱える問題は超高齢化による医療費の増大です。今の医療は高齢者に必要のないことをやっています。日本は超高齢化といっても「長寿」ではなく、「長命」なだけです。健康寿命と不健康寿命というのがありますが、不健康寿命は男性で8年、女性で12年あるといわれています。本当の長寿社会をつくるにはまず「予防」、病気の手前の「未病」における病気の早期発見。病気になってしまったら、良い医師による治療を受けることです。そのオーソリティーがすべて網羅されているのがギンザドクターズヘルスサロンなのです。

© 2016 WizBiz inc.